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enoki181
2024-12-11 18:39:43
12362文字
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リプレイ
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【ストリテラ】すみおよぐ 春の巻
俳優:黝さん、エノキ
シナリオ
https://talto.cc/projects/dagCgVBVKt-iDzdJLF96Z
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◆ファイナルチャプター:春を越えて
桜は爛漫としている。人々の喧騒は、山の桜にも届く。その幹の根本にまだ眠る虫たち。土の下に生きる屍。遠くの葛籠に映る景色は、穏やかな花見の様子も時に映し出す。
春を越えれば夏が来る。秋が来る。冬が来る。春の季節は遠くなる。
また季節が巡れば、あの桜並木の話をする、屋台の目深の男が現れるのだろう。
三田 小一郎:はらはら、桜が散る。
「花見の季節も終わりかぁ」
こうして、あっという間に春も終わっていくのだろう。
家の縁側に腰掛け、外を見ていた。
不思議なこの世界でも季節は移ろうらしい。
あのあと、外の様子は元に戻った。
二人きり、穏やかで平穏な世界のままだ。
「ここでなら紅璃は水槽に浸かっていなくても平気だね」
隣に座る紅璃の頬は、金魚らしく赤々としていた。具合の悪さはなさそうだ。
「夏がくるけど、お祭りには行けないかな。少し寂しいね」
紅璃:「お祭りには行けないかもしれないけど、わたしはこいちろーと一緒にいられるからいいの」
そう言って花見の季節も終わりを告げ、蝉の声が聞こえてくるであろう時期に差し掛かってくる気配を空気で感じながら、わたしは座っているこいちろーの膝の上に寝そべる。
「でも熱くなるのは嫌
……
水槽に浸かっていたくなるもの」
そう言うとわたしはあの家にあった水槽が恋しくなる。でももうあそこには帰れないから、あの棲家は諦めるしかない。
「ねぇ、こいちろー」
「また来年、二人で一緒にさくら、見ようね」
そう、ゴロンと寝返りながらこいちろーを見上げる。
三田 小一郎:それはそうだ。僕も、紅璃がいればそれだけでいいのだけど。
「水槽
……
買えないよなぁ」
お金の概念もない。望んだら出てきたりするのだろうか
……
紅璃が干乾びたら大変なのだけど。
――
そんなことよりも。
紅璃が未来の約束をしてくれることが、とても嬉しい。
小さく頷き、前かがみになって紅璃に口付ける。
「その前に、紅葉狩りもできるかな」
「雪も降るかな。温泉
……
どこかにあればいいんだけど」
紅璃の手を握る。
あたたかいのか、つめたいのか。僕にはもうよくわからないけれど。たしかに紅璃の形をしているだけで、それだけで、僕は胸がいっぱいで。
「紅璃と見たい景色がたくさんあるんだ」
満面の笑みで笑った。
紅璃:「こいちろー」
柔らかいこいちろーからの口付けに私は頬を赤く染めて、その後のこいちろーの言葉に頷いて返す。
「ええ、きっと紅葉狩りもできるし雪も降るわ!温泉だって、あの缶詰だってきっとあるはずよ!」
「わたしもこれからこいちろーと沢山の思い出を作って沢山の景色を見たいの。これから見るものはきっと素敵な景色よ」
こいちろーに手を握られて私は嬉しくなる。
彼の手も私の手と同じで暖かいのか冷たいのかわからないけれど、この手を取れることが今一番二人にとっては幸せなんだって。
わたしとこいちろーがいなくなったあの世界も、今頃はここと同じように桜が散ってもうすぐ夏が訪れようとしているのかしら?
そんなことに思いをはせたところでわたしは彼の手をきゅっと握り返した。
三田 小一郎:缶詰はないかなぁ、とは口に出さずに笑う。二人だけなら缶詰をする必要もないのだ。
僕たちの未来はわからない。
いつまで続くかわからないし、案外すぐ終わるのかもしれないし。
それでも、二人で同じ方向を向いている“今”がある。
それだけで幸せだった。
***
季節は巡る。
また春がやってくる。
一目を避けるよう桜の中を彷徨う者がいれば、目深に帽子を被った屋台の男が現れる。
穴場のいい場所がある、と誘うのだ。
「ただし、帰れるかどうかは知らないよ。桜は人を惑わせる」
「それに、知っているだろう、あの噂」
「桜の木の下には、死体が埋まっている、ってさ」
「脅かしじゃないぜ。本当に帰って来なかった奴がいるんだ」
「今頃、桜の木の下で眠っていたりしてな」
桜の木の下、一人の男が足を投げ出して座っている。
両手には大事そうに金魚鉢を抱えて。
閉じられた両目が開くことはない。
幸せな夢を見ているかのような笑みの浮かぶ顔には、桜の花弁がいつまでも降り注いでいた。
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