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ぶたたけ(名もなきルビコニアン)
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ディア・マイ・サン
ゲストキャラとしてりんさん(@rinrin1147621)の夢主さん『ミヤビ』ちゃんをお借りしています。
りんさんの小説とこのお話は全く関係しておりませんのでご了承ください。
りんさんの小説はこちら
https://privatter.me/user/rinrin1147621
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久しぶりに赴いたサーヴァンタスのセカンドハウスはクリスマス仕様に装飾がなされていた。
記憶では黒い黒壇のフローリングと漆喰の白を基調とした部屋だったように思う。
葡萄の木で作ったフラワーテーブルがあって、その上にエミール・ガレの燕が描かれたランプを置くような、シックな雰囲気がする家だ。
だが今は黒壇のフローリングは真っ赤な安い絨毯が敷かれ、葡萄の木で作ったフラワーテーブルには金色のチカチカしたモールがぐるぐるに巻かれ、ガレのランプにはサンタ帽が被さっている。
そして、部屋の隅にはアーキ坊やのオーナメントがつけられたクリスマスツリー
……
。
落ち着いた部屋の内観がことごとくぶち壊されている。
「見てくれ、頑張って一人で飾りつけたんだ」
見た目だけ若々しい老人が腕を大きく広げて頑張りを自慢している。
貴方、忙しい癖によくこんなことに時間を使いましたね。
そのまま言うとお前の為に頑張ったのさと胸を張って言いそうなので、スネイルは黙り込む。
「こんなにひろいのに、ひとりで
……
すごい」
舌足らずなミヤビがサーヴァンタスを褒めている。
老人の世話を焼いてくれる人間がこの場に居るのは非常にありがたい。
こちらは良いとして。
フロイトの方を見ると、彼がダイニングテーブルの側に立って何やらゴソゴソしている。
「何をしているんですか、フロイト」
スネイルが肩を叩く。
フロイトが振り返る。
彼は両手にフライドチキンを掴んで肉に喰らい付いていた。
「フロイト!貴方何勝手に食べて」
「ふらふぃどちふぃんだふぉ(フライドチキンだぞ)」
「そんなこと聞いてません!勝手に食べるなと言ってるんです!」
「ふぉまえもふうふぁ?(お前も食うか?)」
フロイトがまだ口をつけていないフライドチキンをスネイルに差し出す。
「要らん!」
「まあ良いじゃないか、首席隊長殿も仕事終わりで疲れてるんだ。多少のつまみ喰いは許すさ」
そうサーヴァンタスは言うが、フロイトは今日は特に働いていない。
単純に美味しそうと思ったから食べてるだけなのだ。
「そうかつ、フロイトがごめんなさい」
「ミヤビ嬢、君が謝る必要は無い。だが、これ以上は食べられては困るな。首席隊長殿、これから他の料理の準備をするんでこれ以上は摘み食いはよしてくれ」
「ふぃがむいふぁらな(気が向いたらな)」
「フロイト!」
「フロイト」
スネイルとミヤビの声が揃う。
「わかった、食べない」
肉を飲み込んだフロイトがようやく口からチキンを離した。
全く、この男は言うことを聞かないから困る。
そもそも、フロイトが我儘でなければサーヴァンタスにも会わずに済んだのだ
……
!
治っていた苛立ちがまたぶり返す。
「スネイル、私は料理を用意してくる。君は二人の相手をしていてくれ」
サーヴァンタスがリビングのソファーを指差す。
「ミヤビ嬢、すまんが首席隊長殿がダイニングテーブルの料理をつまみ喰いしないよう見張っててくれないか?」
「りょうかいです、サーヴァンタスそうかつ」
スーツジャケットを脱いだサーヴァンタスが、長い髪の毛を襟足でシニヨンにしながらキッチンへと消えていった。
「おかあさんみたいですね」
セパレートキッチンでエプロンを身につけている彼を見ながら言う。
「誰が?」
「そうかつ、なんだか、かっかのおかあさんみたい」
「は?」
スネイルの脳内が一瞬凍てつく。
まあ、確かにあの態度や今までの発言を聞いていれば親の様に見えるのでしょう。
親のよう、と言うよりは実際は“元”義理の父親だった男だ。
法律上では他人だが、まあ親に近い存在ではあるでしょう。
……
あの男との関係が知られるのは不味い。
隠す必要はないが
……
知られるのは私のプライドが傷つく。
「ねえ、かっか」
「なんですかミヤビ」
「かっかとそうかつって、どういうかんけい?」
スネイルは思わず息を吸う
……
いきなり核心を突きますか。
「親父、だよな」
フロイトが何か良く無いことを言っている。
「今、なんて言いました?」
「だから、お前の父親だよな?ヴァンタス爺さんって」
…………
。
スネイルは大きく息を吐く。
そして、フロイトの襟首を掴む。
「空気も読めない駄犬が!少しは場の空気を読みなさい!」
「空気は読めないぞスネイル」
「貴様!」
スネイルの怒りが突沸する。
襟首を掴んでぐらぐら揺らすせいで、フロイトの頭がメトロノームのように揺れる。
「かっか、やめて。フロイトがしんじゃう
……
!」
揺らしていた腕をミヤビに掴まれる感覚がする。
危ない
――
。
スネイルは咄嗟に襟首を掴んでいた手を離して止める。
離したフロイトがソファーに突っ込んでいく。
バン、とソファーが出すにはありえない程に固い音とともにソファーが後ろへ倒れていく。
「急に腕を掴まないでください!危うく貴方を壁に打ち付けるところでしたよ」
「フロイト!」
そう言ったものの彼女はフロイトのことが大事なようでスネイルの注意など聞いて居ないようだ。
「だいじょうぶ?フロイト」
「ああ、大丈夫だ。スネイルの逆ギレには慣れてる」
背中を強く打ち付けていたようで、背中をさすっているが、流石は首席隊長と言ったところだろうか。
フロイトがこれくらいのことで怪我などする訳がないのだが、この補佐官は過保護が過ぎる。
「今、大きな音が聞こえたが
……
」
物音に気付いたのだろう。
キッチンに居たサーヴァンタスがこちらへ近づいてくる音がする。
まずい。
咄嗟にソファーの背もたれを持って元に戻す。
背もたれに倒れていたフロイトがソファーから転げ落ちる。
キッチンから出てきたサーヴァンタスがフロイトを見て叫ぶ。
「スネイル!これはどういうことだ!?」
「ミヤビがスネイルに『お前とスネイルはどういう関係だ』と聞いた。俺が親子だって言ったらスネイルに吹っ飛ばされた」
隠そうとして居たのに告げ口をされる。
駄犬め、あとで粛清してやりましょう。
「いい歳をして、そんなことで暴れたのか?羽目を外すのは良いが人に暴力は振るうな!」
「任務で敵と戦う時もか?」
フロイトが意味のわからない反論をする。
「首席隊長殿、私は息子が人様に暴力を振るったことに怒ってるんだ。君は被害者なんだから余計な茶々は入れないでおくれ。話がぼやける」
「爺さんが如何なる時もって言うからだろ」
ああ、もう。とミトンをつけたままの手で頭を掻きながら、彼が渋い顔をする。
「とにかく、スネイルは首席隊長殿に謝りなさい。あと心配をさせたミヤビ嬢にもだ。今、すぐ」
「
……
すみませんでした」
「もっとへりくだって言え」
転げ落ちたまま、股を大きく開いてフロイトが茶化す。
「申し訳ありませんでした!」
「許す」
股を開いたまま、彼は開脚後転をして起き上がった。
「おー」
ミヤビが感嘆する。
なんだこれは。
「仲直りしたか?じゃあ私は料理に戻るぞ。君たち、炭になった料理を食べたくなければ邪魔はしないでくれ」
長い睫毛をした瞼を伏せて、美丈夫はため息を吐きながらキッチンへと帰っていった。
再び三人で取り残される。
「スネイル、おこられたな」
「貴方のせいです」
「お前が怒られるところなんて初めて見たぞ」
「そんなに、きかれたくなかった
……
?」
ミヤビが目をうるつかせている。
彼女には悪気はない。
仕方ありません、説明しましょう。
「
……
彼とは義理の親子の関係でした。16の時に離縁して解消していますがね。彼とは仲が悪かったので聞かれたくなかったんですよ」
「ほんとに、おやこなんだ。見えない」
「でしょうね。アレは全身義体化してますから。ああ見えても54歳の中年親父ですよ」
キッチンで慌ただしく働いている姿を見ても、30代前半の青年に見えるだろう。
「てっきり
……
」
ミヤビが言葉を発して直ぐに言い淀む。
「てっきり?」
「なんでもないです」
彼女が首を横に振った直後、サーヴァンタスが大きな深皿を持って現れた。
「みんな、食事が出来た。テーブルに運ぶのを手伝っておくれ」
サーヴァンタスがダイニングテーブルに料理を置く。
皿を皆で覗く。
きつね色に焼けたチーズがとろけた、ポテトグラタンだ。
「おいしそう
……
」
ミヤビが目を輝かせている。
フロイトも同じ思いなのか、よだれを垂らしている。
「まだローストビーフもポトフもある。さあ、キッチンへ急いでくれ」
「ターキーは無いのか?」
「ターキーを出したら、この子がとりさんがかわいそうって言うんでそれからずっとフライドチキンなんだ。ターキーは無いよ」
「それ私が6歳の頃の話でしょう?」
「いや、7歳の頃の話だ」
「スネイル、フライドチキンもニワトリだぞ」
「そんなこと、知ってます」
ガヤガヤ騒ぎながら、皆で出来た料理をダイニングに運び出す。
ローストビーフはベビーリーフの上に綺麗に並べられ、玉ねぎの微塵切りがたくさん入っている自家製のソースが回しかけられている。
ポトフも脂身の多いベーコンが入っていて、美味しそうだ。
「料理は全て並んだな。皆席に着いて」
サーヴァンタスが皆に座るよう促す。
そして「神に祈りを」、と言って手を組み、目を伏せる。
「父よ、貴方の慈しみに感謝してこの食事を戴きます。貴方への奉仕を続ける為にこの食事を祝福ください」
二人が目を伏せ、祈りの言葉をしどろもどろになりながら唱える。
スネイルは綺麗にそらんじる。
「さあ皆、料理が冷めないうちに食べようじゃないか」
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