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いぬみ
2023-05-13 11:32:05
15805文字
Public
ガ!!
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太陽がしずんだ世界
王佐パロ、ガ清が死んだ後のデュゼオの話。
ゼ曇らせ。かなり病んでます。
フォロワーさんのネタから発展して妄想させていただきました。
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【side:デュフォー】
マントに包まれて、はてどんな景色やらと、頬に外界の空気に触れた感覚が伝った瞬間目を開けた。しかし想像していた風景はそこになく、代わりに、目の前には山道があった。
ここはどこだろう、と〝問う〟と、『城の裏口を出たところ』だと〝答え〟が出た。ここでたむろするとは思えない。だとしたら、想定される展開はひとつだ。
「歩くのか」
行く場所はけっこう険しいから、ちゃんとした靴を選んだ方がいい。ゼオンは出かける前にそう言っていたはずだ。その情報を照らし合わせると、その予想は実に的を射ているように思えた。実際、ゼオンは頷いて、「ああ。」と言った。
「疲れたり、ケガをしたら言え。手当ての心得は身につけてるから」
「それはこっちのセリフでもあるな」
「はは。
……
そうだな」
昔からオレに対して心配性なところがあった。少々過保護な発言をするので、負けじと言い返す。魔界に来る前は旅にも出ていたし、山道の歩き方も、ちょっとしたかすり傷の手当てのしかたも知っていた。茶化すように、安心させるように放った軽い口調を受け取ると、ゼオンもこぼすように笑う。くしゃりと、顔をゆがめて。
「道にも結界を張ったのか」
「ああ。一日しか持たんがな。日帰りならまあ、ちょうどいいだろう」
ゼオンが周りを見渡すたび、白いマントがはためいた。〝王〟としてまとう赤いものではなく、以前〝ゼオン〟として着ていたものだ。瞬間移動の際。マントに包まれる時。その色が白色だということ、白色を彼がまとっていること。今や、懐かしくて、見慣れていて、久しぶりだった。
「移動の際の景色というのも、良いものだからな」
せっかくの散歩なんだ。ただ、本当に無理だけはするなよ。外出するのは久々だ、知らぬ間に体力も落ちているかもしれない。ゼオンはゆったりと、しかし舌の根を乾かすことなく話しかけている。ゼオンもゼオンで、はしゃいでいるのかもしれない。何せ久しぶりだ。こうして外を出るのも、〝王〟でない素のままで、出歩くことも
……
。
少し、しんみりとする。事情が事情とはいえども、やはり、以前の生活が恋しくなることは、確かにある。
どちらともなく、歩き始めた。どちらが早いわけでも遅いわけでもなかった。強いて言うなら若干、ゼオンが先を歩いている。道順をゼオンが詳しく知っているというのと、あまりひとが立ち入らないゆえ自由奔放に伸ばした枝や葉、山道を気休めに整えるためだろう。
目的地は、一般的な山よりかは高さがないようだが、いかんせん道が舗装されていないので、スムーズに歩くのにはコツが要った。石や岩でせめぎあい、でこぼことした歩きづらい道のり。開放的な空間。生い茂る緑、花の匂い、きれいな空気。そのどれもが、新鮮だった。ああ、そういえばこうだった。地を踏み締め歩くとは、こういう感覚だった。既視感のある発見を繰り返す。すぐ息が上がったが、その感覚さえ、爽快感を伴った。
「楽しいな」
オレが止まれば、ゼオンも止まる。少し息を整えてから、ゼオンに向けてそう声をかける。「ああ。」と心配げながら、少し眉を下げて返事をする恋人の顔を、期待していた。
「そうだな」
実際、ゼオンは賛同した。しかし、何かが、オレの中で引っかかった。
……
どこか、つらそうだ。
ゼオンは、眉間にぎゅっとしわを寄せている。目は、少し悲しげに見えて、表情がぎこちない。表立って、明らかにおかしいわけではないが、ほんの少し、ほんの少しだけの違和感が、そこにあった。髪の毛がさらさら揺れている。ふ、と漏らす息がなぜか気になる。
まるで、放っておいたら、消えていって
……
イヤ、オレの目の前から、立ち去ってしまいそうだ。
そんな、儚さを感じた。決してさらわれるとか、そういったものではなく、自分の意思で、遠くへと行ってしまうような──そんな曖昧で、不確かな思いつき。ただ、それが頭から離れない。
「
……
ゼオン?」
「
……
ん? どうした、デュフォー」
不安になって名を呼ぶ。いつも通りの受け答えをされて、その顔もまた、いつも通りのものになったので、とりあえず、ほっ、とする。先程の違和はもう感じ取れない。
「いや」
……
あれはオレの見間違えだったのだろうか。歩き疲れ、だろうか。どきりどきりと、身体的か精神的か、どっちつかずの原因で心拍数が、いつもよりも少しだけ、高い。
「何でもない」
結果的に、後回しにした。直球で訊いたって、困惑させるか、もし心当たりがあったとしてはぐらかされるだけだろう。今は、可能性のひとつとして、非確定な不穏分子として、見守るのが吉だろうと、判断した。
言いながらゼオンの手を握った。無意識だったが、訂正はしなかった。ゼオンは少し手のひらを強ばらせた後、「急になんだ」と満更なさげで照れくさそうな声を上げて、握り返してくれた。
杞憂だったらいい。いやしかし。ゼオンのことだから。嫌な予感をなだめすかしては、足を動かした。
今は散歩に集中しよう。ゼオンもそれを望んでいる。楽しもう。
息を荒らげながら、そう思った。
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