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澄ひろえ
2020-09-27 20:27:35
13281文字
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身が凍えるは凍土と闇
ククゼシ2人旅ツイート小説「雪国編」を加筆、修正した物です。 ログ見逃した人どうぞ。最終ページは後書きです。
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俺達は一旦婆さんの家を出た。
・・・どこか、隠れられそうな場所は・・・辺りを見回す。
「ククール、あそこ!」
ゼシカが指さす方を見ると、家の裏手にあるぽっかりと開いた洞穴。
中に入ると仄かに暖かい。洞穴はいくつもの小部屋に分かれていて、ヌーク草の栽培が行われてる場所もあった。
「・・・!」
背後に殺気を感じて振り返った。狼達が唸り声を上げながらにじり寄ってくる。
まずいな、こんな狭い所でジゴスパークなんか撃った日にゃ洞穴自体が持たないぞ・・・。
レイピアを振って牽制するが、狼達の数は増して次々洞穴の中に入ってくる。完全に追い込まれてしまった。
と、その時。
「早く、こっちにきなされ!」
奥から婆さんの声が聞こえた。無事だったか!
「ゼシカ、走れ!」
バギを唱え、一瞬狼達を足止めして、俺達は奥へ向かって走った。体勢を立て直した狼達も追ってくる。
前方の小部屋にに婆さんと犬の姿を捕らえた。そのまま、小部屋に飛び込んだ。
少し遅れて狼達が入ってきて、婆さん目掛けて飛びかかる。だが、婆さんは余裕の表情で立ったまま。
次の瞬間、地面に描かれていた結界が発動し、狼達を弾き飛ばした。
・・・何だ、この結界。ハワードのおっさんのより凄くないか?
やがて、狼達は諦めたのか小部屋を引き返して去って行った。
「おや、あんた方は・・・確か雪崩に巻き込まれた方達じゃな。運が悪いお方達じゃ。なにもこんな時に」
「違うんです。実は・・・」
ゼシカが事情を説明している間、俺は小部屋を見回した。
いくつもの石碑が小部屋を囲むように立っている。石碑には沢山の字と不思議な紋様が彫られていた。
ここが代々守り継がれている遺跡なのか?
「なぁ婆さん。この遺跡って・・・一体」
俺がそこまで言いかけた時、外で大きな爆音が聞こえた。
「い、今の爆発って・・・何?」
ゼシカの目線が外の方に向けられる。
おそらく、敵の仕掛けた罠・・・。俺達をおびき出そうとしている。
ここにいれば、身の安全は保障されるが・・・事態が好転することはない・・・か。
どうする?ここに留まるか、あえて敵の誘いに乗るか。
外から感じるのは、あの邪悪な気配。もう、何度も感じた、奴の気配・・・。
と、メディの顔が険しくなる。敵の正体に気付いたのか?
「この邪悪な気配の正体・・・確かめにいくしかありませんな」
メディがバフを伴って歩き出した。
さすがに婆さん1人(と犬1頭)だけ行かせるわけにはいかない。俺達も一緒に洞穴の外に出る。
・・・婆さんの家が炎を上げていた。さっきの爆音はこれか。
そして、そこにいたのは。
「グラッドさん!」
ゼシカが声を上げる。
沢山の狼を従え、杖を咥えた黒犬に踏みつけられているグラッドだった。
―
また貴様達か。どこまでもしつこい奴らよ
―
狼に襲われた時の声が黒犬から発せられた。
・・・ああ、まただわ。
その声に私はまた意識が遠ざかりそうになる。
と、その時。不意に左肩に重みを感じた。
・・・ククールの手だ。
革手袋越しに伝わる温もりが、私の意識を繋ぎ止めた。
肩に置かれた手にそっと触れて、ククールを見る。黒犬を見据えていた瞳がちらりとこっちを見た。
「もう、大丈夫だから」
小声で告げる。ククールは小さく頷き、肩から手を離した。再び黒犬を見据える。
うん、大丈夫。もうあんな声に恐れはしない。
私は、瞳に力を込めて、黒犬を睨み付けた。
だからといって、事態が好転したわけじゃない。来るなと叫ぶグラッドさんを気絶させて、黒犬はメディさんにこちらに来るように言う。
「いいだろう。今そっちにいってやるよ」
私は驚いてメディさんを見た。と、メディさんは懐から何かを取り出すと、ククールに手渡した。
何かしら・・・鍵?
ククールは愕然とした表情でメディさんを見ている。
「後は、頼みましたぞ・・・」
そう言って、メディさんはバフと共に黒犬へ向かって歩き出す。
―
よくぞ来た。賢者の末裔よ。今その命刈り取ってくれよう
―
黒犬が飛びかからんとした、まさにその時。
メディさんは小さな袋を黒犬の顔へと投げつけた。袋の口が開き、そこから大量の真っ赤な粉が黒犬の顔に降り掛かった。
黒犬が絶叫し、後じさる。
「どうじゃね。ヌーク草の粉はよくきくだろう」
あんな辛いものが目や鼻に入ったら・・・想像するだけで痛い。
黒犬が悶えている隙にバフがグラッドさんをこっちに引っ張ってくる。
人質を取り戻した。これならいけるかも!
ククールもレイピアの柄に手を掛ける。
だけど、その時、
―
おのれ、おのれ、おのれーーっ
―
黒犬が雄叫びを上げた。ビリビリと空気が震え、その衝撃でククールも私も一瞬動きが止まる。
・・・その一瞬が命運を分けてしまったの。
黒犬はその一瞬でメディさんに詰め寄り、咥えていた杖でメディさんの体を貫き、引き抜いた・・・。
声も出なかった。
メディさんの体がどさりと崩れ落ちるのを呆然とみていた。
黒犬が咥えている杖が怪しく光り始める。血の封印が一つ解けてしまった。
―
ふざけたマネを!これでは目も鼻も利かぬ・・・だが、残る封印はあと一つ!最後の賢者を葬れば我が魂はこの忌まわしき杖より抜け出せる!
―
杖から閃光が発せられ、俺達は思わず目を閉じた。
光が収まり目を開いたら、そこにいたのはもう黒犬ではなく。
「こいつは・・・」
ドルマゲスが変容した時のような血のような赤い羽根の翼が生え、そして、鋭く鞭のようにしなる尻尾をバシンと鳴らす。
・・・魔犬レオパルドがそこにいた。
魔犬はその赤い翼をばさりと拡げた。羽ばたかせ、飛び上がり立ち去ろうとする。
「待てっ!今日こそ、この因縁に決着をつけてやる!」
俺は魔犬に向かって叫ぶ。だが、その声に意を返す事は無く。残った狼達が俺達に襲いかかってきた。
「くっ・・・邪魔だ!」
俺はジゴスパークを放つ。襲いかかってきた狼達を消し飛ばす。残った何匹かもゼシカが片付けた。
魔犬を睨み付ける。魔犬は悠然と羽ばたきながら東へ向かって飛び去っていった。
バフが婆さんの体をゆらしながら切なげに鳴き声を上げるのが胸に刺さった・・・。
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