澄ひろえ
2020-09-27 20:27:35
13281文字
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身が凍えるは凍土と闇

ククゼシ2人旅ツイート小説「雪国編」を加筆、修正した物です。 ログ見逃した人どうぞ。最終ページは後書きです。


「何か見えてきたな」
 先頭を走るククールが指さす方を見る。すると氷で出来たアーチが目に入った。
 アーチを潜ると目の前には平屋の建物。私達はキラーパンサーから下りて近付く。
「この建物何かしら?」
「多分、この建物自体が町なんだと思うぜ」
 そう言って、ククールは建物の扉を開けた。トロデ王と姫様はヌーク草の効果で寒くないから外で待ってると言った。
 町の案内図を見ると、この町は円を描くように建物が建っていて、外に出ることなく色々な施設を利用出来るようになってるみたい。
「大雪が降って外に出られない時でも生活出来るようになってるのか。ほら、先にお使い済ませようぜ」
 ククールの言葉に頷く。でも、グラッドさんどこに居るのかしら?

 2人で町を歩く。と、見えてきたのは教会の看板。そこでは1人の青年が熱心に祈っていた。
 だけど、その祈りの内容がダダ漏れで・・・。
「ああっシスター!お祈りする姿も美しいっ!美しすぎるぅっ!・・・神よ。あなたにお仕えする方に恋してしまった私はどうすればよいのですかっ!?」
 こ、この人、ここのシスターに恋しちゃったの!?・・・でもあれ?シスターって恋愛したり、結婚とか出来るのかしら・・・?
 私が考え込んでいる間に、悪戯っ子のようにニヤリと笑ったククールが青年の背後にそっと忍び寄って・・・ちょっと、何考えてるのよ。
「ならばコクるが良い。ダメでもともと。当たって砕けろ。神は行動する者に祝福を与えよう」
 ビックリしちゃったわよ・・・でも、そんな事言うもんだから青年はすっかり信じ込んじゃって・・・。
「・・・今の声はもしかして神様!?分かりましたっ!必ずや仰る通りに実行します!」
 私は頭痛がするのを覚えながらククールのマントを引っ張って青年の側を離れた。
「ちょっと、いいの?あんなこと言っちゃって・・・」
 私は小声でククールに問う。
「いいんだって。あの手のタイプは背中を押してやらないと何にも出来ねぇんだから」
 それは、そうかも・・・じゃなくって!
「私が言ってるのはそういう事じゃ無いの!仮にも聖堂騎士なんてやってるアンタが神の名を騙ったりしていいのかってことよ!」
 そう言ったら、ククールは大げさに両手を拡げて、
「それこそノープロブレムさ!俺の神様はそんな細かい事にこだわりゃしないからね」
 あっけらかんと言う。
 ・・・頭痛が酷くなってきたような気がするわ。
「アンタ・・・いつか絶対に天罰が下るわよ・・・」

 ククールと教会で一悶着したけど、町中を探してもグラッドさんは見つからなかった。
 町の人曰く、この町から北西にある薬草園の洞窟にいるんじゃないかってことだった。
 それを聞いたとき、ククールがあからさまに渋い表情になったのよね。
 アンタ、お得意のポーカーフェイスはどうしたのよ。
「すぐ終わると思ったんだがなぁ」
「そんな事言ってないで、その洞窟へ行くわよ」
「街の人に袋託けてさぁ、それでいいんじゃねぇ?」
「あのね、メディさんとの約束なんだから私達がやらないと!」
「へーへーわかりましたよー」
 肩を竦めながらククールが言う。
 ・・・顔に「こいつに何言っても無駄か」って書いてあるわよ。

 町を出るまで、ゼシカは無言だった。
(憮然とした顔してんなぁ・・・)
 どうも、さっきの俺とのやりとりがお気に召さなかったらしい。
 そうは言っても、ここに来た本来の目的は黒犬の捜索だろ?
 とは言え、グラッドが洞窟から本来なら帰っている時間なのに戻らないってのは気にはなるか。
 町を出て、キラーパンサーを呼び出そうとした時、俺はふと思い立った。
 そういや、道具屋で珍しい物見つけたから買ったんだった。
「何それ、ラパンさんから貰った鈴の色違い・・・?」
 俺が取り出した白銀の鈴をゼシカがのぞき込む。
「まぁ、見てろって」
 そう言って、俺は鈴を鳴らした。
「わぁっ」
 現れたのは、白銀の毛色をしたキラーパンサー。
 なるほど、雪国仕様って訳か。これなら雪景色に紛れて行動できる。
「きれい・・・かわいいっ」
 ゼシカが表情を緩めた。どうやらお眼鏡に適ったらしい。かわいいはどうかと思うが・・・。
 まぁ、機嫌も直ったようだし良しとするか。
 キラーパンサーに乗って北西へ。しばらく駆けると洞窟の入口が見えてきた。
 中に入るとヌーク草の効果をもってしてもひんやりとした空気を体に感じる。
「こんなところが薬草を作るのに適した環境なのかしら?」
 ゼシカは首を傾げる。
「逆にこういう雪国だとこんな所でしか作れないのかもな。外じゃ雪で枯れちまうだろ」
 奥へ進む。所々空間が開けたところがあり、沢山の薬草が栽培されていた。
 つい先ほどまで手入れされた跡があり、グラッドは間違い無くこの洞窟に来ていることが分かる。
 ・・・なのに、グラッド自身の姿は見えない。
「まだ、奥に居るのかしら・・・?」
 不安げな表情でゼシカが言った。
 ゼシカが不安になるのも分かる。ヌーク草の効果があっても、ここではかなりの寒さを感じてしまう。
 こんな所に長時間居たら確実に凍えてしまうだろう。雪国育ちのグラッドがそれを分かってないはずがない。
 嫌な予感がする・・・。
「早いところ見つけねぇと」
 俺たちは更に奥へと足を速めた。
 どうやら最下層まで来てしまったようだ。ここまで来ると、薬草の栽培場所も見当たらない。
 ・・・ほんとにこんな所まで来てるのか?
「ククール、あそこ見て!」
 ゼシカの指さす方を見ると、巨大な氷柱が何本も地面に刺さって道を塞いでいる。
 その氷柱の隙間から男が倒れてるのが見えた。

 よりによってあんな所で倒れてなくてもいいだろうに・・・。俺たちは氷柱を迂回して何とか男の元に辿り着く。
 ・・・この男がグラッドなのか?
「おい、大丈夫か?」
 俺は男に声をかける。男の顔は真っ青を通り越して真っ白。体はガタガタと震えている。
 男がぼんやりとした目で俺を見た。
 ・・・意識はあるようだが、これは、まずい。
「どうなの?ククール」
 ゼシカが覗き込んできた。
「低体温症だな。かなりひどい」
「ベホマで治せないの?」
「難しいな。回復呪文は傷を治すのには特化してるが、こういった状態は・・・」
「そんな、折角メディさんとの約束果たせると思ったのに・・・」
 メディから託かった袋を握り締めてゼシカが言った。

 と、メディという言葉に男は反応した。
「君たち・・・その袋の中身を私にくれないか?」
 ゼシカは袋を開ける。そこに入っていたのは・・・ヌーク草?
「やはり、ヌーク草か。本来なら生では食べないんだが・・・」
 え、おい、まさか。
 ゼシカの手渡したヌーク草を男は一気に口に入れ、噛み砕き飲み込んだ。
 すると、青白かった男の顔にみるみる赤みが差して・・・おい、真っ赤になって震えだしたぞ。
「くぁらぁ~!」
 男は叫んで体を起こした。・・・今叫んだ拍子に口から火を吐いたように見えたんだが?
 しかし、低体温症まで治すのか。ヌーク草すげぇ。
 男は額の汗を拭って改めて俺たちを見た。
 男はやはりグラッドだった。
「薬草の手入れをしていたら、いきなり狼の大群に襲われてね・・・ここまで逃げてきたら氷柱が落ちてきたんだ」
 そこで力尽きて動けなくなったらしい。
 ・・・まったく、俺でも同情するくらい運の悪い男だな。
「それより、君達はこの袋をわざわざ届けに来てくれたのかい?」
 グラッドの言葉に俺は頷く。
「そうか、それはすまない。ところで君達。オークニスに戻るなら私も一緒に連れて行ってくれないか?」
 グラッドの頼みに異議は無い。俺達もこんな寒い所からはさっさと脱出したい。
「ん、ああ、構わないぜ。ゼシカ、リレミト頼む」
「ええ、わかったわ」
 ゼシカは頷くと、リレミトを唱えた。