望月 鏡翠
2025-01-29 17:04:40
6208文字
Public 世界観共有
 

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世界観共有/ダーリンランデヴー!


 ラダはぼんやりとニュースを眺めていた。
 いまだ任務は決定しておらずチームに所属していない彼女(彼)は宿舎の他に行くところがない。
 宿舎にいるダーリンは監視の対象だが、全ての時間を監視下におかれているわけではない。器物と同等の扱いをされて、人権は適応されないものの、器物として扱われるのは犬や猫、鳥といったペットも同様だ。つまり、人のパートナーたる生き物が与えられる程度の同情と生活は、与えられている。
 彼らを扱う職員が、どんな思想を持っているのかによるという但し書きは必要ではあるものの、一方的に不自由と理不尽を強いられるような関係ではない。
 しかし、ラダは何か困っていることがありますかと聞くと、話したいことがある様子で、二人が座ることができる場所を求めた。
 ダーリンに話を持ちかけられたという緊張は、無意識に所持している弾丸が使用可能な状態であるのかを確かめるのに十分なものだった。
 その動作に対してラダから反応はなかったが、個室ではなくオープンスペースで良いという申し出には彼女の配慮が感じられた。
「俺の面談は、長く続きますね。 理由を伺ってもいいですか?」
 全てのダーリンは、一度死ぬ前は犯罪者であるだけのただの人間だ。しかし蘇るときに、外見が人ではあり得ない特徴になっていることも少なくない。
 それらと比べると、ラダは異能を所持している他は人間と変わりなく接することができる個体だった。
 だからこそ注意をするべきであるというのが、上の判断である。
 特に、生前の情報を加味するとゲリラのリーダーをしていた人物で、周囲の人間を取り込み内乱を起こしうるという理由で、一度裁判にかけられた数年あとに処刑されたという経歴を持つ人物である。
 話し言葉が丁寧で、会話が通じるからと言って、信頼する理由にはならない。むしろ、他人い対して友好的な態度をtおるごとに、疑念は強まっていた。
「面談は負担か」
「負担ではありませんが、まだ何の任務も受けていません」
「積極的に任務に従事したいということか」
「怪我をしたり誰かを制圧したりする暴力の現場に飛び込みたいわけではありません。何もせずに生活していくことができることは、豊かであるとも思います。しかし当初の説明と異なっているため、俺に問題が見出されている可能性を懸念しています」
 ラダの懸念は一部、正しかった。
 問題はある。渇望や苦痛の正体について、偽りを述べている可能性がある。秘密主義のダーリンはいる。ただ望みを言わねば、引き換えにこちらから提示できる条件もないのだ。
 たとえば苦痛を逃れたいだとか、オルドポルターで人らしい生活を営みたいであるとか、死にたくないだとか、渇望を満たしたいだとか、そういうことである。
 なんの任務も受けていないというのは、ラダが初めて述べた希望らしい希望である。
 ただしダーリンが信頼のおける人間であることの方が稀であり、これが主因となって任務から遠ざけられているわけではなかった。
「理由はいくつかある。一番の理由は我々は常に人手不足だと言うことだ。チームはダーリンよりも職員が過半数を占める構成にすることが定められている。その中で、新入りかつ契約状態の職員もおらず、戦闘に特化した異能でもない君は優先度が下がる。生前の体と今の体が違うという問題もある。記憶にあるよりも弱くなっているはずだ」
「そうですね。この体は、戦うには向いていないと思います。まだ、慣れてもいません」
 ラダは自分の両手を見つめる。そして、微笑んだ。
「信頼を得られるように、少し鍛えておきます」
 力瘤を作ってみせたが、職員はそれらの動作に親しみを覚えることはないのだ。
 例えば、今こうして喋っていても、そんなに熱心なら共に任務に行くかと声をかける気にはならないのだ。彼女に背中を預けたくはない。
 それはやはり、何者なのか腹の底が知れない不気味さが理由なのだろう。