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mishiadd
2025-02-02 17:45:38
23649文字
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ごはんのおとも
【鵠と月夜展示品】原作軸、成立してないゆるい剣伊。若旦那EDを迎えてなんとなくいい感じに丸め込まれながら受肉したセイバーとなんとなくいい感じに気を逸らしてもらいながら若旦那に仕官して全世界を旅する伊織くんのまったりご飯事情回遊記。
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六、《いずれ消え去るこの世界のいずれ消えゆくきみよ》
若旦那の運転するオープンカーで街道を行きながら、「そういえば」と伊織が些事ながらも抱え続けていた疑問を口にする。
「日ノ本の外の世界は
――
我らがいた江戸よりもひどく発展して思える。常識や文明の
程度
れべる
が明らかに異なる。これはどういうことだ、若旦那」
「貴様らがいた頃とは時代が異なるからな。当然だ」
「『時代が異なる』」
鸚鵡返しにし、伊織が考え込むそぶりをする。常の通り一旦すべてを仮定のまま呑み込むことにしたのか、「であるとして」と伊織が続けた。
「なぜ、日ノ本と外の世界とでは時代が異なっている。ドロテア殿の祖国の技術は進歩していたものの、時代が異なるという程ではなかった筈だ」
「貴様は、あの江戸八百八町の町々を行き来して、違和感を覚えたことはあるか」
「ん」
かたちのよい顎に手を当てて、助手席の伊織が考え込む。後部座席で話を聞いていたセイバーがすっかり話の内容に興味を失い、流れていく景色に目を遣る。
「ある町は桜咲く春。ある町はススキ茂る秋。
――
この世界は行き詰まりかけているのだ。だからあのように、ツギハギのようにそこかしこで時の流れが狂っている。日ノ本の外に出れば尚更よ。歪みは更に大きくなり
――
この我の都合のよいことに、かように容易に時代を横断することができる」
「
……
ふむ」
「この世界は行き詰まりかけているのだ、宮本伊織。貴様がどのように生きるとも、死ぬとも、それに一切かかわらず」
伊織の頭上を、街路樹からはらはらと落ちてきた花弁がふわりと通り過ぎていく。それを目で追う伊織に、「なればこそ」とハンドルを握ったままの若旦那が言った。
「
好きに生き抜け
、宮本伊織。貴様の思うがままに。
――
いずれ消え去るこの世界の、いずれ消えゆく者よ。どのみち
後に何も残らぬ
というのであれば
――
貴様の生き様にのみ、意味がある。ただ貴様という儚き大輪の花火が夜空に打ち上がり散っていった、その瞬間にのみ、意味があるのだ」
その言葉の意味を
――
自分が本当の意味で理解できたのかどうかは、伊織にはわからなかった。なにせ、若旦那と自分では視座が違い過ぎるので。
それでも彼はきっと、『なにかいいことを言っている』に違いなかった。
「ワカダンナ。次の街にはいつ着くのだ」
後部座席から身を乗り出してセイバーが尋ねる。
「身を乗り出すなたわけ。シートベルトはしておるのかシートベルトは」
「いい加減腹が減ったぞ、いつ着くのだ~」
「ええいあと一刻で着くわ、大人しくしておらんか痴れ者めが」
「セイバー、きちんと座っていろ。若旦那も安全運転というわけではない」
口々に好き勝手なことを言いながら、三人を乗せたオープンカーが街道を抜けていく。
いずれ消え去るこの世界の、いずれ消えゆくきみよ。
その生を、謳歌せよ。
ごはんのおとも・了
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