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呪術廻戦の世界に飛んだ異世界人と分かったので帰ろうと思います。(仮)3

五条夢。続くか続かないか分からない。
名前変換機能をテストで使ってみたかった題材。
※名前変換なしだとデフォ名(藤森沙奈)になります。

今日は硝子さんの誕生日だそうです。誕生日おめでとうございます!
なのに更新は五条夢っていう。きっかけ大事よね。
今回は前半夏油君、後半は五条君。で、一応携帯編(?)終わりです。



 目を覚ますと、何かに揺られていた。
 何か気持ちいいなとぼんやり思っていると目の前には外の景色が揺れて見えているのだから、思わず目を見開いた。

「はっ!」
「やぁ、お目覚めかい?」
「げ、夏油君?!」

 おはよう、と彼は微笑みながら私を見下ろしている。
 驚くのも無理はない。目を覚ましたら、かすかに見たことがある高専と寮を繋ぐいつもの道。しかし、少し視線をあげれば、夏油君が至近距離にいたのだ。
 私はどうやら夏油君に抱っこされているようで、私は慌てる前に彼から「今はそのまま抱かれてて」と制止の言葉をかけられ、はい、と頷くしかなかった。

(いったい何がどうなって? 確か夜蛾先生と授業して、事情を話してたはず――

「一時間くらい前かな。私が任務から高専に戻ってきたときに夜蛾先生と会ってね。授業中倒れたらしくて、目を覚ますのを先生と待っていたんだけど、中々目を覚まさないから寮まで送ってくれって言われたんだ」

 急にこんなことになってびっくりしただろう? ごめんね、と謝る彼に私は慌ててこちらもお礼を言う。
 夏油傑――一般家庭の出にしては珍しい呪霊操術の術式を持ち、五条君と同じく近々特急呪術師に昇格するんじゃないかと噂するほどの実力者。
 私から見て夏油傑という人物は〝いまいちよく分からない人〟。呪術廻戦ではすでに彼は他界しており、ただ五条と同級生であり親友だったというだけ。前作では一応ラスボス的存在だったと聞く。というのも……前作の話はあまり覚えていないのが正直なところだったりする。
 とはいえ、彼が弱者を助けるという立派な志があったのに一般市民を虐殺し呪詛師になり、親友の五条とは仲違いした。その理由は私にとっては共感できる部分があり、夏油傑という人間が選んだ道は間違っていないと思う。
 彼はこの世界の絡繰に気づいてしまったんだろう。終わりのないゲーム・・を延々とやらされているといえばいいのか。本来なら夏油君のような優秀な子ほど気づかないものだろうが、幸か不幸か気づいてしまったのだ。その結果、彼の中の世界が幻想に過ぎなかったことを知り、呪術師が救われる道を作る道を選んだのだろう。
 だから、殺された一般人にとっては気の毒かもしれないが、将来の彼は彼なりの決断を持って選んだ人間なのだ。
 言い換えれば、たまに話題になるロボット社会。AI技術により人間の労働は楽になる利点とともに、ロボットやAIに自我に目覚めたら人間に攻撃してくるのでは? という議題は今日こんにちも絶えない。これで例えるなら、夏油君はロボットやAIで、自我に目覚めてしまった先が誰もが知っているあの〝夏油傑〟なのだろうと思う。そして人間が恐れる自我に目覚めるロボットやAIの姿ということだ。だから、彼が呪詛師になるのも無理はないと私は思うのだ。
 じーっと見つめていたせいか、夏油君がこちらに視線を落とす。

「私の顔に何か付いてるかい?」
「あっ、いえ! かっこいいなと思って!」

 って何馬鹿正直に答えてるんだ! いや、軽々とお姫様抱っこしてエスコートするのはかっこよすぎるだろう。こりゃあ人気出るわ。
 私が褒めると、少し照れくさくなったのか少し視線をそらしていた。
 ごめんね、私がこれまでの夏油傑という人物を振り返っていたなんて言えないので、そうやってごまかすために容姿を褒めておいたのだ。いや、でも実際かっこいいと思う。そんでもって優しいしね。女性の補助監督さんの噂も結構聞く。五条君派か夏油君派かで。

「はは。褒めても何も出ないよ。でも、ありがとう」
「あ、あの! もう立てるから下ろしてくれると……

 意識もそろそろ戻ってきたし、この間みたいに身体が倒れることはないと思う。
 そういうものの、夏油君は下ろす気はないらしい。

「そういう訳にもいかないよ。前、悟に送ってもらった時にふらついたって悟から聞いたよ。まだ本調子じゃないんじゃないか?」

 あの悟の拳骨をもろ食らったんだから完治するまで時間かかるだろうね、と哀れみの目線を向けられる。
 確かに完璧に治ったとは言えない。たまに笑ってるときとか痛むときがあるけど、別にどこかに出かけるときや勉強するときには至って支障はない。表情筋は鍛えないと駄目だろうなとは思うけど、それだけ。

「その代わりと言ってはなんだけど、そのケータイをしまってくれると有り難いんだけど」
「え? あれ?」

 そういえば、お腹辺りになんか乗ってるなと思っていたけど、なぜか先日買った携帯があった。

「医務室で寝かしてる時に、無意識だったのかな。ちょっと席を外してる間に大事そうにケータイを握ってたんだよ。ポケットか鞄に入れてあげようと思っても、君の手から離してくれなくてね。だから、ケータイを落とさないように君を抱えていたんだけど……
「ああ、ごめんなさい! すぐにしまうよ」

 私がそう言うと夏油君が歩みを止めてくれ、その間にポケットにケータイをしまった。なるほど、少しゆっくり過ぎるなと思ったけど携帯を落とさないように気を遣ってくれていたのだ。また、彼は私を抱えたままでさっきより少し歩みを早めて寮へ向かう。
 寮の入り口に着くと、夏油君が私を下ろしてくれた。
 女子寮からは人の気配を感じないので、硝子ちゃんはまだ任務から帰っていないのだろう。

「ありがとう、夏油君」
「どういたしまして。さっきのケータイが硝子と買いに行ったやつ?」
「そう」

 私が頷くと、携帯見せてと言われたので再びポケットから取り出した。

「もう少し可愛らしいケータイはなかったのかな」
「ううん、あったけど硝子ちゃんがピンときた物を選んだらいいって言われたから、選んだらこれだったの」
「えっ、そうなの? 意外だな」

 そう言って彼は私の携帯を開けていろいろ触っているらしい。

「やっぱり、変……かな?」

 女子はやはりかわいい色の方が好印象だろうか。ごめんね、中身は大人なんだ。
 大人になると人によるけどピンクとか中高生が好みそうな色とは疎遠になる傾向がある。だからと言って黒と紫はないでしょ、と多分野薔薇ちゃんあたりに突っ込まれそう。

「いや、いいと思うよ。明るい色が好きなんだろうなって勝手に思ってたから」
「明るい色も好きだよ。でも多分、運命だったんだと思う」

 そう言って何言ってんだろうと小さく笑う。
 私はこう見えても衝動的に動くことがある。理性を働いて止めたこともあるけど、経験上何だかんだ衝動的の方が後悔しない事の方が多かった。この色を見たときにきっと出会う運命だったのだ。この携帯が私を選んだのだ――なんて言い訳を脳内で言っておく。

「よっぽど気に入ったんだね」
「え?」
「硝子からも聞いたけど、そのケータイを見てる時、すごく幸せそうだよ」
「え?! そう、かな」
「うん。そっか、運命か……なんかロマンチックだね」

 なんかどんどん恥ずかしくなってきたぞ……
 直視しづらくなって、少しそらしてしまう。
 そりゃあ、確かに〝五条先生〟カラーだなって思って選んだのがあるけど、ほとんどは直感で選んだだけ。

……これじゃあケータイに嫉妬するだろうな」
「?」
「ああ、いや。何でもないよ」

 聞き返すと彼は慌てて何でもないと首を振った。

「じゃあ大事にしないとね。悟ほどあっちこっち走り回らないと思うけど、ケータイも機械だから気をつけてね」

 分かってると思うけど、と夏油君は言う。多分同級生の中で私が中々携帯を持たなかったので、携帯とは何かを知らないと思っているのだろう。だとしても、気にしてくれていることがちょっぴり嬉しい。

……悟にはあまり見せない方がいいかもしれない」
「え?」
「何となくだけどね」
「はぁ……
……硝子から聞いたけど、この色と水色のケータイと悩んでたっていうなら、ねえ)

 夏油君はどこか遠い目で携帯を見つめている。声をかければすぐに「何でもないよ」と言う。

「そうだ、硝子と夜蛾先生とはアドレス交換したんだよね? なら私も交換していいかい?」
「あ、うん。もちろん」

 頷くと、夏油君が私の携帯に直接入力して登録してくれる。ケータイを私の手に渡ると、今度は沙奈からメルアドで送ってきて、と言うのでメールに携帯番号を入力したものを彼宛に送る。
 無事に終わったらしく、彼からも私宛にメールが送ってきた。

……軽く見たんだけど、悟とはまだ交換してない?」
「え? うん。今日はまだ会ってないから」
「じゃあ、できるだけ早めに悟に教えてあげて。最後って知ったらまた文句言ってきそうだから」
「あー……

 ああいうタイプって自分が最後なのが嫌がる傾向がある。仲がいいけど、それと同時に喧嘩もしょっちゅうある。不思議なことにすぐにいつも通りに戻るくらいには親友なのがうらやましい。

(けど、私のアドレス帳登録ごときでヤキモキするかなぁ?)

 私はそういったことを体験したことがないので分からないのだけど、彼が言うのであれば五条君と交換終わるまではすでに夏油君と交換は済んでいることは黙っていた方がいいようだ。

「じゃあ私はこれで寮に戻るよ」
「うん、送ってくれてありがとう」
「また明日」

 夏油君はそう言って男子寮に向かって行くのを私は見届ける。
 夏油君と話をするのは久しぶりかもしれない。だからか、少しだけ嬉しかった。というのも、男子ではお世話をしてくれる五条君と話すことの方が圧倒的に多かったからだ。
 夏油君ともどこかで会話する場がほしいと思っていたから少しだけ幸運だった。
 私は携帯をポケットに入れて、女子寮の中に入る。

(五条君への報告は明日でもいいかな)

 夏油君と一緒に任務に向かうこともあるけど、今日は二人とも別々らしい。夏油君の方が先に戻ってきて、五条君はまだ任務中か男子寮に直帰してるのかもしれない。