お芋さん太郎
2024-04-02 20:42:38
13374文字
Public ONEPIECE
 

狩り大会

#ハートの海賊団オールキャラ #パラレル
※ずっと前にネットの海に流したやつ
※パラレル設定注意!特殊設定注意!
※ペンギンとシャチの技は捏造
※オリキャラクルー、モブクルーがしゃべる
※ちょっとガラ悪いハートの海賊団




海から人の背ほどもある目玉がのぞいた。
巨大な背びれが船の周りをグルグルと巡る。
背びれはやがて音もなく海に消え、少しばかりの静寂が場を支配した。

と、ひと呼吸おいて現れたのは、頭だけでポーラータングの倍もありそうな海王類だった。
ワニみたいに皮膚がゴツゴツしていて、いかにも硬くて強そうだ。
彼が大口を開けると、ゴツい牙がズラリと並んでいるのが見える。
大量の海水がその口の中で渦を巻き、海に落ちてたオキアミ海賊団のやつらが十何人か、まっすぐ胃袋におさまった。

一連の光景を見たペンギンが締まりなく「ワーオ」ともらす。
ローは鬼哭をかつぎ直しながら、そのアホ面に声をかけた。

「おいペンギン」
「なんです?」
「おれは船に戻るから、あとはしっかりやれ」
「エ! 一緒にやらねぇのかよキャプテ〜ン!」
「おまえらのせいで足場が無ェ」
「えー!」

あと10分もたないと告げられたボロボロの船は、海王類がおこした大波のおかげでもはや風前の灯だ。
カナヅチのローにとって、極めて最悪なコンディションなのである。
ペンギンからの盛大なブーイングはまるで無視して、ローが続けた。

「それにもともとおれは手を出すつもりもなかった。お前らがアホみてぇにはしゃいでバカやらかさねェか見てただけだ」
「慈悲もねェ!」
「海賊にンなもんあるか」

じゃあな、とひとこと言い残してローが消える。
これぞドライな海賊団だ。

ペンギンはつまらなそうにムスッと頬を膨らませ、眼前に広がる凶悪な顔面をにらみつけた。
愛用している一本槍の先に付いたカバーを外し、さっきまで甲板だった斜めの足場を駆け抜ける。
その走りにためらいなどひとつも無い。
ペンギンはそのままデカい顔の真正面、口の中めがけてジャンプした。

海王類は目の前に飛び出てきた人間に気がついた。
生臭い息をはき散らし、自ら食われようとする小さな獲物を今か今かと待ちわびる。
ところがいざ口に入るという寸前、唐突に口を閉じてしまった。

ペンギンは鼻先に着地し、ヌメッた藻で足を滑らす。

「え、うわ、嘘だろ」

海王類の興味が他に移ってしまったのだ。
その目線の先には群青の海でもっとも目立つ黄色い船、ポーラータング号が波間にぷかぷか浮いている。

「いや、そっちじゃねェって!」
「こっちだデカブツ!」

オキアミ海賊団の船に残った戦闘チームが、銃やら大砲やらを当てて海王類の気を引こうとする。
その間にポーラータングはジリジリと後退していった。
野生の動物の前でとつぜん逃げだすのは、愚か者のすることだ。

「おーい! おれが切りつける! 援護を頼む!」
「よしきた!」

シャチが海面から顔を出して戦闘チームに叫ぶ。
応えたメンバーは銃器を構え、狙いをさだめて機を待った。

シャチが海王類の周りを縦横無尽に泳ぐと、やつは今度はそちらに目をつけた。
シャチを追うように頭を動かすたびに海全体がぐわんと揺れる。
だんだん大きくなる波のしぶきに白のツナギがまぎれ、ついにシャチを見失った。

シャチが狙ったのは、まさにそのタイミングだ。
寄せた白波に合せて海から飛び出し、その勢いを利用して手持ちのサーベルで厚い皮膚を裂く。

喉元に一文字の切れ目が入り、海王類はうなり声をあげて痛みにもだえた。

しかし。

「浅かった!」

硬い皮膚の下には脂肪がたっぷりとのっている。
そのためシャチの斬撃は、肉そのものにほんの少し及ばなかった。

援護する戦闘チームのメンバーが間髪入れずに銃を撃つ。
先ほどまで弾丸は跳ね返されていたが、シャチのつけた傷口を狙うことでやっとダメージを与えられるようになった。

「ちくしょーあのデブ……いや美味そうではあるけどさ。しょうがねェな、もう一発……ん?」

再び海に潜ろうとしたシャチの目の前に、飛べない鳥が落ちてきた。

ペンギンである。
彼はずっと海王類の顔のあたりでバタバタピヨピヨしていた。
シャチたちが攻撃したことで海王類が大きく動き、ついに弾かれ落ちてしまったのだ。
みっともなく腹から着水したペンギンに、シャチはからかい調子で声をかける。

「おーいペンギン、何してんだよ」
「我らが偉大なる海と熱烈キッス」
「バッカで~!」
「うるせッ」

ペンギンはプンスコ怒りながら、シャチの背中によじ登る。
シャチの泳ぎの速さはハートでも随一だ。
仲間を乗せて泳ぐことはよくあるため、シャチも当りまえのように受け入れた。

「飛べねェ鳥ってのはずいぶんと不便なもんだな、ペンギン」
「いや、飛べるさ。お前がいればな」

シャチの軽口にペンギンが返す。
その声色は「さも当然」と言わんばかりで、一瞬呆けてしまったシャチがむず痒そうに、それでいて嬉しそうに笑った。

「だはッ! そうこなくっちゃ!」

シャチに身をあずけるペンギンはおんぶされるような体制をとり、できるだけ水の抵抗を減らす。
ふたりのスピードがグンと上がった。

海王類は喉の奥からグルグルうなりを上げ、ふたりを捕えようと四苦八苦。
広い海を自由に泳ぐ彼らに、目も体もついていけない。

「いくぜ、相棒」
「いつでも、相棒」

交わしたのはたったのひと言。
それを合図に、ふたりは海へと潜った。

ずいぶんと深いところから、一気に海面をめざす。
シャチの背中にいたペンギンは、いつの間にか彼の肩まで移動していた。
しゃがみこむような姿勢をとり、加速するにつれて重くなる水圧にジッと耐える。
十分な助走をつけて、やがて明るい水面に到達し。

「ハートのマリンショー開幕だ!」

どちらともなく叫びながら、輝くブルーを飛び出した。

シャチはペンギンを肩に乗せたまま大ジャンプ。
その速度が落ちないうちにペンギンの靴底に手をやり、力いっぱい押し上げる。

「ぶっ飛びやがれ! 『鯱矛(シャチホコ)ブースター』!」

ペンギンもシャチの押し上げにタイミングを合わせ、彼の手の上でさらにジャンプする。
シャチの泳ぎの速度と腕力、ペンギンの脚力が合わさることで、弾丸よりも速く砲弾よりも重い一矢となった。

軌道は一直線に。
目標は海王類の喉元の傷。

ペンギンが槍の先を頭上にかまえる。
戦闘チームが斬撃と弾丸をお見舞いしたその場所から、ほんの少し血が吹き出すのが見え。

「『豪速(ファスト)ペンギン ストライク』!」

狙いは寸分違わない。
槍先は傷口にブッ刺さり、みごと肉に到達。
海王類は鼓膜が破れるほどの大きな悲鳴をひとつあげた。

しかし野生の動物はしぶとい。
血走った眼がギロリと動いて、海に落ちゆくペンギンをとらえた。

「あ、ヤベ」

海王類がヒレを持ち上げる。
デカくて重たい影がペンギンの視界を覆った。
空中じゃあどうしたって避けることができない。

直撃を覚悟し、歯を食いしばる。

起きる大波。
その中にペンギンがまぎれていき。

「ぶはッ! っぶねェ~~~!」

彼は元気に海から顔を出した。
海王類の最後の一撃は、ペンギンに届かなかったのだ。

すぐそばの海に浮いているのは、力なく崩れ泡をふきながら白目をむいた海王類。
たったの『ひと刺し』でこれであるから恐ろしい。
ペンギンはぶるりと背すじを震わせた。

「ペンギン!」
「おう、シャチ!」

シャチがのんきに泳ぎ寄り、ふたりで軽くハイタッチを交わす。
いまや完全に沈んだオキアミ海賊団の船からも、戦闘チームのクルーたちが泳いで来るのが見えた。

シャチが「いや~、ハハ……」と苦い笑いを浮かべてしみじみ呟く。

「今日も絶好調だな、ウニの毒」

ペンギンの槍にはウニ特製の毒が仕込まれていた。
対海王類用に用意されたもので、どんなに大型でもあっという間に仕留められる。
この毒の素晴らしいところは、加熱によって無毒化できることだ。
その有効性と安全性は医者であるローでさえも太鼓判を押すほどである。

ウニの毒のおかげで狩りは格段に楽になった。
しかしそのぶん、調子に乗ってつまみ食いするやつが出てくるのが困りもので。
ペンギンはゴクリと喉を鳴らすシャチにジロリと目を向け、ピシャリと言い放つ。

「食うのは火ィ通してからだからな」
「わかってるって…………いやでもちょっとだけなら」
「良いわけないだろ!」

穏やかになった海に、ペンギンがシャチの頭を叩く音がパスンと響いた。