澄ひろえ
2020-09-27 20:27:35
13281文字
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身が凍えるは凍土と闇

ククゼシ2人旅ツイート小説「雪国編」を加筆、修正した物です。 ログ見逃した人どうぞ。最終ページは後書きです。


 リレミトで洞窟を出た私達はトロデ王達と合流した。
「じゃあルーラでちゃちゃっとこんな寒いとこからおさらばしますかね」
 そう言ってルーラの詠唱を始めたククールだったけど、いきなり、詠唱を止めた。
 どうしたの?と聞こうとして、その理由が分かった。
 ・・・強い殺気。それも沢山。
 殺気の正体は狼の群れだった。十数体はいる。唸り声を上げながら私達ににじり寄ってくる。
「一気にいくぞ」
 そう言ってククールはレイピアを抜いた。私は頷くと呪文の詠唱を始める。
 狼達が一斉に襲いかかってきた。・・・今だわ。
「イオナズン!」
「ジゴスパーク!」
 激しい爆撃と雷光が狼達を直撃し、跡形もなく消し飛ばした。
 でも、安心したのも束の間、
「うわぁっ!助けてくれ!」
 直撃を免れた狼達がグラッドさんに襲いかかっていた。
 呪文を撃ったらグラッドさんにも当たってしまう。・・・こうなったら武器で何とか。
 そう思った、まさにその時。
待て
 不意に聞こえた不気味な声が狼達と私の体を凍り付かせた。
 この、声は・・・確か。私は自分の体から血の気が引くのを感じた。
その者ではない。確かに賢者の血を感じるが、違う
 不気味な声はさらに言葉を続ける。
本物は別にいるはず・・・真の賢者を探すのだ
 賢者の血を探す者・・・不気味な声の主に思い当たった瞬間、私の意識は遠くへと飛んだ。

 あの時、ドルマゲスを倒した時。仇にに対する憎しみと、仇を討っても兄は戻ってこない空しさ。
 そんな気持ちで杖を握った私の頭に流れ込んできた、声。
 七賢者の血を絶てと私に命じた。誰と問うと、その声は答えた。
「我が名は暗黒神ラプソーン。さぁ我が手足となり、我が願いを成就させよ」
 杖を手にした私は皆を置いてサザンビークの街を出る。そのまま北上して、リブルアーチの街を訪れる。
 そして、探して・・・見つけた。賢者の血を引く者を。絶たなければ。
 それが、暗黒神の願い。叶えなければ。
 ・・・やめて。やりたくない。
 ・・・誰か、止めて。
 ・・・誰か、助けて・・・!

「ゼシカ!しっかりしろ!」
 両肩を揺さぶられて我に返る。ククールの真剣な双眼が私を見ていた。
「どうした。顔真っ青だぞ」
「あの声・・・」
「ああ、あの声聞いたら狼達が一斉に何処かへ行ったな・・・そういう事か」
 声の正体を理解したらしい。ククールはそっと私の両肩から手を離した。
「今の声は一体・・・それに真の賢者だって?」
 グラッドさんは顎に手をやって考え込んでいる。
「いや、まさかな・・・そんな事あるはずが・・・しかし・・・」
「取りあえずオークニスまで戻ろうぜ。積もる話があるならそこでしよう」
 ククールはそう言ってルーラの呪文を詠唱した。
 私達はオークニスの町に戻ってきた。グラッドさんの部屋に向かう。なぜかトロデ王も着いてきた。
 ヌーク草は入ってないけど、温かいお茶を出してくれて私達はようやくほっと一息付けた。
「ちょっと君達に話しておきたい事があるんだ」
 彼は話し始めた。メディさんは実は母親で、本来なら自分が母の後を継いで遺跡の守人になるはずだった事。
 だけど、彼は母から学んだ薬草の知識を人々の役に立てたいと思い、母を置いて一人この町へやってきたという。
 薬師としての夢は叶ったけれど、母一人残して家を出た事が後ろめたかったと。
「今日君達が母の袋を持って現れて、本当に嬉しかった。母が生き方を認めてくれたような気がしたからね」
「いつでも、子供の事を見守り、困っていれば助けようとする。親なんてのはそういうもんじゃよ」
 トロデ王の言葉に思い浮かぶのは故郷のリーザス村にいるお母さんの顔。
 ・・・勘当同然、喧嘩別れで飛び出しちゃったけど。本当にそうなのかしら・・・?
 見守ってくれているのかしら・・・?
「母に関わる事でどうしても気になる事があるんだ。あの、狼達に襲われた時に聞いた不気味な声」
「真の賢者を探してるって言ってたな」
「実は・・・私の家系には暗黒神を封じた賢者の一人の血が流れているんだ」
「・・・つまり、あんたは真の賢者は母親・・・メディだと思ってるんだな」
 ククールの言葉にグラッドさんは頷いた。
「様子を見に行こうと思うのだが、君達も同行して貰えないだろうか」
 グラッドさんの言葉に私達は頷いた。
 そうよね。お母さんだもの。心配よね。
 出発しようとした、まさにその時、急患だって1人のいかつい男が運び込まれて来た。
 どう見てもただの風邪にしか見えないんだけど・・・。
 グラッドさんも最初は渋っていたけど、あまりにも男が騒ぐものだからついに折れてしまった。
「これ、使ってくれ」
 ククールはキメラの翼をグラッドさんに手渡す。
「すまない、診察が終わったらすぐ駆けつける」
「よし、ゼシカ行くぞ」
 私達はグラッドさんの部屋を出て町の外へ向かって走り出した。
「俺達はとっくの昔に賢者を見つけてたんだな。くそっ!見つけてもそれとわからなきゃ意味ねーじゃねーか!」
 ククールが歯噛みする。その気持ちは分かるわ。
 その時点で気付いていたなら。
「ククール・・・」
「ああ、悔やんでる暇なんて無いな。急ぐぞ」
 私達は町を飛び出し、メディさんの家へルーラで飛んだ。

 メディさんの家の前にたどり着いた。見た感じ変化は無さそうだけど・・・。
「ゼシカ、下がってろ」
 レイピアに手を掛けながらククールが言った。そのまま扉を蹴り開けた。
 ・・・中にいたのは、メディさんとバフではなくて・・・
「くそっ」
 狼達だった。私達に気がつくと一斉に襲いかかってきた。
 どうにか狼達を退けた私達は家中を探して回った。でも、いるのは狼達ばかり。メディさん達の姿は見つからない。
「間に合わなかったのかな・・・」
 私の言葉にククールは首を振った。
「いや、だとしたら狼達がここに残ってるのは変だろ。奴らも探してるんだ」
 ククールは言い切った。諦めるな、と。