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残りの夜が来た
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星矢
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愚者の黄金
デスマスク(17)がシュラやサガにモヤモヤイライラする話 無印+ギガンントマキアベース 過去設定捏造
初出・同人誌(個人)「愚者の黄金」2013年
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アフロディーテが差し入れを持ってやって来たが、俺の傷はまだしつこく痛みを訴えていた。サガによると罠の効力が切れればこの傷も治るらしいが、その兆しはまだ見えず、さらにシュラに吹っ飛ばされた背中の傷も痛んでいるような気がするのだが、どちらにせよ、彼の持ってきた酒を飲める体調ではなかった。
「何で酒なんか持ってくるんだよ」
アフロディーテは「仕方ないだろう」と言い、自分だけグラスを傾ける。「私闘なんかするからだ」
「ただの喧嘩だ」
「仲のよろしいことで」
言いたいことが無いわけではなかったが返す言葉にはならず、俺はアフロディーテの手の中の柘色をぼんやり見つめた。それは瞬く間になくなり、またすぐに補充される。ふと不安に襲われる。
「
……
おい、ちょっとは取っておけよ」
「酸化したら不味くなりそうだけど。どんな味か実況してやろうか」
「いらん」
アフロディーテは冗談だと笑う。その割に瓶の中の液体が残り五センチ程になっているのを見逃しているわけではない。俺とシュラが負傷している間の雑用を押し付けた罪滅ぼしも兼ねて黙認しているだけだ。
「何しに来たんだよ、お前」
彼は「見舞いだ」とほろ酔いのご機嫌で言い、「と、そうだ、サガが呼んでいたぞ」と付け加えた。
「新しい候補生のことで」
「先に言えよ!」
「途中でこれを受け取ったら忘れてしまった」
アフロディーテは自分で持って来た瓶を指さす。俺が首を傾げると、見るのも面倒になるくらい美しい笑顔が帰ってきた。「実はこの酒、シュラからなんだ」
「は?」
「お見舞いだって」
彼はもう一度「仲のよろしいことで」と言い、ケラケラと笑う。
新しい候補生とは、最近大挙して押し寄せて来たガキどもの事だ。どう考えても誰かの差し金だったが、全て拒否して突き返すわけにも行かない。サガはせっせと指導者の振り分けをしていた。
「お呼びでしょうか教皇殿」
「遅い」
「直接呼べばいいだろう」
予測はしていたが、俺の文句は無視された。「候補生のことだ」
「ああ、聞いたけど
……
」
サガは写真を掲げた。アジア人の少年が何人か映っている。そのうちの一人を指差し、彼は「お前の弟子だ」と言った。
「
……
」
文字通り絶句した俺を見て、サガは怪訝な顔をした。
「何を呆けている」
「弟子って、」
「驚くようなことか」
「
……
そんな余裕あるのかよ」
驚くようなことだ。アテナの調査もあるだろうし、ポセイドンやハーデスにもピリピリしているこの男は、あの儀式すら辞めるつもりがないのだ。「エトナ山のあれだって」
「それがこの少年だ」
「
……
は?」
「名前は盟。彼はエトナ山の聖衣の鍵になる人間だ。大事に育てろ」
サガは投げつけるように写真を寄越してきた。指さされた少年は周囲に映っているガキ共と何も変わらず、見れば見るほど異国の少年に過ぎなかった。サガが言うのならば鍵なのだろうが、この件に関してそれ以上の判断基準がない。
俺は彼について考えるのをやめた。代わりに一体何を教えるっていうんだ」と皮肉を投げる。するとサガは事も無げに、
「聖闘士の在り方でも教えてやれ」
「
……
」
あんた最低だな、と言うと、サガは笑った。
刃のような強い笑みはかつてのそれと似ても似つかなかったが、同時に彼以外の何者でもなかった。俺は何かを諦めたような心持ちで、再び写真の少年を見る。
……
残念。お前も、
歴史に残す意義のない戦い
ギガントマキア
の登場人物らしいぞ。
正史に残らない彼をどんな聖闘士に仕上げてやろうかと考えながら、俺は彼の顔と名前を結びつけた。
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