ぷの
2024-10-13 14:29:13
8438文字
Public レイチュリ ※ベ限
 

レイチュリSSよせあつめ

P1 - ちょっとしたお掃除(2024/10/12)
P2 - 本日の三杯目(2024/10/12)
P3 - ありがとう金曜日!(2025/4/3)
P4 - なんだか爆発させたかった(2025/4/24)
P5 - 🍩≒?(2025/6/11)

【なんだか爆発させたかった】

「あの橋、落とそう」
「手持ちの爆薬では足りません」
「そこをなんとか。ね、教授」
「なぜ僕に振る」
 仲良く二人で考えてよ、とアベンチュリンは橋の設計図をスクリーンに投影した。
 レイシオとアベンチュリンとその部下一人という謎の三人編成で本隊から孤立しており、ただいま追手から絶賛逃走中である。ここまでの経緯は思い出したくない。悲しい手違いとちょっとしたへまと行きすぎた幸運が重なったのだ。大切なのは今である。
 追手を撒くためとはいえ、アベンチュリンとて無茶を言っていることは重々承知している。アベンチュリンの部下とレイシオは顔を見合わせた。それぞれ覆面と石膏頭で顔をまるごと覆っているので、まったく意思の疎通はできない……ように思われたが、二人の台詞はかち合った。
「無茶を言うな」
「無茶言わんでくださいよ」
 しかしアベンチュリンが食い下がるので、二人はしぶしぶ検討しはじめた。アベンチュリンは二人とも自分に甘いなあとほくほくしていたが、それは顔には出さなかった。
 論理的には可能。ただし、爆薬の設置に難がある。設置が必須の場所は、高所作業ができる装備でなければ無理だった。
「じゃあ、落とさなくていいや。大きな穴を開けて渡りにくくなればいい。それならできる?」
 アベンチュリンが妥協すると、レイシオが爆薬の成分と量を尋ね、部下は無言で現物を取り出した。
「無理だな」
「足りませんね」
「えーっ、君たち考えるのサボってないかい?」
「言いがかりをつけるな。君の工作員は現実的でまったく異論はない」
 口を尖らせて不満をあらわにしたら、レイシオに摘まんで塞がれた。上司の変顔を見た部下はたまらず吹き出した。
「追手が渡れなければいいなら、橋の出入口の地形を変える方が容易い。地面に穴を開けて、追手の車両が通るときに転ばせて落とす。足止めしたその車を吹き飛ばして、積まれている燃料で火力を底上げする」
「それだ!」
 さらさらと図を描きながら説明するレイシオに、アベンチュリンはパチンと指を鳴らした。
「二回目の爆発の規模が見積もれませんし、乗ってる人間がほぼ確実に死にますけど、いいんですか?」
「いいんじゃない」
「そこまで構う余裕はない」
「総監はともかく、教授もそういうとこあるんですね」

 結論から言うと、追手を防ぐことはできた。しかし、追手の車両に大量の爆薬が積まれていたため、とんでもない爆発が起こって三人も巻き込まれた。地面が大きく抉れて土砂崩れを起こし、支えを失った橋はあっけなく落ちた。
 吹っ飛ばされたアベンチュリンたちはクリフォトの加護に守られ、命は助かった。二人を死ぬ気で庇ったアベンチュリンだけが重傷だった。
「あはははは、足折れた! げほっ」
「肋骨も折れているかもしれない、黙っていろ」
「追手は足止めできましたし、迎えが来るまで待ちましょう。もう近くまで来てます」
 レイシオが手持ちの鎮痛剤をアベンチュリンに噛ませ、応急手当をしていく。
「痛みに集中しろ。寝るな」
「言ってることがひどいよ」
「それでいい。僕に怒っていろ」
 レイシオに腹を立ててるのはレイシオ自身じゃないか。自分の軽はずみな提案でアベンチュリンをこんな目に遭わせたことをひどく後悔している。
 僕は大丈夫。みんな生きてて良かった、ありがとう。
 口を開いたらまた咳き込んで、なんなら血を吐いたりしそうだったので、アベンチュリンは黙って大人しくしていた。
 この顔を曇らせたまま終わりたくない。
 死ねないと思う一番の理由が、やり残した諸々ではなくそんな我儘だったので、最高に気分が良かった。