澄ひろえ
2020-09-27 20:27:35
13281文字
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身が凍えるは凍土と闇

ククゼシ2人旅ツイート小説「雪国編」を加筆、修正した物です。 ログ見逃した人どうぞ。最終ページは後書きです。


「・・・っ!」
 俺は目を開いた。どうやらベッドに寝かされているらしい。そろそろと両手両足の感覚を確かめてみる。よし、ちゃんとあるな。
 起き上がろうとして体に痛みが走った。
 取りあえずベホマをかけて辺りを見回した。どう見ても見知らぬ家の中。
「ここは・・・?確か俺は雪崩に飲まれて・・・」
 他の皆は?無事なのか?
 ベホマで体が回復したのを確認し、ベッドから起き上がって俺は部屋を出た。どうやら地下室だったらしい。上に上がる階段が見えた。
 階段を上り、扉を開くと大きな部屋に出た。辺りを見回す。
「ククール!気がついたのね」
 席に着いていたゼシカが声を上げた。流石に普段の服に着替えていた。トロデ王はコップで何か飲んでいる。
 とりあえず皆無事か。俺は息をつく。
 後はこの家の主であろう老婆と大きな犬がこちらを見た。

 老婆はメディと名乗り、ヌーク草という薬草の入った薬湯を俺に渡し、事の顛末を話してくれた。
 どうやら、雪崩に飲み込まれた後、トロデ王達がこの家に助けを求め、そこの犬(バフという名前らしい)が俺を掘り起こしてくれたそうだ。
 辛口の薬湯を飲んでいると冷え切っていた体が段々温かくなってきた。
 それにしても、なんでこんな何も無さそうな山奥に婆さん一人で暮らしてるんだか。
 ゼシカも同じ疑問を抱いたらしい。メディに問うと、家の裏手に古い遺跡があり、先祖代々守っているのだという。
「しかし、その役目もわしの代で終わる事になるでしょうな。後を継ぐ物もおりませんでのう」
 メディはそう言って寂しそうに笑った。
 ダメ元で黒犬のことを尋ねてみたが、やはり知らないようだ。その代わり北にあるオークニスという町を教えて貰った。
 窓から外を見る。もうすっかり日は落ちて辺り一面吹雪いていた。
「今夜はここに泊まって明日出発するのがよろしかろうて」
 メディの言葉に甘え、俺たちはこの家で一夜を明かすことにした。
 トロデ王も流石にこの吹雪の状態の中、外で休む事は諦めたらしい。幸い家の中にはベッドが4つあった。
「ねぇククール」
 ベッドに腰掛けながらゼシカが言った。
「ん?どうした?」
「体・・・大丈夫?」
「ああ、ベホマも効いたし。問題ないぜ」
「ならいいけど・・・」
 ゼシカは眉を潜める。
「何だよ。何か気になるのか?」
 なんか昨日と立場逆転してるな。これ。
「・・・ククールをバフが掘り起こしてくれた時ね。ククールすっかり冷たくなっちゃってて・・・もうダメかもって・・・」
 その時の状況を思い出したのだろう。ゼシカの顔が歪む。
 まぁ、自分でもよく助かったなとは思うけどな・・・。
「あー・・・心配掛けたな」
「私だけじゃないわよ。王様も姫様も・・・」
「分かってるって。でも、本当に大丈夫だから、な?」
 明るい口調で諭すと、ゼシカも少し表情を緩めた。
 その時ふっとある疑問が脳裏を過ぎる。
「そう言えば、俺どうやって体温取り戻したんだ?」
「バフがずっとお腹に敷いてたわよ」
 ・・・聞かなきゃ良かった。

 次の日。吹雪はすっかり止んでいた。
 オークニスの町へ向かおうとする俺たちをメディが引き留める。
「お願いがあるんじゃが、町に着いたらグラッドという男にこれを渡して欲しいのですじゃ」
 そう言って、小さな袋を俺達に差し出した。
 まぁ一宿一飯の恩返しにしては容易いことだ。俺は袋を受け取った。
 驚いた事に、昨晩飲んだヌーク草の薬湯のお陰で寒さを感じない。
 そして、もっと驚いた事が、
「ゼシカ、大丈夫なのか?」
「うん、平気。体ポカポカしてるわよ」
 魔法のビキニ1枚でも大丈夫ってすげぇなヌーク草。
「それじゃ、行くか」
 俺たちはキラーパンサーを呼び出して、北へ向かって駆けた。