望月 鏡翠
2025-01-29 17:04:40
6208文字
Public 世界観共有
 

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世界観共有/ダーリンランデヴー!

 今回の事件で、被害者が出なかったのは幸いだった。
 前提としてオルドポルターに観光気分でやってくることは、お勧めしない。理由は言わずもがなである。凶悪犯罪者が現代に甦ってくる原因不明の異常事態ランデヴー現象をきっかけとする治安の悪化。
 複数の自治体からできた複合都市国家と言っても差し支えないオルドポルターは、外部の行政組織からの干渉を受け入れるには強大すぎた。
 故に死人が蘇ってくるランデヴー現象についても、オルドポルター内で対処するしかなかった。
 つまり、今まで通りと言われてしまえば、それまでのこと。
 それを恐ろしいと思う人間は、この街にやってこなければいい。ダーリンのことをここでしか観察できない珍獣と思っている人間もいれば、治安の問題を差し引いてもなおオルドポルターの街並みや文化に魅力を感じている人もいる。
 元々オルドポスター内の住民で、他の地区に魅力を感じて少し足を伸ばしただけのものもいるだろう。
 そうした観光客の一人のように、物珍しげに街並みを見上げている人間がいた。
 それが地獄から甦ってきた犯罪者だなどと、誰が気づくことができただろう。顔に、過去に犯した罪状がかいてあるわけではないのだ。
 その姿を目撃した人間は数多くいたものの、この時点で観光客とダーリンを見分ける方法は、身分証明書を携帯していなかったこと以外にはないため通報義務違反には当たらない。
 該当人物は上を見たまま車道に出て、自動車と接触。数メートル跳ね飛ばされたという。
 周辺の市民から救急の要請と通報があったが、その目の前で該当人物は立ち上がり歩き出した。
 怪我に対する異常な回復力が見られたことから、該当人物がダーリンである疑いが出た。
 救急への通報を撤回。Ag:47が現場を引き継いだ。
 大東人物は、Ag:47職員への呼び掛けに反応した。
 第一声は「私はあなたの言葉が理解できます」だったという。職員への同行と移送時の拘束に同意し、従順な姿勢を見せた。
 当初、受け答えには不明瞭な点が多く見られたが、生まれた時代と現代の差異に戸惑っていたか、復活したばかりで意識が混濁していたのではないかと見られている。
 名前を問うたとき、職員の聞き取ることができない言語を話した。生まれた場所や来歴に関係すると見られている。最終的に彼女はラダと名乗ったため、以後その名前で記録する。
 ラダは何を求めるのかという質問にも、苦しみは何かという質問にも「特に何も」と答えている。
 大人しいが、協力的なわけではない可能性があり、注意して観察する必要がある。

 *補遺
 渇望がないダーリンや苦痛がないダーリンは存在しない。
 ラダは職員の質問に虚偽の申告をしている可能性があり、注意が必要である。