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あいづき
2024-10-16 18:18:34
Public
TRPG(CoC)関連
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物換星移
プルガトリウムの夜 現行未通過❌️
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冬の香り
ずっと、暗く塗り潰された世界に沈んでいる感覚だった。
白銀に散る鮮血というのはこんなにも己の脳裏に焼き付いて離れて行かないのかと、自身の記憶を呪った。
何があっても大丈夫だと思っていた。
ずっと、覚悟を決めていた筈だった。
それなのに、このざまだと己に対する嘲笑と情けなさしか口から溢れてこない。傲りは敵だと、他でもない自分自身が思っていたのに。その傲りで、人の生命を絶った。
その瞬間、思った事がある。俺は望んで人殺しにはなれないんだと。
だが、それでいいとも思う。そうでなくては困る。俺が持っているのは警察手帳であって、掲げている精神は父親から引き継いだものがあって、自分の中の一本軸に肉付けをして進んで来たのだから。ただ、望んだ結果でなくても、現実は見なくてはいけない。向き合わなくてはいけない。その死を無駄にしたくないと思うのに、あいつは夢の中で、俺を責め続けて来る。そんな奴ではないと分かっているのに。俺の罪悪感が創り出した怪物は、俺の手の内を離れて想像以上に膨らんで飲み込もうとして来る。
今も気付けば目の前にある。虚構と現実が曖昧にふらついて、手を取り合って踊り続けている。
「
……
んちょ
……
はん、
…………
ゆきさ
……
」
眼球の奥で弾けた閃光の先。
僅かにクリアになった視界に、人が居る。
「もう、実之さん、聞こえてますか?」
「
…………
今聞こえた
……
」
焦点があった先に居たのは、桃下冬香だった。俺の、今のツーマンセルの相手。そして最も、信頼の置いている相手。こうして視界がクリアになれば、他の五感も徐々に戻って来る。鼻を掠めるのは嗅ぎ慣れたマルボロの香り。本当に、桃下冬香のようだ。
「また、どこか遠くに行ってましたよ」
「
……
良いだろ、別に」
腕を伸ばして、そのまろい頬に触れる。人のぬくもりが、確かにそこにある。きちんと、触覚も機能をしている。
「ここは
……
」
「実之さんの家ですよ」
だから、何をしても大丈夫なのだと、桃下の唇が動く。
何をもってして大丈夫だと言うのか判然としないが、なら良いのかと、俺は思考を放棄する。確かに掴んだ意識をもう一度、ふっと手放して。そのまま、腕を下ろして桃下の身体をゆっくりと引き寄せて己より幾分も小さな肩に顔を埋める。髪の毛から、首筋から、強く彼女の香りがする。冬の、冷たくも心地良い香り。
「
……
名前通りだな、お前の匂い」
「褒めてますか? それ」
「褒めてる
……
冷たい木枯らしの中で、焚き火をして暖を取る、部屋の中で狂い咲いてる桃の香り」
「たまに変な事言いますよね」
「黙ってろ」
細い腰に回した腕に僅かに力を込めて、距離を詰める。もう既にゼロ距離ではあるのに、木枯らしが通る隙間を埋めるようにその肌に、触れる。
「
……
このまま、寝る」
「おやすみなさい」
後頭部をゆるりと撫でる女の手つきは、母の柔さを孕んでいた。
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