みそ
2025-01-08 18:00:51
3551文字
Public 本編ロナドラ
 

巡る季節(ロナドラ/30年後ロナドラ掌編つめあわせ)

ポストカード1枚に収まる程度のロナドラたち 新しいの書いたら都度追加していきます



魔法の一針(ロナドラ)

「いつ気づくと思う?」
主人の問いに使い魔は、ちいさな手を顎に当ててヌーンと唸る。しばらくかかるかも、彼の見立てにドラルクは同意で返す。
カーテンの隙間から漏れる月明かりの下、ふたりが見ているのは赤い退治人服の裏地にできていた小さな裂け傷、その繕い箇所だ。『大事に着ている』と服の持ち主は言うが如何せん、いくら気持ちでそう思ってもそれを許さない出来事にばかり見舞われる街である。ドラルクはこの服を、はっきりと任されたわけではないがもう何度も直してきた。
ただ今回のこれに関しては、おおかた木の枝でも引っ掛けたまま無理に動いてこしらえたのだろう。ドラルクには同居人のそういう粗忽な所がありありと浮かぶ。なにしろ一センチにも満たない傷だった。糸でちょちょいとまつってしまえば繕い終わるが、それでは楽しくない。傷に気づいた日に応急手当てを済ませ、その裏で夜毎、ひと針ひと針仕上げたマジロ型の刺繍ワッペン、それをとうとう縫い付けてやったのだ。
「フフ、裏地にさりげないワンポイント。なかなかのオシャレ上級者じゃないかね?」
「ヌヒヒッ」
ひそひそと額を寄せて笑いあう主従のすぐ傍では今夜も、緊張感の欠片もない寝息が規則正しく繰り返されている。


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お誕生日要素ないですが、8月8日に寄せて。
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