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mishiadd
2025-02-02 17:45:38
23649文字
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ごはんのおとも
【鵠と月夜展示品】原作軸、成立してないゆるい剣伊。若旦那EDを迎えてなんとなくいい感じに丸め込まれながら受肉したセイバーとなんとなくいい感じに気を逸らしてもらいながら若旦那に仕官して全世界を旅する伊織くんのまったりご飯事情回遊記。
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一、《時よ止まれ、汝は美しい》
「さて
――
」と
彼
か
の黄金の王より訓示があった。これより彼の付き人として全国
――
否、万国を漫遊するにあたっての心得である。
「この我の臣下として付き従うからには、相応の知見を身につけよ。なに、極東の小国のそのまた一角で
倹
つま
しく暮らしていた貴様らのようなさもしい雑種に最初からそのようなものが身についているとは我も期待しておらぬわ。我について回るからには、行く先々でさまざまなものを見、聞き、咀嚼して身につけよ。一秒たりとも無駄にはするなよ」
「なにかよいことを言っているような気はするのだが、言い方が気に喰わぬ!」
ぷい、と早速へそを曲げてそっぽを向いてしまったセイバーに頭を抱えつつ、伊織が言った。
「つまり
――
気を引き締め、すべてに学べということだな、若旦那」
「違うわ、この生真面目な優等生さんめ。この我が直々に
我の庭
を連れ回してやろうというのだ、存分にこの世界を堪能し、謳歌せよ。
――
貴様がこの世の価値を
これ
と決めるのは貴様の勝手だが、貴様のようにまだ何も見ぬうちからそうと決めるのは、ただの視野狭窄からくる愚行であるからな。この旅路の果てにおいてもなお
そうだ
と思えるなら
――
」
ふと口を噤む。やがて、ふっと口許に柔らかい笑みを浮かべ、若旦那が伊織を見て言った。
「
――
であるならば、それはそれで道化としては出来がよい。
我はどちらでも構わん
。貴様が決めるがよい」
「よく、わからんが」
どこか引き攣ったような愛想笑いを浮かべながら、伊織が言った。
「つまりは、『楽しめ』
――
と」
「いかにもきみが一番苦手そうだな? イオリ」
からかい交じりにセイバーが伊織の顔を見る。その意地悪くにやついた表情に、この、と伊織が軽く肘でセイバーを小突き返す真似をした。それを若旦那が「セイバー!」と一喝する。
「まるで他人事のような顔をしているが貴様もだ、たわけ。
――
この我の庭を見て回るからには、ひとつたりとて
わくわくスポット
を取りこぼすことはこの我が許さぬ。『私はイオリと違って得意だから』などと余裕をぶっこいてひとつでも見逃してみよ、始末書を提出させるぞ雑種」
「そんなぁ」
途端にセイバーが情けない声を上げる。その隣で、相変わらずこの人は全力で遊んでいるのか仕事をしているのかよくわからないな
――
と伊織が思い
――
やがて、若旦那にとってはきっとどちらも同じことなのだろうという結論に至る。
言うだけ言って満足したのか、ぱんぱん、と両手を叩いて若旦那が唐突にふたりを急かす。
「我は忙しいのだ、理解ったのなら疾く出立の準備をせぬか。
――
なに、素寒貧侍とその
おまけ
にまともな旅支度など端から期待しておらぬわ、箸と茶碗だけ持ってさっさと出てこい。我が財を浪費することは我が信条に反するが、連れがみすぼらしいのでは我の沽券にかかわるからな。これを機に一流の旅支度のなんたるかを貴様らに講じてやるからとくと心得よ」
「要するに親切をしてくれようとしている気はするのだがやはり言い方が気に喰わぬ~!」
「諦めろ、こういう御仁なのだ」
奇しくも
言い方に難のある
人物
ふたり
に挟まれることが確定してしまった伊織であったが、とはいえ伊織の方とて慣れたものである。彼の
――
すべてを曖昧なままに受け止めてまるごと取り込んでしまうある種の懐の深さが、こういった手合いを増長させていると言えなくもなかったが
――
唯一被害者となり得る伊織自身が大して気に留めていないのなら、問題など存在していないも同じことなのかもしれなかった。
「散った散った」とまるで店にたむろする子供にするようにしっしっと手で払う仕草をし、若旦那が店の
――
巴比倫弐屋の
――
中に引っ込んでしまう。今日中には引き払う予定だとの話であったが、まだ何ひとつ片付いておらず通常運転そのものの店構えに、「大丈夫なのだろうか」とセイバーと伊織が顔を見合わせる。
やがて、言われた通り
――
自分の箸と茶碗だけを持って、ふたりは若旦那の元へと参じた。
箸と茶碗。
――
恐らくは、この旅路においてもっとも大切な持ち物だった。
ごはんのおとも
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