
●身代わり
その洞窟の探索は、恐ろしい呪いを受けるという。
「なるほど、これは厄介か」
フロストギズモの色違いは、攻撃の一番手に必ずそのおかしな言葉を吐いた
『すこ~~たでぃ』
すると全ての装備が瞬時に外れてしまうのだ。胴、具足、小手兜、それに武器まで
「防具だけでも三下連中なら十分命取り、しかも手放すはずのない武器を魔法で強制的に叩き落されるのは、チッ」
鎧化解除で一つにまとまるでもなく、各パーツばらばらに洞窟内に散らばった装備をモンスターの攻撃をひらりひらりかわしつつ拾い集めて半魔が舌打ちした。
「ふざけた魔物だ」
「アストロンの逆に防御力剝奪の呪文か。アストロン(星)の逆が『闇』になるかはあやしいところだが」
言いつつ青年が最後の額宛当てを拾い上げ、冠のように半魔の頭に乗せる
「感心している場合か。呪いの正体がわかったはいいがどうする」
「問題ない、呪いは俺が代わりに受けよう、それで終わりだ」
「は?」
『すこ~~たでぃ!』
「ヒュンケル!」
青年の、深い傷を負った身体を守る軽装備が奪われる。銀の胸当て身躱しの服、守りのエメラルドのピアスに回復のスティレット(ヒールが15センチもあるのは、男物の回復系靴も入手できない僻地で、それが奇跡的に店に並んでいたのを半魔がひっ掴んだからに他ならない)まで。ためにそれまで生まれたての子鹿よりもぶるぶると歩いていた青年は魔法発動の風圧の真ん中で銀髪を好きなだけ嬲らせ、両手を広げ目を閉じてそれを受けた。そして、「覚悟はいいな?」とモンスターたちの前で素手を握り拳の形にし、にこり笑った。
あっ、それがあったそうだそうだ。思い至って、半魔は洞窟の天井を仰いだ。

●
三十年程経って、男は彼の生み出した「過去の勇者」の青春時代とその一番弟子の幼少時代を書き始めた。二年以内に子供が青年を殺し損ね、青年は少年を殺したと信じて終わる条件付きで。青年は子供の心の扉を叩こうとする、子供はその気配を感じているし青年がどんな人間かはとうにわかっている、それでも。
この世界の造物主は元から狂っていた
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