澄ひろえ
2020-09-27 20:27:35
13281文字
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身が凍えるは凍土と闇

ククゼシ2人旅ツイート小説「雪国編」を加筆、修正した物です。 ログ見逃した人どうぞ。最終ページは後書きです。


 意識を取り戻したグラッドさんの慟哭が辺りに響く。メディさんの山小屋は完全に焼け落ち、白い煙を上げている。
 ・・・私達はまた、守れなかった。賢者の血を引く人を。
 私は歯を食いしばって込み上げてくるものを押さえようとする。と、今度は頭にポンとククールの手の重みを感じた。
「ククール・・・」
 私はククールを見上げる。
「・・・無理するな」
 ククールは一言だけ、ぽつりと呟く。
 でも、その一言で抑えていたものが溢れ出した。私は俯き、両手で顔を覆って嗚咽を上げた。
 ククールは何も言わなかった。
 でも、私が泣き止むまで、その手は頭から離れなかった。

 それから、私達はメディさんのお弔いをした。
 男性陣でヌーク草の栽培されている洞穴の中にお墓を作っている間に私はオークニスの町で花を買ってきた。
 ククールがロザリオを取り出して、墓前で祈りの言葉を述べながら十字を切る。
 ・・・こういう光景を見ると彼は本当に聖職者なんだと思う。
 お弔いを終えて、私達はこれからの事を話し合った。
 母の敵を討ってくれとグラッドさんは懇願する。それに対しては目的を果たすためにも叶えてあげたいのだけれど。
 魔犬は空を飛べる。地上で追い詰めても飛んで逃げて行ってしまうし、それこそ空に留まられるとこちらからは手も足も出ない。
 ダメ・・・打開策が思いつかない。皆を見ると彼らも難しい顔をして考え込んでいる。
「そうだ、レティスだ」
 グラッドさんがいきなり声を上げた。
「相手が空を飛ぶなら、こちらも空を飛ぶもの・・・神鳥レティスの力を借りれば良いんだ!」
 レティス・・・?どこかで聞いた事があるような気が。
「そういや、闇の遺跡でなんか見たり聞いたりしたな」
 ククールがぽつりと漏らす。そういえば、あそこには大きなレリーフがあったわね。
「この遺跡はレティスについて書かれている石碑があるんだ。レティスならきっと力を貸してくれる」
「んじゃ、調べてみるか」
 私達は洞穴の奥へ向かい、奥に並べられている石碑を調べてみた。
 そこに刻まれていたのは七賢者の一人によって記された神鳥レティスの伝承。
 世界の危機を告げるレティスの声に七人の賢者が立ち上がり、共に戦った。
 そして、七賢者はレティスの知恵を得て一振りの杖を生み出し、血の呪縛によって暗黒神の魂を捕らえた。
 それから、この世界には神鳥の島というのがあって、そこは断崖に囲まれ、人を寄せ付けない隔絶された台地であるという事。
 そこへたどり着く為には正しき道の記されし海図を手に入れる必要がある事。
 光の道が正しき道へ導くであろう・・・と。
 でも、海図って言われてもそれはどこにあるのかしら?
「ここで得られる情報はこんなもんか。後は・・・」
 ククールはメディさんから貰った鍵を取り出す。
「文字通りこいつが鍵かもな」
 文字通り?私は少し考える。
「えっと・・・この鍵でしか開かない扉の向こうに求める物があるかもって事?」
「ああ、そういう事」
 私の言葉にククールは頷いた。
 なら前に進むしかない。メディさんの犠牲を無駄にしないためにも。
「ここにいても、もうやれる事はない。行くぞ」
「ええ・・・そうね」
 私達はグラッドさんに別れの言葉を告げて遺跡を出る。
 と、遺跡から出たところでククールが突然話し始めた。
「母親の死を悼むのは当然のことだが、オークニスにはあいつの帰りを待つ者も多いんだ。そう言う連中のためにもグラッドにはさっさと立ち直ってもらいたいもんだな」
「それは、そうかもしれないけど・・・」
「・・・自分を必要としてくれる者がいるってのは俺に言わせりゃ羨ましい話だからな」
「ククール・・・」
 ・・・そう、そうなのね。
 貴方は必要とされたかったのね。その為に努力して、認めて貰いたかったのね。でも、あそこでは必要とされなかった。
 それなら・・・大丈夫よ。
「ほら、行こうぜ」
 ククールはさっさと歩き出した。私も急いで着いていく。
 これで、杖の封印を解くために犠牲になった賢者は6人。
 残る賢者はあと1人。
 絶対に守らなくては。