お芋さん太郎
2024-04-02 20:42:38
13374文字
Public ONEPIECE
 

狩り大会

#ハートの海賊団オールキャラ #パラレル
※ずっと前にネットの海に流したやつ
※パラレル設定注意!特殊設定注意!
※ペンギンとシャチの技は捏造
※オリキャラクルー、モブクルーがしゃべる
※ちょっとガラ悪いハートの海賊団




援護チームは自分たちの仕事を終え、オキアミ海賊団の沈みゆくさまをノンビリと眺めていた。
仕事といっても、シャンブルズで入れ替えてもいいものを甲板に出しておくことや、戦利品の運搬準備などの簡単なものだ。
新人や戦闘が専門ではないクルーが割り当てられる役割である。

敵船のやつらがゴミクズのように海に落っこちるたびに、ポーラータングの甲板では歓声があがり、賭け金が飛び交う。
賭け事は海賊のマナーのようなものだから、よほどのトラブルがない限りはローも目をこぼすのだ。

ときおり海から敵船クルーが舞い上がり、汚い悲鳴が響きわたる。
シャチのしわざだ。
水中を引き回したり、海面に叩きつけたり。
普通の人間にとって恐怖しかないその行為は、彼にとって定番の遊びなのだ。
その激しさに覚えのあるクルーたちは、「げェ」と顔を歪ませた。

ジャンバールはその光景を見ながら、たしかに新人の出る幕ではないなと思った。
船上や海中での戦いはもとより、彼らのチームごとに統率がとれた動きはまるで軍隊だ。
効率的な仕事運びが、少人数・短時間での制圧を可能にしている。
これには船長経験のあるジャンバールも舌を巻かざるをえない。

感心して唸りをあげていると、先輩クルーのゴンドウがツンツンと袖をつついた。
ジャンバールからすればだいたいの人間はずいぶんと小さく、ゴンドウも例にもれない。
だからジャンバールは、彼に合わせて少しだけ頭を下げた。

「おれもさ、入団してひと月は援護すらさせてもらえなかったんだ。だから落ち込むなよ、ジャンバール」

そのうちいいことあるって、と。
彼はニコニコ笑って遠慮なしにジャンバールの背中をバシバシと叩いた。
その気遣いはジャンバールにとって少しズレたものだったが、底知れなく暖かい。

「ああ、励むとしよう」
「マ、お前が励んだとしても戦闘に出るのはおれが先だろうけどね。なんたっておれのが先輩だからな、1ヶ月と18日も!」
……そうだな」

ずいぶんと年若いゴンドウの謎の自信に苦笑していると、援護チームリーダーのクリオネから声がかかった。

「おーい! 手ェ空いてんのか? コックの様子を見てきてくれよ」
「クリオネさん! おれです! おれ行ってきます!」
「頼むぜゴンドウ。あ、ジャンバールはここにいろよ。今日は見てるのが仕事なんだろ?」

バタバタと船内に駆け出すゴンドウを見送りながら、クリオネが「お前は何も賭けねーの」とジャンバールに問いかける。
ジャンバールは興味なさげに肩をすくめた。

「キャプテンの手腕に感心していたところだ」
「わかるか。すげェんだ、あの人」

ハートの海賊団のクルーは船長のローをずいぶんと慕っている。
そのファンのようなノリに、ジャンバールは入団当初はけっこう戸惑った。
いまの海賊はこんな感じなのかと海を離れた年月を改めて実感したし、じつは今でも少しついていけていない。

だからこそ、ジャンバールはなにか成さねばと焦っていたのだ。
確固たる居場所がほしかった。

「さっきはああ言ってたけど、キャプテンはお前のこともかなり信頼してると思うぜ。じゃなかったらその『図鑑』は渡さない」
「これか……

ジャンバールは手に持ったひとつの冊子を見つめた。
何度も何度もめくった跡があり、そうとう読み込まれているようすだ。
表紙にはポップな字体で『海のいきもの図鑑』と書いてあるが、これをローだけは頑なに『カルテ』と呼ぶ。

パラパラと適当にめくると、ペンギンやシャチなど仲間の名前が載っているページが目にとまる。
欄外には大量の書き込みがされており、付箋までついているのだから、それも当然だ。
メモには人間である彼らの性格や気質、生活指導の記録までもが丁寧に記されている。

ジャンバールは大きな指でそのひとつひとつをそっとなぞった。
これは船長の戦いの軌跡であると、心で理解できた。

「あれ見たらお前もわかると思うけど、おれらってけっこう特異な体質でさ」

クリオネが困ったように眉を下げながら、海で楽しげに人間を引きずりまわすシャチを指さした。

「だいたいみんな海賊やる前は生きるのに苦労してた。売られたり、捨てられたり、悪いことに利用されたり、家族に監禁されたり……うっかり間違えて親兄弟を死なせてしまったやつもいる」

ジャンバールが息を飲んだ。
波の音がやけに遠くに聞こえる。
冷たい汗が一筋、背中のまんなかをツっとなぜた。
身が潰れるほど重たい思い出は、誰にだってあるものだ。

「ずっとバケモノだって言われて、モンスターだってののしられて生きてきたんだ。でも、キャプテンだけは違った」

ふたりして沈みかけた船に目を移す。
人生で一番つらかった時期にはこんな未来があるだなんて思ってなかった。
きっとお互いが、この船に乗る誰もがそうなのだろう。

「あの人だけは、こんなおれらを人間として扱ってくれた。おれたちはあの人に救われたんだ」

クリオネが力強く言った。
ジャンバールが「いい船だな」とポツリと呟くと、「だろ?」と彼が誇らしげに返した。

賭けに勤しむクルーたちがワッと歓声を上げる。
どうやら相手の船長がぶっ飛んだらしい。
単眼鏡をかわりばんこに回し見て、どこだどこだと騒ぎ出す。

「クリオネさん、コックも準備は万端だって」
「狩りの様子はどうだ?」

ゴンドウがコックを連れて顔を出したちょうどそのとき。
ウニ率いる略奪チームの3人が、ゴミと引き換えに甲板に現れた。

「ウニ! イルカ! クラゲ!」
「うっす、ただいま」
「シケてやんの、あいつら宝なんてほとんど積んでねー!」
「食糧買い込んだばっかりだね、あれは。酒とスパイスと野菜は大量大量」
「いいねえスパイス、おれにゃ何よりの宝だ」

コックが目を輝かせ、すかさず反応した。
そのかたわら、宝を期待していた援護チームの面々は膝から崩れ落ちる。

「こづかい期待してたのによォ、これは整備費にまわるパターンか」
「オーノー! さっきの賭けで全部使っちまったのに!」
「へー、武器はけっこういいのあるじゃねぇか。この銃なんて最新モデルだぜ」

さながら天国と地獄だ。
そんな好き勝手しはじめる連中に、クリオネが順繰りにゲンコツを落としていく。

「待て待て物色は後にして船内に運べ! まだ狩りはこれからなんだ! 邪魔になる!」
「ん? これから?」

敵は全滅、船は沈む寸前で略奪も済んだとなれば、狩りはもう終わりでは?
そう思ったジャンバールが不思議そうに首をかしげると、単眼鏡をのぞいていたクルーが大きく手を振りあげて叫んだ。

「かかったぞ! 大物だー!」

それを合図に、海面が大きく持ち上がった。
ジャンバールは目の前の光景にあんぐりと大きな口を開けたまま、かぶった波に盛大にむせることになる。