木々が鬱蒼と生い茂る薄暗い森の中、一人の男が何かを探すように歩いていた。血色の悪い顔で頬も痩せこけていたが、その足取りは意外にもしっかりしている。
男はやがて一軒の古びた建物に辿り着いた。建物の前で立ち止まると、深呼吸を静かにひとつ。鋭い眼光をその目に宿し、男は扉に手をかけた。
突然開かれた扉に中の視線が一斉に集まった。
「ここに盗賊団のアジトがあるって聞いて来たんだけどよ」
男は入り口に立ってふてぶてしく言い放ち、周囲をぐるりと見渡した。室内には柄の悪い男が数人。誰も彼も善良な市民とは言い難い者ばかりだ。
「ああ?!なんだテメェはよぉ!」
その者達の中でもひときわ体格の良い男が来訪者の前に立ちはだかり、警戒心を露わに威嚇する。
「金がいるんだ。手っ取り早く金稼ぐならこれしかねえと思ってよ。俺を仲間に入れてくれ」
来訪者の視線は眼前に立つ大男ではなく、奥に座っている別の男の姿を捉えていた。
「どうするよ、セザール団長。追っ払うか?」
大男は振り返り、来訪者の目線の先にいる男に声をかける。
セザールと呼ばれたその男は、じっくりと品定めをするように来訪者の姿を眺めた。
貧相な身体のくせして態度だけは一丁前。しかしただの虚勢でないことはわかる。この目つきは本物だ。なりふり構っていられない事情があるのだろう。覚悟を決めた人間は強い。その必死さからは悲壮感さえ漂ってくる。コイツは使えると、セザールの直感が告げていた。
「いいぜ、しっかり役に立てよ。俺はセザール、ここの頭目をやっている。お前は?」
「ギャメルだ」
ギャメルと名乗る来訪者は、めでたく盗賊の仲間入りを認められた。
「そこに倉庫番がいるだろ。アイツを殺して倉庫の荷物を奪う。やれるな?ギャメル」
セザールはギャメルに剣を手渡しながら簡単に指示を出す。ギャメルは微かに息を呑んだ。手に持たされた剣がやけにずっしりと重く感じる。
「しくじっても俺らが控えてるから気にすんな。まずは一人で行ってみろ。まあ、テストみたいなもんだと思えばいい」
「……やってやるさ」
ギャメルは小さく返事をすると、相手に気づかれないよう死角からそっと動き出した。そして――――――
「やるじゃねえかアイツ」
倉庫の前で呆然と立ち尽くすギャメル。その手や衣服は赤く濡れている。足もとには倉庫番の男が血を流して倒れていた。
「でかしたぞ、ギャメル」
セザールはギャメルの肩をポンと軽やかに叩くと、仲間を引き連れ倉庫の中に押し入った。盗賊達は流れるように順序よく中の荷物を運び出していく。
全ての荷物を馬車に載せ終え、セザールは再びギャメルに声をかけた。
「よし、帰るぞ」
かくしてギャメルの初仕事は成功を納めた。
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