澄ひろえ
2020-09-27 20:27:35
13281文字
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身が凍えるは凍土と闇

ククゼシ2人旅ツイート小説「雪国編」を加筆、修正した物です。 ログ見逃した人どうぞ。最終ページは後書きです。

 私達は賢者の末裔を殺害し、暗黒神の魂が封じられた杖を持って逃走した黒犬の後を追うために、リブルアーチの街を後にすると、キラーパンサーに乗って北上した。
 でも、国境に向かう途中、分かれ道があり、ククールがキラーパンサーの動きを止めた。私も慌てて止まる。
「どうしたの?」
「教会がある。今日はあそこで休む」
 ククールが指さす方向を見ると、確かに教会が見えた。
「でも急がないと・・・」
 一刻も早く黒犬の後を追わなければいけないのに。
「ダメだ。ゼシカまだ本調子じゃないだろ?休まないとここからしんどくなるぞ」
 ・・・見抜かれてる。
 ククールの口調は怒ってない。でも有無を言わせない強さがあった。
「わかったわよ・・・」
 私は渋々といった口調で言った。
 私達はキラーパンサーの進路を教会へ向けた。

 教会の中には幸いにも宿屋の施設が設置してあった。
「体、どこか異常は無いか?」
 二つ並んだベッドの一つに腰掛けながらククールが尋ねる。
「別に、平気よ」
「なら、いいけどよ。無理だけはするなよ。お前すぐ突っ走るから・・・」
 体調を気遣ってくれているのはわかるわ。それはありがたいと思ってる。でも、ちょっと保護者っぽくない?
「に、してもなぁ・・・」
 ククールの視線が私の顔からすーっと下に向かっていく。
「なによ。ジロジロ見ないでよ」
 私は慌てて両手で前を隠す。
「その、魔法のビキニっつーの?これから雪国行くのになんでまた」
「でも、性能いいのよ」
「そうなんだろうけど・・・わかってねぇなぁ」
 ククールはがっくりと項垂れて頭を抱えた。・・・変なの。

 次の日、私達は教会を出発して、国境を越える洞窟に入った。
 途端に辺りの空気は一変して、凍えるような寒さになった。
「ゼシカ、馬車に入ってろ」
 ククールの言葉に反論する気も起きず、私は馬車に入り、魔法の法衣を上から羽織る。
 そして、国境の洞窟を抜けると辺り一面に銀世界が広がっていた。
 銀世界をひたすら進む。と、トロデ王がブツブツ文句を呟いているのが聞こえてきた。
 しばらくは我慢して聞き流していたんだけど・・・。
「いい加減にしてくれ!俺だってこの寒さには参ってるんだ。あんただけが辛いんじゃ無いんだぜ!?」
 ククールがキレた。その言葉を聞いてトロデ王はさらに言葉を荒げる。
「え~い全く腹の立つ!儂ゃ先に行くぞ!」
 そう言ってトロデ王は馬車のスピードを上げた。私達とククールとの距離がどんどん離れていく。
 その時、不気味な地鳴りが聞こえてきた。振動も伝わってくる。
「え、これって・・・」
 雪崩・・・!?
 周りの山から崩れてきた大量の雪が降りかかっている。
 ・・・丁度さっきまで私達が居た辺りに。待ってよ、そこにはまだアイツが・・・!
「ククール!」
 私は馬車を飛び出した。先程の場所まで戻る。雪煙が上がる中、私は声を上げ、辺りを見回す。
 だけど、この銀世界で目立つはずの赤い騎士服の姿は雪に覆われ見えなくなっていた。
「こ、こりゃ大変じゃ・・・」
 トロデ王も引き返して来る。
「先程進んだ先に小屋が見えておった。そこへ行って助けを呼んでくるわい!」
 トロデ王はそう言って馬車を再び走らせた。
 早く・・・早く・・・。祈るような気持ちで私は雪を掘り起こしながら少しでもククールの痕跡を探していた。