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呪術廻戦の世界に飛んだ異世界人と分かったので帰ろうと思います。(仮)3

五条夢。続くか続かないか分からない。
名前変換機能をテストで使ってみたかった題材。
※名前変換なしだとデフォ名(藤森沙奈)になります。

今日は硝子さんの誕生日だそうです。誕生日おめでとうございます!
なのに更新は五条夢っていう。きっかけ大事よね。
今回は前半夏油君、後半は五条君。で、一応携帯編(?)終わりです。


 
 次の日、いつも通り一人で高専へ登校しようと女子寮を出たところで、人影が見えた。
 鞄を背にかけて、壁にもたれかかって誰かを待っているような格好だ。
 サングラスから少し蒼い眼が見える。彼は誰かを待っているらしく、携帯をポチポチ何やら操作して暇つぶしをしているようだ。

「おはよう、五条君」
「ん、おはよ」

 私と顔を合わせるなり、携帯を閉じてポケットに入れる。

「今日は任務ないの?」
「昨日は徹夜してたから、今日一日オフ。補助監督め、こき使いやがって……

 ふぁあ、とあくびをしながら隣を歩く彼。ほぼ眠れていないのだろう。そういうことなら早退して部屋で休息した方がいいのではないか。

「オフなら休んだ方がいいんじゃない? 私が先生に言っておこうか?」

 私の怪我も激しい運動とかしなければ、普段の生活をする分には一人で大丈夫だ。それを言っても彼は聞く耳持たず、世話をしてくれる。
 たまには自分のために労ってほしいと思う。

「自己管理も大事だよ。ちゃんと休んだ方がいい」

 そう言って私は彼の手を取って男子寮に連れて行こうとするものの、パチンと何かがはじかれた。
 私は見開いて何度か手を閉じたり開いたりする。対する五条君は「あっ忘れてた」となんてことないように言った。
 無下限呪術――それが彼の持つ呪術。

「悪ぃ。徹夜でずっと呪霊とやり合ってたから気を張ってたわ」
「う、ううん。こっちこそごめん、驚いたよね……!」

 初めての最強が持つ呪術を味わって『すげー! これが生無下限!』と思う反面、よく同人誌にある『あ、自分に対して心許してないんだな……』っていう複雑な心境を味わっていた。

(ああ、信頼していた人から実は信頼されてないんだって知ったときの気持ちってこういう気持ちかー。ヒロインたちががっかりするのも分かるかも)

 いや、彼の状況はごもっともなのだ。彼は五条家の嫡男。近い将来は当主になる人だ。そんな人が他の呪術師や呪詛師が狙ってこないはずはない。そして普段から特級や一級レベルの呪霊を祓っているのだから気が抜けない。

「そ、それはともかく! 今は休めるときに休んだ方がいいよ。授業の内容は後でノート貸してあげるから」
「そうしたいとこだけどさ……

 ヤガセンが五月蠅いんだよな、とポリポリと後頭部をかく。しかし、以前会っていた時よりも疲れているのがよく分かる。

「勉強っていつでもできるよ。でも、次任務に行ったときに万が一! 万が一倒れることがあって『あー、やっぱり休んどきゃよかった』って後悔しながら死ぬのは嫌でしょ?!」
「はぁ?! この俺が負けると思ってんのか?」
「思ってないけど……私みたいなのに言われたくないと思うけどさ、倒れてほしくないんだよ。一言いえないけど!」

 言ってる本人が最近倒れることが多いので、本当に一言いえない。私の体調不良(?)は学校内だからどうとでもなる。けど、五条君たちは外でそういうことが起こるかもしれない。
 私たちはしばらく何も言えなかった。というより、五条君は悩んでいるようだった。
 いつも世話になっているので、今度は私が助けてあげたい。

……五条君は夜蛾先生に怒られるのが嫌なんだよね?」
「は? めんどくせーだけで、怖いわけじゃねぇからな!」
「なら、私が口実を作ればいい?」
「は?」

 早速使ってみるか、携帯で連絡。昨日一応やりとりのテストはしたので、大丈夫なはず。
 私はポケットからケ携帯を取り出して、夜蛾先生の番号に繋ぐ。
 横では「おい、沙奈!」と声を上げるけど、気にしない。
 夜蛾先生はすぐに電話に出てくれて、事情を説明する。あくまで体調が悪いから休ませるということで五条君の休みを取れるようになった。
 その代わり、私が五条君を見張れという条件付きで。

(五条君、貴方は普段どういう学校生活を送ってるんですか?)

 監視が必要ってしかも担任に言われるって相当だぞ。
 私は無意識に彼をじーっと遠い目で見つめていたらしく、さっきから何なんだよ、と声を荒げる。と同時に、咳き込んでいた。
 無下限、今だけ解いて、と言うと五条君は却下するものの咳がひどくなり、一時的に解除してくれる。
 額に手を添えれば、熱があった。

(そりゃ、高校生が徹夜を何回もやってると風邪くらい引くよ……

 私は無下限張っていいと言うと、彼はする。

「風邪なら硝子ちゃんに任せた方がいいかな」

 一応医者を目指すと彼女は言っていた。応急処置などは彼女の方が適任だろう。もう一度携帯を取り出して彼女に電話しようとするものの、五条君が携帯を持つ手を取られて出来なかった。

「いい」
「なら、夏油君に来てもらおうか」

 夜蛾先生は私が監視しろって言われたけど、女子が男子寮に行くわけにもいかないだろう。それよりも身近で見られる親友の方が安心できるのではないか。
 しかし、彼は首を横に振った。硝子ちゃんでも駄目、夏油君でも駄目――ってなると私しかいない? いや、夜蛾先生に……ってそういうわけにもいかないか。

沙奈が看病してくれるんでしょ? なら沙奈の部屋がいい」
……へ?」

 しかもヤガセンに指名されてるなら尚更、と彼は無下限を解いたのか私の手を握って女子寮へ入ろうとする。
 寮母さんと顔があってしまい、どうかしたのか尋ねられる。とっさに私が「五条君が風邪引いたみたいで、しばらく部屋で休ませてあげたいんです」と言うと、彼の表情を見て察したのか、「早く休ませてあげて」と許可をもらった。
 私の部屋に向かう前にこれから高専に登校するところだった硝子ちゃんとも会ってしまい、事情を説明する。すると、硝子ちゃんは部屋に戻って、こちらに来るなり袋を渡された。

「一応医務室にあるものを貸したげる。足りないものがあったら電話かメールで言って? 授業終わったら買ってくるから」
「ありがとう、硝子ちゃん」
「五条も、ちゃんと休めよー」
「わーってるよ」
「五条、ちょっと……
「は? 何だよ硝子――

 袋を受け取った私をよそに、二人は何か内緒話をしているようだ。聞いてはいけない大事なことなんだろうと思い、少し距離を取って彼らの用事が終わるのを待っていると、途端に五条君が叫んだ。思わず私はビクッと身体が震えた。

「なっ! ばっ……! そんなことするわけねーだろうが!」
「顔真っ赤じゃん。一応警告だよ」
「? 二人とも大丈夫?」

 何かヤバい任務でも入ったか、と振り返って尋ねるものの五条君はなぜか顔を赤くして「何でもねぇ!!」と言われてしまう。

「いいからさっさと行ってこい!」
「分かってるよ。じゃ、このクズの看病よろしくな」
「クズって言うな!」
「あーはいはい」

 ヒラヒラと硝子ちゃんは手を振って高専へ向かって行く。
 取り残された私たちは彼女を見送った後、私の部屋に入った。
 なんてことない殺風景な一部屋。
 ベッドに近づくと遠慮なく彼は寝転ぶ。もう体力が正直限界だったのだろう。
 私は硝子ちゃんからもらった水を彼に渡す。

(看病か。私の場合水飲んでたまに果物とか食べて安静するだけで治るんだよね。世間はお粥とか作ってあげるんだろうけど)

 風邪は体内にあるばい菌とかを免役が戦って体内にいる不要物を排除している。だから、普段の食事は最小限で十分であり、むしろいつも通りに摂取すると治りが遅れる。
 五条君は高校生で外の世界に出たという。それまでは五条家で育ってきたということ。五条家の常識が果たして一般家庭の常識に合うのだろうか。

「どうしたらいいんだろう」
「何が?」

 ベッドで寝転んで寝ていると思っていたが、ベッドから声が聞こえた。振り返れば首だけこちらを向けている。

「看病の仕方が分からない」
「は?」
「いや、分からないわけじゃないけど……ほら。一般家庭常識と名門とか貴族とかの常識と違うでしょ。あまり変な物食べられないだろうし」
「変なのって、何食べさせようと思ってんだ……?」
「うーん、私の常識はちょっと外れてるから。世間一般的な看病ってお粥作って食べさせたりしてるんでしょう? 私はそういうことをせずに治してきたから」

 まぁ私の場合は、風邪引いたときは自然と食べる気が起きなかったのが大きいのだけど、とある本を読んでみたら、病気になったときはお腹すいた時に栄養のある物を少し、水を摂取すればいいと書いてあった。その通りにやってみたら確かに治りが早かったのだ。それ以降そういうやり方で治してきた。
 これはあくまで私だけの治し方であり、他人にやらせるつもりはない。向き不向きもあるだろうから。

(でも、無難に一般常識な治療法でいいのかな……治るかは知らないけど)

 私のやり方は悪く言えば、ほぼ断食状態のようなものだ。これは無理強いはできない。

「朝ご飯は食べた?」
「一応」
「なら、薬飲むだけでもいいか」

 お菓子か何かあればいいのだけど、と部屋の中にある冷蔵庫を漁る。
 軽食を作って硝子ちゃんからもらった薬とコップに入れた水を用意して彼の前に差し出す。
 彼はだんだんしんどくなったのか、無言で軽く食べて薬を飲んだ。
 その間に私はタオルやら氷水など準備をする。

「あーそういえば、男性物の服もいるか……うーんでもなぁ」

 まだ泊まる予定があるなら着替えがいるのは分かる。あくまで昼間までの看病の――はず。着替えがいるなら男子寮から持ってくるしかないけど、夏油君は高専にいるはずだ。だからと言って五条君に取りに戻させるのも酷だ。

……なぁ」
「うん?」

 彼に呼ばれて、ベッドに近づく。彼は辛そうに私を見る。

(汗が……そうか、無下限解いてないからちゃんと休めないんだ)

 買い出しもしないといけないかと思ったけど、これは硝子ちゃんに買ってきてもらうようにするしかないか。弱っている彼を一人にするのはよくない。
 戦うことはできないけど、危険を知らせることはできるはず。私ができることは看病と安全の確保くらい。

「五条君、大丈夫だから」
「?」
「君が寝ている間は、私ここにいるから。無下限解いてゆっくり休んで。万が一危ないと思ったらすぐ起こすから」
「けど――
「大丈夫、周りは誰もいない。私しかいないよ。内緒にしてほしいならこのことは二人だけの内緒にしよう。誓って、寝てるところを襲うことはないから安心して」

 襲う理由ないからね、私――なんて心の中で呟きつつ、弱っている彼の頭を優しくなでてやる。最初ははじかれてたけど、気にせず無下限に触れていると、今度こそ解いて彼の頭に直接触れられた。

(うわー、髪ふわふわだなぁ)

 お手入れすごいんだろうな、なんて柄にもないことを思いつつも彼は自然と目を閉じていくのが分かる。
 寝息が聞こえてくると、そっとベッドから離れる。
 すやすやと眠る眠り王子は、まるでこの部屋は彼の物だというようだ。

「私たちの知らないところで、平和のために戦っているんだよね」

 私とはまったく違う立場の人間。一般人が知らない世界で、呪霊という危険なものから守ってくれる呪術師。その呪術師がまさかまだ未成年の男女もいるとは思っていなかっただろう。呪術師の名門生まれじゃなければ一般の学校に通って、友達作って、もしかしたら彼女でも作って楽しんでいただろう。

(私たち一般人は、世の中を何も知らなすぎる――

 そして呪霊に殺されても、一般人にはただの事故や事件に巻き込まれた、もしかしたらニュースにも出ずに誰にも知らされずにこの世を去る呪術師もいるのだろう。

(無知は罪とはよく言うよ……

 まだ小さい子どもに守られている何も知らない一般人。原因を作っているのは私たち一般人の負の感情。

(まぁ、夏油君が悩むのも無理はないよね)

 だから、彼の考え方は半分認められる。何も知らない一般人は極悪人だと批判するだろうけど。そして、そんな呪詛師を親友である彼が処罰する。

……誰もが幸せに生きられたらいいのに」

 それはいつも思っていることだった。それはこの世界に来てからも、元の世界で生まれてきた時からも思っている。
 何でみんなが笑って楽しんで平和で暮らせないんだろう。

「ああ、駄目だ。暗くなるな」

 私はパチパチと両手で頬を叩いた。仮にも子どもの前だ、子どもの前では笑顔でいないと。
 私はベッドから少し離れ、扉に近いところに座り、時々彼の様子を伺いつつも携帯を手にポチポチといじっていた。
 一つは硝子ちゃんと夏油君からメールでやりとり。もちろん五条君の様子を報告したり、買ってきてほしいものを伝えたり。あとは、夜蛾先生が言っていた連絡網を伝えられたり。
 そして、夜蛾先生から電話があり五条への依頼が連日重なっており、徹夜も続いていたということを知って風邪が治るまで休ませるということだった。任務も代わりに夏油君とフリーの呪術師さんに振り分けるという。
 私が五条君にやれることはない。彼が目を覚ますまで見張ることくらい。

「大丈夫、きっと治る」

 何もすることがないと不安が募る。ほかにやれることがあるんじゃないかと思うと心配になる。だけど、やることはない。あとは彼の体力次第だから。

「早く治るように」

 パタン、と携帯の上部を閉じてそっと呟いた。