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桜霞
2022-10-01 17:32:56
17250文字
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【twst夢】フライパンは無敵
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パーソナルストーリー
#twst #twst夢 #not監督生 #女監督生 #オリ女主 2020/12/26にpixivに投稿したものの再掲です。
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【実験着】「ガンボも魔法薬になるってサムさんが言ってたから錬金術は実質料理教室」【SR】
魔法という超常現象を扱う授業においてユウが最も忌避するのが実技である。単純に、ユウが魔法を使えないからで、この部分は調子にムラっけのありすぎるグリムに頼るしかないからだ。
ユウから見たグリムの魔法は、どこか単純で、高威力・高火力という、繊細という言葉からはかけ離れたものであることが多い。最後の仕上げに魔法をちょっと使わなければならないような錬金術や魔法薬学の授業においては、グリムの魔法はいっそギャンブルだった。
「ううー、杖を振って馬鹿げた呪文を唱える必要性のある魔法薬学ってなに
……
」
「おやおや、流石はオンボロ寮の監督生さん。クルーウェル先生にまで喧嘩を売りに行くその姿勢、嫌いじゃありませんよ」
ユウ達とペアを組むように指示されたアズールがにっこり笑う。ユウは「そうですか」とてきとうにあしらった。それどころではないからだ。
「グリム、等価交換だよ、等価交換。必要なものを必要なときに必要な分だけ」
「うるせーなァ、分かってるんだゾ」
グリムがむにゃむにゃ呪文を唱えて、魔力をこめる。ゆらりと耳の中の青い炎が揺れて、首に下げられた魔法石がきらりと光った。
直後、光の粒子が大鍋に注がれる。少しの間を置いて、鍋の中身はほんの少し、色の変化を見せた。
「
……
足りなかったか?」
「待って待って、前にそれでやらかしたじゃん。混ぜてみる」
ユウが「よっこらしょ、」と大きなオールを全身で操り、鍋の中身を掻き混ぜた。すると、水の流れに沿って鮮やかに色が変わり、沸き立つ匂いにも変化が現れた。
「おぉ!」
「なんかそれっぽい!」
ユウは心底から安堵して、ようやく肩の力を抜いた。ユウの肩から大鍋を覗き込むグリムのしっぽも機嫌よくひょんと揺れる。
「まぁ、確かにそれなりの出来ではあるのでしょうが」
大成功、というわけではない。ぎりぎり及第点といったところだろう。魔法をかける前の準備段階でも多少の粗雑さが垣間見えたため、それも結果に影響しているのだろうなと、アズールは正しく分析した。
しかし、それらは練度によって改善される類のものだ。クルーウェルは評価に厳しいが、一年生であればこの程度で十分と言えば十分である。
仕上がったばかりの魔法薬を提出し、実験器具を片付けると、多少の時間が余る。大抵この時間で小レポートや実験結果などをまとめるのだが、今回は錬金術の授業で提出した錬金術に関するレポートの返却がされることになった。
「二年生の錬金術って、今は何をやってるんですか?」
「大したことはしていませんよ。完全な物質と言われるアルカナの生成についてです。あぁ、失礼、異世界からの来訪者であるユウさんはご存知ないでしょうね」
「ああ、いえ、錬金術自体は元の世界にもありましたから」
「おや」
そうなんですか、というアズールの声を遮って、クルーウェルが鋭くユウとグリムを呼んだ。
「まず、グリム。お前は字を綺麗に書くことから始めろ。レポートの中身に免じてDをくれてやる。そして、
……
ユウ。お前のレポートについてだが」
「
…………
」
クルーウェルはむつかしそうな顔をして、ちらりとユウのレポートへ視線を投じた。そうして、短く嘆息する。
「
……
まぁ、いい。よくできている」
「ありがとうございます!」
ぱあっと笑顔になって、ユウはレポートを受け取った。ひゅうひゅうと何人かが手を叩いて囃し立てる。クルーウェルは呆れたように次の生徒の名を呼んだ。
単純に気になって、アズールは席に戻ってきたユウのレポートを覗き込んだ。
「どんな課題だったんです?」
「それこそ大したことないですよ。元素の結合とか、質量保存の法則とかの話で」
「あぁ、基本中の基本ですね。それで、評価は
……
ん?」
レポートの上を滑った視線が、とある一点で立ち止まる。アズールはその円形の陣を見て、何度か目を瞬かせ、眼鏡の位置を指で押し戻した。
「
……
これは、
……
錬成陣ですか?」
「そうです!」
分かりますか、と目を輝かせたユウを見て、アズールは調子がいいときのイデアを思い出した。
「元の世界ではファンタジーで、次元の向こう側にあったものなんですよ。錬金術っていうか魔法に近いものなので、この世界でなら成立するんじゃないかと思って!」
「ちょっと何を仰っているのかよく分かりませんね」
聞いてもいないのに流暢な語りを披露するところもそっくりである。こういう手合いは話半分に聞き流すのが吉と知っているアズールは、一見して何を書いているのか分からないレポートに再び視線を落とした。
「
……
」
やはり、何を書いているのか、まったく分からない。分からないが。
「
……
まぁ、レポートの課題とは別ベクトルのことをしているのは分かりますね」
「えへへ、グリムと一緒に真面目にやってる方も出してるので、片方くらいはふざけ、ごほん、学術的興味に傾いてもいいかなって」
「今ふざけるとおっしゃいました?」
アズールは意地悪く口端を吊り上げて見せた。ユウは「そんなことないですよう」とわざとらしく嘯いている。
「ユウ、評価いくつだった?」
「Bだった!」
「前のCから上がってんじゃねーか!」
何人かのクラスメイトがからから笑いながら通り過ぎる。どうやら一年A組ではこのやりとりが錬金術の名物となっているらしい。
「
……
私は、魔法が使えないので、このレポートを証明することはできないんですが
……
」
でも、とユウが明るい表情で顔を上げる。
「先生がCとかBとかくれるってことは、一縷の可能性があるってことだと思ってるんです!」
「
…………
」
きらきらと。それはまるで、楽しそうに未来を語る幼子のようでもあって。
「
……
つくづく貴方、ウチの学園に向いていませんね」
「えっ!? そんな話でした!?」
嘆息しながら言ったアズールに、ユウはびっくりして、思わず眉をひそめてしまったのだった。
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