🍺2章
感情とは、予想以上に溢れ出でるものだ。
ビールを注げば、その泡が予想以上に膨らんでいくように。
何度も何度も溢れさせて、いつしか溢れなくなる。
経験を積むことで、限界が分かるようになるのだ。ここまでなら溜め込んでも大丈夫、と。
御守「だから、遺体がなかったんだ!いや、2人分は安置されてたんだけど
……なんて言やいいんだ?」
遥保「そうだな。最初に亡くなった2人が見当たらなかったんだ。事件で亡くなった2人は見たんだが
……」
遥保は青ざめた顔で、御守は険しい表情でそう話す。遺体が置かれていたという場所を伝えると、少し休みたいからと部屋へと戻ってしまった。
早々見る機会のないものを見たのだから、気分が良いとは言えないのだろうことは明白だった。
涙流「あの人たち、とんでもない死に方をしていたでしょう?見るに堪えなかったのではないかしら」
空良「確かに、損傷が激しかったから、ってのはありそうだね。それでも、いないのは少し不思議だけど」
笛吹「
……もうこの話は止めにしないか。聞いていてあまり気分はよくならないだろうから」
セヴィリオ「そうだね、可愛い君たちの耳に入れるにはちょっと残酷な話だったかも。もっと楽しくなる話でもしよう」
セヴィリオはそうしてぱちりとウインクをした。沈んでいた空気も、彼の明るさで少しはすくい上げられたような気がする。
ただ、この話は一部の人にとっては考えさせられる部分があったようだ。現に、ヴェインは普段の快活さを失っている。
ヴェイン「ちょっと、どんな感じか見てくるね!ほら、温度とか匂いとか色々、大変なことになる前に見ておきたいなーって!」
彼女はぱっと笑うと、なんともないことかのように明るく言い放つ。その焦燥に気がついたのは、恐らくは1人だけ。
八神「俺も着いていこう。またいつ事件が起こるとも限らない、一人で行動するのは危険だ」
そんな名目で立ち上がる八神に、ヴェインはにこやかな頷きを以て返した。
ちょっとした騒動があった一方、神景衣は頭を抱えていた。
乃香ちゃんが新しいことを始めると言い出したのだ。それも、危ないことを。
乃香「景衣~!乃香、美味しいもの作るのよ!楽しみにしてて!」
獏獏「あっ、え、さっき内緒にするって言ってませんでしたか!?」
そうだったけ、と乃香は首をかしげている。
先ほど話したことなど、記憶のかなたに葬り去られているようだ。
景衣「ああ、乃香ちゃん
……本当にそんなことしなくていいのに。危ないのに
……」
古川「一人で作るわけでもないんだし、信じてみてもいいんじゃないか?」
古川は、美味しいものが食べられるならそれでいいのでは、と言いかけてやめた。
景衣が乃香を心配するのには、それなりの理由があるからだろうだ。家族愛に口を出す程野暮ではない。
どうか、この平和が長く続きますように。
そう願って、コップ一杯のお茶を飲み干した。
🍻✨
どうしても治せない癖があった。無意識に、無性に行いたくなってしまう悪癖が。
それでも特段悲観することでもない、大抵の人は笑って許してくれたし、その点自分は恵まれていた。
……いや、さっきのは嘘だ。怒られたくない子供が、うだうだと言い訳するような、そんな。
治す気なんて、きっとない。ずっと、裁かれなかったことに甘えてあぐらをかいている。
悪い奴は、野放しにしちゃいけないよ。どれだけ事情があったとて、捕まるようなことをする奴が”良い人”なわけがない。
分かってる。そんなこと。
だから、目の前のこの人の未来が心配だった。きっと後ろ指をさされるだろう、こんな場所に来なければ殺人なんて犯さなかっただろうに。
味方なんていなくなる。それだけの悪いことをしたんだから。
【古川佐吉】
🍺貴方は罪を飲み込めない!
🍻✨
性格の悪さは自覚していた。ただ、どうやら自分は取り繕うのが人よりも上手かったらしい。
大抵の人は、仮面を被れば自分にすっかり心を開いてくれた。
勿論、酒や人脈の力は使ったけれどそれだって実力のうちだ。
他人が跪いて踏み台になってくれるのであれば、それは間違いなく己の能力なのだから。
時々、キラリと煌めく表通りが羨ましくなる。
誰もかれも、力を持たぬものでさえ笑顔を浮かべる、そんな光景が。
まっとうに生きてこなかった自分には、手に入れられない未来だと思っていた。
だから誰かに奪われる前に手折った。それのどこが悪い。
許さないでいて欲しかった。自分のことを恨んで欲しかった。
そんな激情を以て思われたのであれば、俺はきっと幸せになれた。
【Severio=Corleone】
🍺貴方は幸せを飲み込めない!
🍺2章
シロ→古川佐吉様
クロ→Severio=Corleone様