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さもゆ
2024-11-16 22:42:30
20885文字
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BBB
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【血界】小話あつめ。
cpとして書いてないぞこりゃあ、と思ったものまとめ。以下各ページメインキャラ。
1.先輩と番頭。
2.少年と副官。
3,警部補と少年とモブ。
4.少年とボス。
5.人狼と半魚人。
6.副官とボス。
7.人狼と副官。
2020.4.12 たまごのお粥pixiv投稿作品
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(少年を守りながら戦う癖がついちゃった先輩が間違って番頭を吹っ飛ばした話)
無条件反射か条件反射どちらかと訊かれたらふざけんな俺はパブロフの犬じゃねえんだぞと舌打ちしたくなるので、絶対に後天的な癖になんぞなってねえ無条件反射だわこちとら生まれながらの天才だぞバーーーーカ、と答える。けれども本当に面白くない、そして自分がそんな面倒な癖を後付けで無自覚ながらに習得したとしたら、これは絶対に、絶対にあの生意気な陰毛頭の後輩のせいだ。
そして本当に本当に本当に認めたくはないが、おそらくあの犬女も関係している。
この二人ときたら一方はほぼチートな目玉を持っているくせに自分のためには滅多に使わないなよなよした弱っちい後輩と、もう一方は自分という存在に対してならほぼチートな能力を持っているくせにそれがなければただの飲んだくれの貧弱な同僚であって、戦闘においては他人に世話ばかりかけさせている似た者同士である。どれだけ俺がこいつらの面倒を見ていることか! (別に見たくて見ているわけじゃない。仕方なく、だ。なのにそう不承不承しているとあの何を考えているかよく分からない番頭はやれやれと肩を竦める。俺に対して明け透けなのが解せない)
つまり職場環境が悪かった。
ただでさえ性質が似ているのに、後輩も同僚も、奴ら二人とも黒髪なのだ。
あっ、と思った時には顔が引き攣っていた。
伸ばした血紐は想定していたより重量のある人間を吹っ飛ばしたことを手指に知らせ、燃える血が流れている体を一瞬で悪寒に支配させた。今までなら有り得ないミスにチッと舌打ちとスラングが口をついて出る。
吹っ飛ばした先、視界の片隅で瓦礫から噴煙が巻き上がっている。煙だけでなく霧が凍え冷気が吹き荒び、俺はげえっと顔だけでなく声も引き攣らせてそこから血紐を戻した。が、間に合うはずがない。煙に飲まれていた箇所からみるみるうちに血が凍りつき、マジか嘘だろと体に戻る前にそれを裁ち切る。ぱしゃんっ。液体になった血は地面を汚し、凍った部分はかしゃりと落ちた。ゾッとする。
「
……
おいおいおい、ザァーップ
……
」
地獄が灼熱の炎で炙られているなんて話は嘘に違いない。瓦礫の隙間から這い寄ってくる凄まじい冷気にそんなことを思う。
唐突に俺に吹き飛ばされ、瓦礫の山に突っ込んだ──尚もちろんのこと受け身は取ったようであるし容赦なく反撃されたあたり俺の方が被害が大きいだろう。たぶん──普段何を考えているかよく分からない、姐さん曰くの腹黒上司は、転がるコンクリの塊をバキバキ凍らせながら今だけは明確に感情が分かる顔つきをして立ち上がった。分かりやすい。喜怒哀楽で言ったら怒一択だ。
口元だけがひくりと弧を描いているのが余計に怖い。
「
……
一体なんの真似だ?」fuckin' Zapp と事務所でほかの連中がいたなら絶対にしない呼び方で俺を呼んだ上司は、口の端から白息を漏れ出させている。気温が急激にダダ下がり、慌てて血法を使い体温を引き上げ、カッと温まると同時に叫んでいた。「ごか誤解ッ、誤解ですってスターフェイズさん!」俺があんたに攻撃するわけないでしょお!? 喚きに上司は緩慢に首を傾げる。
「どーだろうな。僕は構わないぜ。やるか?」
おかしそうに笑っている。本気と見せかけた冗談の笑い方(自慢じゃないが俺はあの人のあらゆる笑みを向けられる回数が多いので、大体どういう感情の笑みなのか本能的に察せる。マジで自慢にならん)のそれに、ホッと息を吐いて既に構えていた血刃を半ば解いた。「ほんとスンマセンて」言うと上司はスーツの砂埃を気にもせず豪快に瓦礫を蹴り下りてくる。目の前に下り立つと胡乱な仕草で顎をしゃくった。「
……
で、誤解じゃないならなんなんだ。敵と見間違えたか? でもお前先に倒してただろう」俺の傍らには燃えカスが積まれており、それにちらと視線をやってから上司の黒髪に目を戻しだからーそのーと益体のないことをぶつぶつ。
……
俺のせいじゃねーんですって。
「
……
おい、なんだ。どーした」
「もう俺とあいつ組ますのやめません?」
「は?」
「こーはいの。あいつっすよ。レオナルド」
「はあ」分からない、という顔つき。なぜ今その話を? そんなようなことを思っているだろう相手にはいはいわーってますよ分かりづらいことを言ってるって分かってます、と自覚のままやけくそに言い放った。「見間違えたのは敵じゃなくてあいつとです。大体うちの職場黒髪多すぎじゃないですかね。職務妨害に繋がる」
頭のいい上司はそれだけで全てを理解したようだった。
一拍の間ののち、大口を開けて爆笑し始めた。普段なら横にいる旦那の肩に掴まって堪える努力をするのだが、今は別場所にいるため盛大だ。腹を捩って笑い続け、ちょうどいい逃げようと踵を返した俺の肩をがしりと掴んだ。「
……
、待て待てお前そんなちょっと、面白すぎだろ」「ちょっとって感じに見えねぇんすけど放してください勘弁して」「ばかかお前、逃がすわけないだろ」こんな面白いの、と大層楽しげに言って引き戻された。俺は顰め面になる。完全に薮蛇だ。つついて出てきた蛇はにやりとしている。
「はは、うん、俺と少年を見間違えたんだろ? なるほどなあ、それで俺を危険から遠ざけようと吹っ飛ばしたわけだ。な、ザップ・レンフロくん」あまりの機嫌の良さに背筋の寒気がとまらない。ライブラのツートップはどうしてこうも悪気ない笑顔で人を怯えさすのだろう。
「スティーブンさんマジ勘弁してください俺は無実だ」
「誰も断罪してないだろう。むしろ表彰もんだね、あの度し難いクズのザップが
……
後輩を軸にいれて戦うようになって
……
俺はとても嬉しいよ」
「そんなん言われるくらいなら笑われた方がマシなんすけど!?」
「アッハッハッハッ!!」
「遠慮ねえなーモーこの人いやだわー!!」
ひいひい笑っている上司を張り倒すこともできず地団駄を踏み、だーっもー! と叫び声を上げる。「仕方ないでしょーが考えるより先に動いちまうんすよォ! 黒って目立つしィ!」
「っあー笑った。僕らからしたらお前の方がよっぽど目立つぜ。ま、考えるより先にってのは、お前が天才の証だな」
「そ
……
っそーでしょうとも
……
」
「けどもう少し加減しろ。あれが本当にレオだったら骨折じゃ済まない」
「上げて落としますよねあんたって
……
」大丈夫っすよあいつ丈夫だし、いつもあんくらいの守り方で上手い具合に守られてますもん(※【上手い具合】敵にぐちゃぐちゃに切り刻まれるのに対し、味方の防御行動によってとばっちりで怪我をする具合、という意)、言おうとしてハッとした。何も今のは俺に限っての話ではない。
「
……
んなこと言っていいんすか番頭。あんただってあいつ庇おうとして咄嗟に脚が出たことあったでしょ」
「あー
……
」
「脚で吹っ飛ばしたでしょ。あん時のあいつ腹すげえ色になってましたよ」
「
……
斬られたり刺されたり抉られたりするよりはいーだろ
……
」
誠に遺憾ながらこの上司は気づいているかどうか怪しいがあの後輩に対してちょっと甘いところがある。つまりこうやって申し訳なさそうに言い淀むのは珍しいということだ。ほかの野郎の構成員相手にはまずしない。言っている内容は俺と大して変わらないのだが。
「吹き飛んだあいつの顔見ました? 夜空バックにキラキラお目目見開いて。ほかのやつらに『スターフェイズに星にされたレオナルド』ってしばらく同情されてましたよ」
「なんだそれ。いや、すまんなー少年
……
」
今ここにいない一回りも下の部下に向かって遠い目をしている上司に、ま、あいつふてぶてしい返ししてましたけど、とは言わないでおく。『今までスティーブンさんに星にされたことある人います? いない? んじゃあ僕が一等星っすね』そんな自虐的ネタをドヤ顔で言っていいのか、自棄が入ってるな、とは思わなくはなかったけれども。
「大体クラウスだってあいつを体当たりで
……
あれに比べりゃ俺やお前はまだ可愛いもんだ、ウン」
まごまご言っている言葉を揶揄うより先に「そっすねー」と全面的に同意してしまう。旦那に突き飛ばされるか敵に斬られるか、これはほぼ同意義に等しいだろう。病院の個室、包帯に塗れたあいつの前で、巨躯を丸めて痛む胃を押さえていた姿をよく覚えている。これに関しても『むしろクラウスさんに突き飛ばされて生きてる俺凄くね
……
?』とおそらく姐さんあたりが聞いたらその順応性に悲しそうに笑っていよいよここに慣れてきたわねレオっち、と返すかもしれないことをへらりと宣っていた。
上司が上司なら、部下も部下だな。
ひどく納得した気分になって、ムカつく無条件反射とか条件反射とか何とかを全てそこに帰結させた。そうだ。そもそも黒髪に反応して体が動いたのも元を辿れば俺をあいつの護衛につけた上司組が悪い。あー良かった。だって俺守りたくて守ってるわけじゃねえもん。全部はこの人の思惑だ。
「やっぱこの人腹黒だ
……
」
「なんで急に罵られたんだ、おい」
脚で軽く蹴ってくる足癖の悪い上司に、やっぱ俺に対して雑すぎですって、と抗議した。
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