【凶星を穿つ】

自陣MHパロ/Season.1
一気読み版



「怪我はどうだ、ヒロ」

「おお、大丈夫だぞ。五体満足だし、装備も変えた。作戦には参加できる」


テントに入ったソウゲツが、ベッドで休んでいたヒロにそう問いかける。横たわっていたヒロはそちらを向いて、しかしそのままの体制で答えた。


「なら良かったが

「ソウゲツはどうだ。カンジと仲直り、ちゃんとできたか?」

この『オオアラシ』が終わってから、また話す」

「ん、無理はするなよ。命大事に、ってやつを忘れずにな」


小棚の上にあった空の瓶を、さりげなくソウゲツは回収する。まだ温かみを残すそれは、熱した回復薬が入っていたのだろうとソウゲツは推察できた。回復薬は常温よりも高温のほうが体内吸収が早く、より回復薬としての機能を果たせる。ヒロはこれを使い、自身の体調を整えたのだ。しかし、薬はその精神まで補強できない。


……オレは今から太刀の手入れをする。集中するから、長い話は聞き流すかもな」

……うん、そっか」


ヒロに背を向け、ソウゲツは太刀を取り出し調整を始めた。その気遣いにクスリと笑い、されど感謝しながらヒロは呟き始める。


「ジンオウガの縄張りは、あの辺りまでは及んでいない。なのにあの獣は興奮した状態で現れた。その時点でオレたちは撤退し、状況を伝えるべきだったんだろうな。
ジンオウガを追い詰めた頃、唐突にイヤな予感がした。とびきり最悪で気味の悪い感覚に、ジンオウガと近接していたオレは一旦距離を取って……そこに、あの赤い彗星が堕ちたんだ」


あの時、一瞬世界の声が消えキイィンという不快な音がヒロの脳を貫いた。それが爆音と衝撃による耳鳴りだと気付いた時には、既にバルファルクは戦闘を開始していた。いや、戦闘と言うのは間違っていた。それはあまりにも、いっそ美しいほどの一方的な蹂躙であった。


「ヤツの“墜落”で、近くに居た一人が蒸発した。ヤツの“咆哮”で、一人の腕が消し飛んだ。ヤツの“突進”で、一人の身体が破裂した。近場にいたハンターが支援に来たが、ヤツの“翼撃”で吹き飛ばされた」


つらつらと、現実にあったことを確かめるようにヒロは話している。それは懺悔で、反省で、どうしようもない事実だった。


「オレは息のあった二人を担いで、逃げるのがやっとだった。
……情けないこと、この上ない。ヒーローの名が泣くよ」


ギリ。強く歯を食いしばる気配に、ソウゲツは目蓋を閉ざす。ヒロは間違いなく強いが、同時に誰よりも人間らしい・・・・・男だ。目の前で失われた命を、救えなかったと悔やむ。それがどんなに無理な願いでも、叶えられない禁忌だとしても。彼は、そういう生き物だった。
全に手を伸ばし、個を抱える。その在り方はソウゲツにとってとても歪で、純粋な憧れの的だった。