ベコ
2024-11-18 22:52:17
4956文字
Public CP無し
 

ギャメルは俺が育てた

セザールとギャメルの出会いから別れまで。
※セザールの人物像思いっきり捏造してるのでご注意ください。


ギャメルが黒爪盗賊団を抜けた。
その噂は同業者たちの間で瞬く間に広がっていった。末端の小さな盗賊団であるセザールの耳にも入ってくるほどだ。
「そうか、アイツが……
セザールはぽつりと呟き、かつての部下に思いを馳せた。
ギャメルがセザールの団を抜け、新たな盗賊団を立ち上げた当初は期待と心配半々の保護者のような気持ちで見守っていたセザールだったが、まさかあれほど見事なまでに統制のとれた組織になるとは思いもよらなかった。
黒爪盗賊団の悪名が聞こえてくる度に、セザールはほくそ笑んだ。ギャメルの将来性を見込んでこれまで可愛がってきたが、やはり自分の目に間違いはなかったとひとり満足げに頷くのだ。アイツを育てたのはこの俺だ、と。
そんな一人前の立派な盗賊だった奴が、一体どんな理由があって自ら黒爪盗賊団を手放したのか。
聞くところによると解放軍にこっ酷くやられて心が折れただの、負けた責任を取って辞めただの、実は捕まって牢屋に入れられているだの、様々な憶測が飛び交っているらしい。結局のところ事情は不明だが、ギャメルがいなくなったことだけは確かな事実だ。
噂されている内容のどれも、セザールにはピンと来なかった。ギャメルは目的の為ならばどんなことでもやり遂げる意思の強い男だ。彼の目的がなんなのかは知らないし聞くつもりもなかったが、とにかく大金を欲していたことだけはわかっていた。あの必死さを見るに敗北した程度で諦めたり、責任を感じて退いたりするような人間じゃない。もし本当に投獄されたなら、必ず団員達が助けに行くはずだ。
そうなると考えられるのは、目的が達成されたということくらいか。だが解放軍に仕事を邪魔されて儲けが無くなってしまったのだから、その線も薄い。
一つ言えるとしたら、黒爪盗賊団が今のギャメルにはもう必要なくなったということだ。何か別の手段を思いつくなり、大きな心境の変化なりがあったんだろう。



それはさておき、ここで問題になるのはこれからの黒爪盗賊団を誰が率いるのかという話だ。
団員達はきっと今ごろ慌てふためいていることだろう。今までずっとギャメルの手腕だけで成り立っていたのだから。だが彼らの結束は固い。ギャメルがいなくなったからと言ってすぐ崩壊するような無様な姿は晒さないだろう。団員達の中から我こそはという者が名乗り出れば良いが、皆ギャメルの統率力を知っているだけに跡を引き継ぐことが相当な重圧になるであろうことは想像に難くない。もし団内で頭目が決まらなければ、外から適任者を連れてくるしかあるまい。
―――そいつは気に入らねえな。
セザールは考えを巡らせる中でふとそう思った。
可愛い後輩が作り上げた盗賊団を、どこの誰とも知れない馬の骨に掻っ攫われる。それだけでも腹が立つのに、もしもそいつがろくでもない奴で、黒爪盗賊団がめちゃくちゃにされてしまったとしたら……自分はそいつをぶっ殺したくなるだろう。
我ながら突飛な想像をしているとセザールは自嘲するが、やはり余所者に黒爪盗賊団を好きにされると思うと腹の虫が治まらない。
―――それならば、いっそ俺が頭目になってやろうか。
セザールにはもともと野心はそれほど無く、自分や仲間が食っていけるだけの稼ぎがあればそれで良いという考えの持ち主だ。大きな集団を率いるなんて夢にも思っていなかった、この時までは。
なにも大きな組織の長としてふんぞり返りたいわけじゃない。ただ、ギャメルが作った盗賊団を守ってやりたいというささやかな願いだけが胸にあった。



早速セザールは黒爪盗賊団との接触を図った。
ギャメルがセザールの下を去ってからも時折交流はあったし、何よりギャメル本人が団員達にかつてセザールに世話になったことを度々語っていたことなどから話はトントン拍子に進み、セザールは黒爪盗賊団の頭目として歓迎されることとなる。
なんとか無事に事を運べたが、大変なのはこれからだ。この集団をどう維持していくか。己のミスで団を潰す羽目になっては目も当てられないと、セザールの肩にプレッシャーが重くのしかかる。
―――あいつ、これだけの集団を今までよくまとめてたな。
改めてギャメルの手腕に舌を巻く。が、その技術を教えたのは自分だ。きっと自分にも出来ない筈はない。己にそう言い聞かせ、セザールはなんとか自身を奮い立たせた。
とにかく盗賊団を潰さないように。思案に思案を重ねた結果、セザールはゼノイラ軍との協力関係を取りつけることとなる。後ろ盾があればひとまず安心だ。ゼノイラ軍からの依頼もなかなか実入りが良く、大勢の部下達に分配するのに申し分ない稼ぎであった。セザールはまずまず良好な出だしだとホッと一息ついた。