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さもゆ
2024-11-16 22:42:30
20885文字
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BBB
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【血界】小話あつめ。
cpとして書いてないぞこりゃあ、と思ったものまとめ。以下各ページメインキャラ。
1.先輩と番頭。
2.少年と副官。
3,警部補と少年とモブ。
4.少年とボス。
5.人狼と半魚人。
6.副官とボス。
7.人狼と副官。
2020.4.12 たまごのお粥pixiv投稿作品
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(副官と現場一緒になった少年には寒さで「ザップさんの炎が恋しい」って言ってほしいという欲からきた話)
昨日の夜は何食べた? という質問はバイト先の店長が口にするお決まりの文句と同じだった。料理人で料理が好きということもあり、異質な見た目と口下手な店長は毎回そう訊いてくる。何もやましいこと(夕食を訊かれることだけで何かしらのやましい可能性が浮上してしまうのだ、この街は)がないレオナルドは、大抵素直に答える。
「昨日の夜はー
……
スナック菓子っすね
……
」
すると店長は決まってちょっと怒るとその日の賄いを少し多めに作ってくれるのである。打算的に答えたわけではない。ただの事実を述べたまでだ。
横にいる本業(と言えるかどうか怪しいがそうとしておこう)の職場の上司は、質問こそ店長と同じだったけれど、その後の反応は彼より数倍剣呑なものになった。
「スナック菓子? 早死したいのか?」
侮蔑さえ含まれている気がする低音にヒエッと竦み上がってしまう。たぶんいい顔はされないだろうと予想はしていたものの、そんな底冷えするような眼差しを向けられる謂れはない。「は、早死はしたくないですけど」しどろもどろになる。
上司は呆れた溜め息を吐き出すと、打って変わって同情するように見つめてきた。
「まだ若いからいいかもしれないけどな、そんな食生活続けてたら後々必ず体にくるぞ」
「
……
実体験すか」
「そうだったら早くに死んでる」
つまりこのままの生活を続けていたら三十二になるまでに死ぬぞという暗喩である。
「い、いや、でも」と反射的に口走ったのは良くなかったかもしれない。この人と喋っているとよくある現象だ。後ろめたいことなど何もないのに勝手に咎められている気分になってくる。いや、今は確かに咎められているのだろうが。「なんだ。でも?」「でっ、で、でも」そのまま口をついて出てしまう。
「ら、楽なんすよ。手っ取り早くカロリー取れるし、嗜好品食べてるーっていう幸福感もあるし、一袋で満足できるし
……
」
言っているうちに場を支配していた冷気が彼の硬質な靴裏から新たに漏れ出ていることに気づき、またヒエッと身を縮こめた。勘弁してほしい。血流を操作し自分の氷に殺されない術を持つ彼とは違い、レオナルドは普通に寒さで凍えて死んでしまえる。さっきから気づかれないように頑張っているが寒くて震えているのだ。これ以上は無理だ。
「
……
そんなに金に困ってるのか? 何度も言うけど活動資金の前借りでもなんでも、」
「あっ違いますただ面倒なだけで、」
「余計に度し難いな」
ザップより馬鹿かもしれん、言われたそれに糸目の間をむっと皺つける。数週間絶食状態なくせしてフライドチキンをかっ込み入院した先輩よりは食に関して気遣いを持てている自信がある。だがそう反論したら更に馬鹿にされることくらいは予想がついたので、むぐぐと黙る。レオナルドとて、自分の食生活があまり誇れたものではないのは充分承知している。それでも中々改善しようとしないのが、ここに来るまで実家暮らしだったのに妹に「食に大雑把」と評される由縁でもあった。
「野菜食え野菜。そのまま食えるやつもあるだろ」
ミシェーラみたいなこと言いますねマジで、言いそうになって既でとめる。
「や、そうなんすけどー
……
腹膨れないから
……
」
「菓子だってそう変わらんだろ」
「味がある分幸福感あります」
「ドレッシングつけろよ」
「め、」んどくさいじゃないっすか、とは言えなかった。上司がじとりと睨んできたのもあったが、同時に轟音が鳴り響いたので。
──四方を取り囲んでいた氷壁が砕け散る。噴煙に紛れて破片が炸裂してきたが、踵を踏み下ろして出現させた凍てつく盾に阻まれ事なきを得た。ぎゃあっと情けない悲鳴を条件反射であげ尻もちをつきながら、頭の冷静な部分が、ああそういえば戦闘中だったな、と思う。
自分を助けるために氷の壁を作ってくれていた上司は、レオナルドが慌てふためいて礼を告げるより先に、質問してきたのだった。昨日の夜は何食べた? と。なぜ今その質問を、と後々になって疑問に思ったけれど。その瞬間は困惑を通り越して与えられた質問に答えるしか脳がなかった。
氷壁を吹き飛ばした魔獣がぐつぐつ笑っている。
歯の音ががちりと音を立てる。白息が歯列の隙間から漏れ出てひどく寒い。
「ざ、ざ、ザップさんの炎が恋しい」
心底からそう思って言った。隣の氷の男がちょっと分かる、と呟いたのを少し意外に思いながらガタガタ震える足で立ち上がると、ぐいと手首を引っ張りこまれてよろめいた。面食らって見上げるとまた馬鹿にして同情するような視線とかち合う。
「こんなに冷えてる。肉食わないからだぞ」
意味が分からなかった。
お互いの意思疎通力にきっと隔たりがある。
というか、むしろ、おそらく、彼は意味を分からせようとして会話していない。そんな印象がある。自己完結している。
「いや、寒いのはスティーブンさんの、」せいなんですけど、とはまたもや言えずに終わった。ぐつぐつ笑いが氷塊を蹴飛ばしながら突進してきたからだ。
腕が引っこ抜かれる勢いで引っ張られる。いでっ、と声をあげ、側頭部を彼の胸板に強かに打ちつけついでに舌も噛んだ。頭の上で時折おざなりにされる必殺技の名前が紡がれる。何ものをも凍らせる血を持つ彼の体は相反して温かく、そーいえばザップさんも血法使ってる時は冷たいんだよな、と思った。血流操作。さっきも考えたその言葉がぽんと浮かぶ。もしかしたら彼らも、油断をしたら自分の血に殺されるのかもしれない。
レオナルドからしたら。
……
レオナルドからしたら、彼らの方がよっぽど、早死しそうと思うのだけれど。
でもそれは野菜を食えとか肉を食えとかで済む話ではないのだ。
重鈍く鋭利な刃が肉を撃ち破る音がする。そんな中、レオナルドはハーと溜め息吐いて上司の上等なスーツに大人しくしがみついているしかなかった。
「
……
スティーブンさんは
……
ずるいっスよねー
……
」
俺のことそうやって普通に心配してアドバイスして怒れますもんねえ。
ぼやきに、意味が分からないといった声音でスティーブンはきみたまに意味分からんこと言うよな、と言った。
いや、アンタだよ。
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