【凶星を穿つ】

自陣MHパロ/Season.1
一気読み版




ここは観測所。上位ハンターと少しの下位ハンターの軽い打ち合わせが終わり、それぞれが位置につく頃。観測所内で自身の武器であるハンマーの最終点検を確認したカンジが、ふとここにヒロがいないことに気付いた。


「(ここにはおらんのか?)」


違う観測所に配属されたのだろうかと、なんとなく周囲を見回す。何人か見知った上位ハンターはおれど、そこにヒロの姿は無かった。誰かに聞こうかと、腰を上げた瞬間。


「ようハンターさん!!」

「うおっ!?」


背後から突然、何者かに声を投げられた。転びそうになりながらも何とか振り返れば、ハンターにしては装束の薄い男が立っている。大きな荷物を背負い一見ガラクタにしか見えないものを腰から下げたその姿は、カンジには馴染みのないものだ。


「おっと驚かせちまったか! そいつはわるかった!」

「あ、あんたは?」

「オレは観測所の手伝いで来た錬金術師さ! よろしくな!」


人懐こい笑みを浮かべ、錬金術師は握手を求めてくる。カンジはそれに応じ、二人は手を結んだ。そうすると男は心底嬉しそうにするものだから、カンジもつられて笑顔になる。


「オレは

「ああ、紹介は大丈夫! アンタの名前、タイショウだろ? オレはここいらのハンターに詳しいんだ!」


どうだと言わんばかりに、錬金術師はふんぞり返った。自慢気に腰に手をやりへへっと喜ぶ姿は、どこかヒロに似ている。その様子を何だかむず痒く思いさったカンジは、頬を掻きながら言った。


「オレ、そんなに有名ちゃうと思うけど」

「何を謙遜してんだ? G級昇格試験受けられる程のハンターなんて、何処にでも居るわけじゃねぇだろ?」

「でも、試験落ちたし

「あはは! なるほど、アンタ自分の実力を見誤ってるんだな! 心配しなくても、タイショウさんは十分に強えって! サクタも言ってたし!」

「! ヒーローを知っとんのか?」

「ああ! サクタは錬金術師の道探ってた頃があったみたいでな、よくオレんとこ顔出してたんだ!」

「ヒーローが


錬金術師は、ヒロとは随分錬金術について語ったことがあるんだと告げる。意外な接点だと、カンジは目を丸くした。彼が錬金術の道に通じていたのは聞いたことがあったが、そこまで深いものだとは知らなかったのである。その本人は今どこで何をしているのだろうと、カンジは彼に尋ねることにした。


「今ヒーローはどこに居とるんか知っとる?」

「ん? 聞いてないのか? サクタは増援のG級ハンター迎えに、東の方に行ってるらしいぜ」

「えっ、ヒーローが迎え?」

「なんでも、滅茶苦茶に腕は立つが滅茶苦茶に癖も強いG級ハンターが四人、派遣されるらしくてな。一度バルファルクと接触したサクタと打ち合わせしつつ、現場に向かうらしいんだ」

「増援……じゃあ、今出てる二人は下がるんか」

「そうじゃないか? ハンターの狩猟は基本、四人組でしか許されてないし」


狩猟時に組めるハンターチームの上限は、原則として四人までだ。それ以上の人数だと互いを邪魔してしまうし、何かの縁起があるらしい。五人以上で組んだ狩猟は失敗、及び成功しても損が多いとかなんとか。カンジは詳しく無いが、それがハンターの鉄則であることは知っていた。


《報告! 報告! バルファルクを補足したとG級ハンターから連絡有り! 繰り返す! バルファルクを補足したと

「!!」「おっ」


何となく前線の場所について問おうとした瞬間、観測所全体に届く放送が鳴る。次いで告げられたのは、発見地点の座標だった。ここから山を一つ超え、またしばらく歩いた先にある狩場である。


「ふーん、ここからは遠いな。ま、一応は観測情報だけまとめて


錬金術師が地図を取り出し、スラスラと何かを書き入れた。しかしペンはすぐに止まり、カンジの方を見つめる。先程の放送をきっかけに落ち着きのなくなった彼を眺め、思いつきをそのまま口にした。


「アンタ、行ってきたらどうだ?」

「えっ」

「気になるんだろ?」

「でも、配属されたのここやし

「他モンスターの報告無いし、近隣のやつは先に追い払ってるから大丈夫だって! ほらこれ、近場のキャンプ行きのモドリ玉!」

…………


半場押し付けるように渡された、キャンプ場に最短距離で移動できる貴重な道具。丸い緑の玉を見つめ、それでもカンジは迷っていた。今回の『オオアラシ』であるバルファルクは、果たして自分の力が及ぶだろうか。かつて逃げ出し今でも恐怖している、弱い自分は戦えるだろうか。
そんな不安を見透かしたように、錬金術師はカンジの肩を軽く叩いた。


「失ってから後悔するのは、損しかないぜ?」


ただの助言、ただの気休めの一言。それでも錬金術師の言葉は、カンジを突き動かすのには十分すぎた。下ろしていたハンマーを背負い、カンジは駆け出す。目指すは二人のいる狩場、きっと運命が動く場所。
錬金術師の男はカンジを見送って、満足気に笑っている。やがて遠くなった背中から視線をそらし、どうやって上の人々を誤魔化そうかと考え始めた。






「ミロクジ、またハンターに絡んでいたの?」

「いいだろ姉さん、興味深かったんだよ! サクタが気にかけてる程のハンターがさ!」