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あいづき
2024-10-16 18:18:34
Public
TRPG(CoC)関連
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物換星移
プルガトリウムの夜 現行未通過❌️
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バッカスの悪戯
かちりと、手近のライターでその細い管の先に火を当て、咥えながら息を吸い込み先を赤く染める。呼吸と共に吐き出される紫煙の燻りは、今の視界には丁度いい。
今日は、雨が降っている。どんよりとした空模様だけならまだしも、厚い雲が太陽光を遮り、午後を回ったばかりだと言うのに視界は暗い。このまま瞳を閉じたくなるくらいには頭も重い。昨晩は少々飲み過ぎた自覚がある。二日酔いだけは意地でもしない肉体に感謝した事は少なくない。一日に一箱は当たり前に空にしているが、ここ数日、本数は増えている。理由は分かっているがどうする事も出来ないもので。夢の内容のコントロールが出来るのであれば、金を積んでもやって欲しいくらいだ。だからこそ。夢を見ないで済むくらいに深く深く眠りに落ちたくて、酒を浴びる。悪循環だ。未だにこんな事をする片鱗があるのだから、俺も大概何かのネジが外れて戻っていないのかもしれない。
(今更か
……
)
ぐしゃりと、然程吸えていない煙草を灰皿に押し付ける。もう一本と手を伸ばして火を点け、唇だけで咥えて書類に手を伸ばしたところで、横から白い手が現れてひょいと煙草を奪われる。
「も〜、みゆきちゃんタバコ吸いすぎじゃない?」
それをしたのは、近頃俺のツーマンセルの相手となった小鳥遊翡翠その人だ。そもそも、俺を名前で、しかも敬称に「ちゃん」を使用するのは身内以外では小鳥遊しか居ない。
「返せ。今がベストの本数なんだよ」
腕を伸ばして取り返そうとすれば、小鳥遊は何を思ったかそれを咥えて謎のドヤ顔をしている。
「お前吸い方知らねぇだろ。ガキは噎せるぞ」
「バカにしないでよ、何回か吸ったことあるし」
本当かよ、と思っていたら案の定無駄に勢い良く吸い込んで盛大に噎せている。そういう所がクソガキのままだと思う。そういう事をしないだけ蛇原のがマシかと思うが、どんぐりの背比べになりそうで止めた。どちらも地頭は悪くない筈なんだが、幼い部分がある。
未だに噎せている小鳥遊の手から煙草を取り返して、深く吸う。肺一杯に広がる有毒に侵されているのは誰なのか。
「はっ、お前にゃ似合わねえよ。ガキは副流煙で我慢しとけ」
そのまま、わざとらしく肺から有毒な煙を小鳥遊に吹き掛ける。噎せている所への追い打ちになるのだが、生意気な態度を取ったから少しくらい構わないだろう。小鳥遊が勢い良く吸い込んだことで随分と短くなった煙草はそのまま灰皿へ押し付ける。
「うわ! もう、サイアク!」
随分と噎せながら、小鳥遊は部屋を出て行く。途中誰か顔見知りに会ったのか文句を言う声らしきものが遠くから聞こえる。声がデカいなガキだから仕方ないかと思いながら今度こそ書類に手を伸ばす。
だが。それもまた妨害された。
「はい、逮捕」
そう言って、俺の手に手錠を掛ける小鳥遊の瞳が俺を映す。
その瞬間。嫌な記憶が蓋をずらしてどろりと這い出て来る。
最近の精神状態がそうさせているのか、小鳥遊の顔が、瞳の色が、重なる。
俺があの日、誤って殺してしまった韮澤理紫に。
夢が、襲ってくる。
どうして、俺があの日殺されなければいけなかったのか。
どうして、俺を殺して罪がなかったことになっているのか。
どうして、俺を殺しておいてまだ警察をしているのか。
そんな声が、脳内に響くのではなく鼓膜を通ってはっきり聞こえてくる気がする。
あり得ないことなのに。今俺がいるのはそことは異なる場所であって、韮澤は俺の部下にすらなっていない。ツーマンセルの相手であったこともない。桃下は刑事にすらなっていない。それなのに。記憶と言うのは厄介だ。俺はこれを全て受け止めていく覚悟を持ってあの日の選択をしたはずなのに。まだ、俺の中に墨のように広がる染みが存在している。自分は弱い人間なのだと、痛感する。
一度顔を下げて視界を手錠の嵌められた己の手首を映す。大きな溜息を吐く要領で深呼吸をしてから、平静を装って顔を上げる。まだ小鳥遊は、俺の内側を知らないから、誤魔化せる。
「おい、俺の手に手錠掛けて楽しいか?」
「楽しいよ? 今日一日これで生活する?」
「んな事するわけねぇだろ。とっとと外せ」
そう言えば、案外すんなりはーいと軽い返事をして手錠は外される。
「ったく
……
遊びで持ち出すな」
「え~? 俺に暴行罪したのはみゆきちゃんだよ」
「あ?」
そんなのあったか? と、首を傾げたが、記憶の引き出しを一つずつ探せば実例はあったような気がする。面倒なのでこういったお遊びは少々控えるべきかもしれない。褒められた行為でないのは事実だから。
軽くなった手首を摩りながら、まだ小鳥遊の瞳に宿る韮澤の幻覚を振り払うように書類を引っ掴んで目の前に差し出す。
「おら、遊んでないで仕事しろ」
「はーい」
もう一本煙草に手を伸ばそうとしたが、箱ごと掴んでスーツの内ポケットに無造作にしまう。火を点けるのは、一区切りついてからにしようと決めて。
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