スモロ|今日のまとめ

SNSに投稿していた小ネタまとめ

【11月】


おや、と思ったのは毛先に触れた時だった。潮風に吹かれ続けて傷んでいた毛先が、とても綺麗になっている。あれだけあった枝毛が随分と少ない。
「スモーカーさん、シャンプーを変えました?」
スモーカーさんが、私が働く美容室を利用するようになって2年ほど経つ。この街に彼が住まうようになり、2年経ったということだ。
自ら新世界入りを志願したこの海兵さんは、この街にある支部に在籍することが決まってすぐ、ここへ髪を切りに来た。立て髪のように広がった白髪を「犬のままじゃいられなくてな」と言い、見栄えを良くしてくれと言われた。とても緊張したが、仕上がりを見て「また頼む」と言われて以来、私は彼の専属美容師である。
メラニン色素のない真っ白な髪色はとても珍しく、切るものとしてもとても気に入っていた。しかし、彼は海の男。そして無頓着である。ヘアケアなどということはせず、その毛先が枝分かれしていて、とてももったいないと思っていた。なんど提案してみても、気が向いたらの一点張り。これは気が向くことなんてないのだろう、とできる限り来店した時に勝手にケアしていたのだ。
それが、である。失礼にならない程度に毛束を待ち、まじまじと見てしまう。
……シャンプー変えましたか?」
つい尋ねると、鏡越しに目が合った男は何のことか分からない、と言った表情をした後、眉間の皺を増やした。なにか覚えがあるのだろう。
「髪質、よくなってますよ」と追い討ちをかけると、「あいつのか……」と言った。
「知り合いが置き忘れていったものを使っているからかもしれない」
「かなりいいやつだと思います。あれだけダメージがあったのに、すごいつやつや」
どこのシャンプーなのだろう。職業柄気になってしまい、教えてもらえないだろうかと聞いてみる。が、男は相変わらず渋面していた。……いや、これはデフォルトだ。
……そいつも、昔馴染みから使えと言われているだけだと言っていた気がするから、分かってないだろうよ」
「ありゃ〜そうなんですね」
残念に思いつつ、気持ちを切り替えて仕事に臨む。
それにしてもシャンプーを置いていくなんて、もしかして恋人なのだろうか。……これが事実だとしたら、この街にとっては結構なスクープじゃないだろうか。
そんなことを考えながら、ハサミを伸びた毛先に差し込んだ。


あ、やばい。そう思って目を瞑った。しかし、予想していた衝撃が顔面にやって来ない。代わりに、聞こえてきたのはけたたましい断末魔。
恐る恐る目を開けると、先ほどまで自分に迫り寄っていた海賊の姿はなかった。悲痛な声が聞こえるのは、自分の足元から。見ると、その四肢がバラバラにされ、なのに声を発して蠢いている。血の気が引いた。だが、もっと青ざめているのは、その海賊の方だ。
「しししタヒの外科医?!」
それは生きていた。生きているとは到底思えない状況のまま。そして、その転がった首は、視線をバーカウンターへと向けている。そこに座っている二人の男のうち一人がこちらに身体を向けていた。組んでいた脚を解き、トントンと軽い音を立ててこちらへと近づいてくる。
海賊がこぼした異名を、知っている。彼もまた海賊で、とても有名だ。
「ったく騒ぎやがって。静かに飲ませろ」
そう言ってバラバラの肉体を爪先で蹴りやると、その手をくるりとひっくり返した。途端、そこにいた海賊の姿は消え、代わりに小石や木の葉がパラパラ落ちる。
何が起きたのかさっぱり分からないでいたが、目の前の海賊の視線が自分に向いた。ビクリと身体がつい震える。
「ロー」
と、バーカウンターに座っていたもう一人が、目の前の海賊に声をかけた。自分に刺さっていた視線はそちらへと逸れて、ホッと一息。
「なんだよ。殺してはいないだろ」
「そういう問題じゃねぇ」
「おまえだって動こうとしてたくせに。……いい曲だった。あんな三流には分からねぇだろうがな。続きを頼む」
二言ほど遠くとやり取りをした男は、またこちらを向くとそう言って、自分の座っていたテーブルに数枚の札を置く。
そこでやっと、自分は助けられたのだと分かった。あまつさえチップまで貰ってしまったのだ。
「あ、りがとうございます」
どうにか声を絞り出すと、男はニヒルに口角を持ち上げ、元の場所へと戻った。先ほど声をかけてきた男に、小声で何やら言っている。
居住まいを正して、ずっと抱えていたギターを構え直した。
そして、先ほど海賊にいちゃもんをつけられて止まってしまった曲の続きを演奏する。
さっきの一悶着のせいで、客はカウンターの二人だけ。普段なら味気ないところだが、今日はちょうどいい。お礼代わりに、弦を鳴らし始める。二人の様子が愉しげに見えたのは、気のせいじゃないといい。


鎖国が解かれ、約一年。この国にも少しずつ、舶来の旅人がやってくるようになった。着物以外の召物を着た老若男女が町の中を歩く光景を、誰が想像しただろう。少なくとも、わっしのような老齢の人間たちは想像したことも、夢物語として描いたことすらなかったことだ。
それもこれも、外の世界を旅してきたあのうら若き将軍だからこそ実現したのだろう。今、ワノ国にはこれまでにない類の活気がある。
わっしが再開させることができたおでんの屋台にも時折、舶来の客が立ち寄るようになった。外では見かけない料理らしく、とても珍しがられる。
今日の客もそうなのかと思った。冷風がビュウと吹き、揺れる暖簾を潜って「邪魔するぞ」と言った、男二人組。一人は見たこともないくらい真っ白な大男。もう一人は手に墨を入れた細っこい若造。若造の方はなんだか慣れた雰囲気で、木椅子に腰をかけた。それに倣って、大男も隣に座る。「随分と冷えるな。熱燗をもらえるか」
着いて早々若造は酒を頼んだ。その頼み方にわっしは感心した。こいつはどうやら、この国の食文化を知っている。
対する大男は何も知らぬのか、わっしが日本酒を入れた徳利を鍋にかける様子をじっと見ていた。
あとはてきとうに盛り合わせてくれと言うので、たまごや大根などを器によそい、二人の前においてやる。
温まった徳利と猪口を二つも渡してやれば、若造がトクトクと温まった酒を注いだ。
………うまい」
大男は言った。それを聞いた若造は「だろう?」と自信満々に答えた。そう褒められちゃ、わっしだって気分がいい。
二人は多くを語らうわけでもなく、ただじっくり酒とおでんを味わって、時折わっしにゃ分からねぇ外の国々の話をしていた。無言の間さえ、気分が悪くなることはなかった。
わっしはそれを聞き流しながら、いとまを潰すための本に視線を落とした。夜はまだまだ長いだろう。


(魔法パロの続き)
魔法学校時代のペットの話になり、聞けばヒキガエル飼ってたというローに対して、「それは本当にペットとして飼っていたのか」と疑念を抱くスモーカーさん
スモーカーさんは姉が飼っていたねこが勝手についてきて、卒業まで一緒だったらしいです
(このパロのスモーカーさんにはドラゴソ学者の姉がいます)


みかんを食べる時、栄養があることはわかっているけど白い筋をついつい取ってしまうタイプのローと、Sサイズを一口で食べることができるがさすがに人前でやらないスモーカーさん


ローに「ポッキーの日って知ってるか」と聞かれてしまえば、なんと答えても詰みになるスモーカーさん
知ってる→そうか、やるか
知らない(大嘘)→そうか、じゃあやるぞ
別にスモーカーさんのリアクションを見たいだけなので、やってもやらなくてもどっちでもいいロー


心臓がいたい。口の中が変な味でいっぱいになってる。
けれど、ぼくは走ることをやめちゃいけない。よたよたとしてしまう足をどうにかどうにか前に踏み出すしかない。急いで、速く、
つい後ろを見てしまいそうになる。でも、そんなことしてたら追いつかれてしまうかもしれない。
追いつかれたら─想像したら、足が震える気がして、考えることをやめた。
急いで、速く、細い道を右に、左にと、ぐんぐん走る。
がむしゃらな状態でも、住んでいる町の道くらいはわかっている。とにかく、あの場所からはなれるように走る。走る。走るしか、ない。
自分の息の音だけが聞こえる。喉が苦しい。は、と息を吐いた。
どんどん狭い場所へと進み行く。ここまで来てしまえば、地元の人間しか知らない道だ。だから、もう、大丈夫ーそう思った。
でも、気づくと目の前にはあるはずのない壁があって、ぶつかった。不思議なことに痛みはなかった。なんだと思って顔を上げる。心臓の音が、聞こえなくなった。
「あ、ぁ……
目の前にいたのは、ぼくが先ほどポケットからコインを盗った男だった。太いタバコからもくもくと白い煙を吐き出して、ぼくを見下ろしている。
もうダメだ。そう思った。盗みを犯したぼくは、捕まる。でもその方がいいのかもしれない。この町では、弱いものは生きていくことがむずかしいのだ。
だったら、ここで捕まった方が幾分かマシに思えた。何もかもを、あきらめたのだ。
……手を出すんだ」
男は低い声で言った。縄をかけられるのかと思い、ゆっくりと両手を上げる。その前に、盗ったコインを返そうと、手のひらを開けて、それを差し出した。改めて見ると、この島では見たことのない絵が彫られた、珍しいコインだった。
赤みがかった瞳がそれとぼくを交互に睨む。
……これは人からの預かりもんでな。おまえにやるわけにはいかないんだ」
それを受け取り、懐に入れたかと思うと、代わりに何かがぼくの手の上に乗せられる──ベリー札だ。それが数枚。ギョッとして、思わず地に落としてしまった。
「えっ、あ」
それを拾い上げた男は再び、ぼくの手のひらの上に乗せ、グッと握らせてくる。
「当座の足しにはなるだろう。……本当に生き方を変えたいと思うなら、船に乗せてもいいが」
どうする? 地に膝をつけ、問いかけてくる眼差しの真っ直ぐさに、自分の弱さがぜんぶ見られているような気がした。
けれどこわくはなかった。彼だけはぼくの存在を認めてくれたように感じた。
──結局、ぼくはついていかなかった。今のぼくでは、ついていっても、なにも変わらないと思ったから。
ただ、いつかあの男の人と同じコートが着れるようにがんばろうと、どうにか、生きている。