すなつき
2024-12-07 10:23:03
18315文字
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ライアキbioパロ まとめ

Xへ投下中のbioパロまとめです。
全て格納済み

簡単な設定

街ひとつ飲み込んだホロウの中に溢れていたのはエーテルにより侵蝕されたエーテリアス……ではなく、ゾンビになった人間たちだった!みたいな話。
エーテリアスと呼んでいるけど、外見は基本的にゾンビ。他に寄生型がおりこちらは見かけは普通の人間なので、マジニやガナード系。定期的に掃討しないとホロウ内がゾンビだらけになってしまうため、政府機関だけでなく民間のエージェントも出入りしている。銃火器持たせたかっただけ。

パエトーン
アキラとリンと、ときどきFairy。
ホロウの内と外を繋ぐ特殊な無線技術によりリアルタイムでサポートしてくれる伝説のプロキシ。主に救出任務が多い。
直接ホロウ内に向かうこともあり、兄のスナイパーとしての技術は高い。妹はややトリガーハッピーなところがあるので基本的にホロウに入るのは兄のみ。




「パエトーン様ッ!!」

見上げるライカンの目が大きく見開かれ動揺を表すかのように小さく揺れている様を見て、アキラは力なく口の端を引き上げて見せた。
鉄パイプは肺を貫いているのか、喉元から迫り上がるように溢れてきた温い物に僅かに咳き込む。薄く開いたアキラの口からぼたぼたと決して少なくはない赤い物が落ちていった。

「だぃ、じょ、ぉ、ぶ、ッ、ぅグ、だ、から」
「喋らないでくださいませ!!」

ライカンは鼻に皺を寄せて怒鳴るような勢いで叫んだ。その手は傷口を押さえるようにアキラの胸部に置かれている。
ライカンの手はたちまちに真っ赤に染まって濡れていった。よく手入れのされた指先までもが自分のそれに染まってしまうことを申し訳なく思いながらアキラはやんわりとその手首を掴んだ。
訝しむようなライカンを見おろしながらも、アキラはもう片方の手をウエストバッグのぶら下がるタクティカルベルトへと這わせた。震える指先に舌打ちしたくなるのをぐっと堪えて何とか掴んだそれをライカンに手渡す。

「これ、は」
「ぷれ、ぜんと、かな」

人差し指をピンにかけたまま、アキラが視線で示した先には鉄骨の剣山から抜け出そうと藻掻く斧のエーテリアスがいる。
ライカンは一度エーテリアスを見て、それからまたアキラを見あげた。
血で赤く染まる唇をやんわりと笑みの形に変えながらアキラはライカンの手にそれを握らせる。大きな手にすっぽりと収まるそれを見おろし、ライカンはしっかりと握りしめた。
爪で間違ってもそれを傷つけてしまわぬように、しかし取り落としてもしまわぬように。藻掻くエーテリアスを睨みつけて、ライカンはピンの穴に太い犬歯を引っ掛けた。

エーテリアスの巨体が蠢き、黒い液体をどばどばと流しながら鉄骨から逃れようと躍起になっている。
あれほどのダメージを受けてなお、斧のエーテリアスが動けるのはコアの破壊に至らなかったからだろう。ぱっくりと開いた胸部に黒いコアが鈍い光を放ってまだそこに存在している。
これは絶好のチャンスである。
ライカンはふぅ、と短く息を吐いて手にしたそれ、手榴弾のピンを引き抜きエーテリアスの胸部目掛けて投げ込んだ。
素晴らしいコントロールを持って深い緑色をした手榴弾は離れたエーテリアスの開いた胸部へと吸い込まれるようにして転がり込んだ。けたたましい声を上げたエーテリアスは藻掻きながら胸部へと手を突っ込み手榴弾を掴み上げようとした。
タールのような液体が胸部から溢れ、暴れながらエーテリアスがようよう掴み上げた刹那。

「おねん、ねの、じかん、だよ」

ライカンに上体を支えられたアキラの握る、ベレッタの平らなマズルがひたりと標準を合わせていた。震える指先は、しかしブレることなくトリガーを引く。
発砲音を置き去りにマズルフラッシュと共に押し出された9mmパラベラム弾は回転しながらエーテリアスが持ち上げた手榴弾の、そのど真ん中へとぶち当たった。弾頭がへしゃげて、衝撃波が発生する。それは起爆間近であった手榴弾の爆発を僅かに早め、剥き出しのコアのすぐ目の前で盛大に爆ぜてみせた。

エーテリアスは、爆風でコアのみならず上半身を無残に破壊され、背後に聳えていた巨大なビルの残骸が衝撃でズズッと歪な音をたてる。それは串刺しの体からだらりと力が抜けたエーテリアスの真上にゆっくりと崩れて落ちて、粉塵を巻き上げながらその身を瓦礫の下に覆い隠した。
エーテリアスがいた場所からは、どろりとした黒い液体が流れて、やがてしゅわしゅわと蒸発するようにして消えていく。

「は、ははっ……しまら、ないな」
「パエトーン様、それ以上お喋りなさいませんよう」

膝から力が抜けてかくんと体勢を崩したアキラをライカンは下からしっかりと支えた。
フードの外れたアキラの顔は、紙のように白くなっている。体を貫いたパイプも、流れる血も未だそのままだ。一刻も早くホロウを出て治療に当たらねばならない。
出口はもうすぐそこのはずである。爆発音を聞きつけて他のエーテリアスがやってくる前に移動しようとライカンは鼻をひくつかせた。不快なエーテリアスの臭いは僅かに遠くからするが、それ以上にアキラから錆びた鉄の匂いが強く立ち込めている。

「ごめ、アルファ、さん……おね、がい、が」
「あなた様を置いていけ、という言葉以外でしたら極力聞き入れます」
「ふ、ふふっ……いわない、よ……できれば、これ、を、ぬいて、くれない、かい?」
「これ?」

そうだよ、これ。とアキラが浅い呼吸を繰り返しながら指さしたのは彼の体を貫くパイプであった。
無闇矢鱈に刺さった物を抜いてしまえば、出血は今よりも増えてしまう。この場には碌な救命道具もない。ライカンが傷口を押さえたとて、アキラが医療機関まで持ちこたえるかどうかも分からない。ゆえに到底聞き入れることのできないお願いだった。
ライカンは眉間に皺を刻みながらアキラを睨むように見あげた。

「そ、んな、顔しないで、よ」
「しかし!」
「こんな、ことじゃ……ぼくは、しなない、から」

妹が待っているからね、とアキラは笑ってみせた。ライカンの肩に置かれた手にさほど力も込められないのに、気丈に笑ってみせるのだ。
アキラが生還する僅かな可能性が残っているならぱライカンは迷うことなくそれに全てを賭けるつもりでいるのに。その選択肢は当の本人より排除されてしまった。
ただ、何の根拠もないのにアキラは死なないとそう断言する。
深い緑色の目をうっすらと水色に輝かせてアキラは、ライカンの顔に指先を這わせながら再び言葉を重ねた。

「でんせつの、パエトーンを、しんじてよ。ぼくは、しなない」
……ッ」

ライカンは、息を飲みそれから強く目を閉じた。

「死なないと、そう、約束してくださいますか」
「うん、もちろん……ゆびきりが、ひつようかい?」

差し出されたアキラの細い小指に、ライカンは迷うことなく己の小指を絡ませた。きゅうと握り、祈るように引き寄せる。

「嘘をつけば、オオカミがやってきますよ」
「あなたの、ような、おーかみ、なら、かんげいだね」
……辛ければ肩に噛みついてくださいませ」
「それじゃあ、ぼくのほうが、お、かみ、だ」

ライカンはアキラの手を引き己の肩を掴ませた。同時に襟元を寛げて柔らかな首筋を晒す。そこにアキラの頭を誘導して、ゆっくりと背面に伸びる鉄パイプを握った。

「いきますよ」
「ぁ、あ……いい、よ」

落ち着けと、何度も自分に言い聞かせてライカンは鉄パイプを引き抜き始めた。

「ヒ、あ"ッ! ぅン"……!! グ、ン"ン"ッ!」

ミチ、と肉を引き裂くような音がして鉄パイプに抵抗が残る。まるで癒着しているかのように思えた。
アキラの悲鳴が漏れると同時に首元にピリとした痛みが走る。声を殺し、痛みを紛らわせるために歯を立てたアキラは荒い呼吸を繰り返しながら体を硬直させた。
少しでも気を紛らわせる痛みを緩和できるようにとライカンは空いた手でアキラの背中を何度も擦った。首の痛みは増して、肩にすがる手は爪が食い込んでいたがアキラの痛みに比べれば些細なものでしかない。
数秒をかけて鉄のパイプはミチミチと音を立てながら引き抜かれ、ぽっかりと開いた胸部の穴を晒した。
足元に落としたパイプが乾いた音を立てて転がっていく。

「ハ、ァ……ふ、ぅ、きもち、わるいことを……ごめんね」

涙で頬をしとどに濡らしたアキラの体がぐったりとライカンにもたれかかる。
ライカンは言葉を発することなく首を左右に振りアキラの体を横抱きにした。軽くて、細くて、あまりに頼りないその体を壊してしまわぬように繊細な力で、しかししっかりと抱きしめる。
せめてもと傷口を押さえるために薄い胸部に掌を当てて、それからはくりと口を開閉させた。

「パエトーン、様?」
「ぅん……?」
「これは、一体」

ライカンの手が丈の短いパーカーの裾をたくしあげる。
パーカーには勿論パイプが貫いた穴が空いている。その下に纏うぴったりとしたボディスーツにも当然のごとく、穴が空いている。
しかしその下、確かに血が流れ出て、ライカンが肉を裂きながらパイプを引き抜き、向こう側が見えるように開いていた穴は見当たらなかった。
血がこびりついたつるりとした肌が衣服の穴から除いている。ライカンは確かめるように覗く肌の上を指先でなぞった。弾力のある人間の皮膚だ。少しだけ柔らかなそこに、穴が空いていた痕跡などどこにも見当たらなかった。

「ん、ぁ、あの、アルファさん……ちょっと、恥ずかしいかな」
「ッ! し、失礼を!」
「こんなところじゃなければ、じっくり見てもらっても構わないんだけれど」
「は、え?」
「例えば、ベッドの中とか」

ライカンはがちんと音がしそうな勢いで口を閉じて、代わりにひとつきりの赤い目を限界まで見開いた。
アキラはライカンの腕の中でクスクス笑いながら先ほどまでの死にそうな様子は微塵も感じられなかった。血だらけで、穴が空いた服と、白い顔色のみがそこに何かがあったことを思わせるだけだ。

ライカンはグルルと喉を鳴らして唸り声を上げながらアキラを抱きかかえたまま立ち上がる。
そのまま大股でズンズンとアキラが示したホロウの出口に向かって歩き始めた。

「言っただろう? 僕は死なないって」
……左様で」
「怒ってるのかい? 困ったな、可愛いあなたの顔を見せてくれないかな。ごめんね、のキスがしたいのだけれど」
「お戯れを!」

あはは、と軽い笑い声をあげるアキラの声を聞きながらライカンは義足を鳴らし駆けるようにしてホロウの裂け目に飛び込んだ。
どぷんと、水の中に沈むような感覚の後、鼻腔を満たしていた濃いエーテルの臭いが消え失せる。
空には欠けた月が浮かび上がり、心地の良い風が頬を撫でていく。

「おかえり、アルファさん」
……ええ、ただいま戻りましたパエトーン様」

離れた場所で手を振る見慣れた彼女たちの姿を認め、ようよう帰ってきたことを実感した。四肢の先にまで粘こく広がる疲労感を追い払ってライカンはアキラを抱え直すとゆっくりと、一歩踏み出した。



「行ってしまいましたわね、パエトーン様」
……ええ、そうですね」

ホロウの中で随分と濃厚な時間を過ごしたつもりであったが、アキラとの別れはすんなりとした呆気のないものであった。
迎えに来たという良く似た目の色をした少女に叱られながら、車に押し込まれ、あっという間に走り去ってしまったのだ。
余韻なんてものに浸る暇もなく、腕の中に先ほどまであった温もりを思い出しながらライカンはほうと息を吐いた。

「それにしても、随分と"キザ"なお方なのですわね」
「キザ、ですか? 彼が?」
「ええ、キザですわ……あら? もしかしてライカン、あなた気がついていないのかしら」

これ、とリナがしなやかな指先でトンとライカンの胸部を突く。懐中時計の仕舞われた胸ポケットの上に、つられる様に視線を落としたライカンはゆるゆると目を開いた。
白いカードのようなものがいつの間にかそこに押し込まれている。そっと引き出して見れば『Random Play』と書かれた1枚の何の変哲もないカードであったが、ひっくり返した裏面に走り書きのような文字が残されていた。

「くっ、ふふ……やられましたね、これは」
「あら、撃ち抜かれてしまったみたいねライカン」
「ええ、彼は随分と優秀なスナイパーでしたからね」

ライカンはひとしきり笑い声をあげて、そうっとカードを胸ポケットに押し込んだ。
カードの裏面には六分街のとあるビデオ屋の住所。それから踊るような文字で記されたメッセージ。

『来てくれないと浮気しちゃうよ、ライカンさん』

「浮気されてしまっては一途な狼は泣いてしまいますよ」

指先で布地越しにカードをなぞる。
さて、明日の予定はどうだっただろうか。にこにこと笑うリナの視線に気がつかない振りをしてライカンは月の浮かぶ夜空を見あげた。


(まずはあなた様のお名前から、教えていただけますかパエトーン様)