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あいづき
2024-10-16 18:18:34
Public
TRPG(CoC)関連
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物換星移
プルガトリウムの夜 現行未通過❌️
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凍雨
「
……
いいの?」
じっとりと肌を濡らして行く雨の音が遠くになり、目の前の男の声だけが通る。
「
……
ほんとに、預けていいの」
今まで見た中で一番素直な表情がそこにある。置いていかれた幼い小鳥遊翡翠と言う子供が、縋るようにこちらに向かって手を伸ばして来ている感覚がある。実際は手なんて伸ばしていないけれど。それでも、その視線と震える声は掴みたくて仕方が無いと何より訴える。
子供の手を引くのは、大人の役割だ。否、大人の皮を被っただけの、子供同士かもしれない。
「ああ。責任持って預かってやる」
一つ静かに頷いて。少しだけ眉間のシワを緩める。
そうする必要があると思ったから。相手は子供だ。
俺だけが覚えているんだろう事は理解している。だからこそ、生かしておきたい。生かして置きたいという、俺のエゴだ。最低な自覚はある。けれど、俺はそれを選んだ。その覚悟を持っている。
誰よりも柔い声で、僅かに口角を上げて伝える。
「こっち来い」
そっちは、危ないから。
お前は、まだ戻れるから。
ヘリに乗っていた足が、しっかりとこちらを向く。
その顔は雨と涙でぐしゃぐしゃで、みっともないと形容されるべきものではあるのに、今はそんな事思わなかった。
「
……
あはは、最悪
……
見ず知らずの人が一番言って欲しい言葉くれるとか
……
ほんと、意味分かんない
……
」
「そんなもんだろ」
「どんなもんだよ
……
」
「言っただろ。赤の他人だから良いんだってな」
そんな事も忘れたか、このバカが。思わず口から出そうになって、止めた。ゆっくりとこちらに歩いて来た小鳥遊の腕を引いて、冷たい雨の中自分の肩にその頭を乗せて。少しだけ後頭部を撫でる。
「
……
あは、やめなよ、そう言うの
……
」
「そう言いながら抵抗しねぇのは誰だよ」
そう言うと少しだけ黙って、雨よりも少しばかり温かい感触が、スーツ越しに伝わってくる。存分に泣けばいい。泣けない方が膿が溜まって爆発して、感情の行き場がなくなってしまう事を俺は知っているから。暫くぐずぐずとしていた小鳥遊はゆっくりと顔を上げると、真っ赤に染まった目尻を携え俺に問い掛けた。
「名前、聞いてもいい?」
「
……
斑鳩実之だ」
みゆき、の音を聞いて小鳥遊の瞳がはつりと瞬く。
「みゆき?
……
あは、かわいい名前
……
」
「名前だけはな」
苦笑だけしているのは、恐らく肯定の意味もあるのだろうが、今のこいつはそれを口にしない。関係値も何も無い、赤の他人だからだ。
「でも、気まぐれでも嬉しかった。ありがと。みゆきちゃん」
──これからもごめんとか、ありがとうとか、ちゃんと言ってね。わかる人にだけ分かればいいなんて、俺はちっとも思わないよ。
ありがとうの言葉を受けて、こいつの根幹は何も変わっていないのだなと、ふとそんな至極当たり前のことを思って。くつくつと笑みが溢れそうになる。
「別に、礼なんか要らん」
「何かしてもらったらありがとうって言うのは
……
大事だから」
言わせてよ。そんな言葉が飲み込まれた気がするが、気のせいかもしれない。それはこちらの願望かもしれない。俺の知る小鳥遊は、もう少し生意気で、遠慮している筈なのにそれが取っ払えれば何でも言ってきそうな男だから。
「
……
じゃあね、バイバイみゆきちゃん」
「ああ」
遅刻すんなよ。
赤の他人が言うには、不釣り合いな言葉で。
下にゆっくりと降りて雑踏に紛れ込む小鳥遊の姿を見て、何となく明日は普通に来るだろうと思える。ふっと息を吐いて。俺も深夜と言うには煩い歌舞伎町の音に紛れ込む。
今日は、酒がなくても眠れるかもしれない。
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