澄ひろえ
2020-07-26 21:56:16
10195文字
Public
 

騎士の意味は

ククゼシ2人旅ツイート小説「呪われしゼシカ編」を加筆、修正した物です。
ログ見逃した人どうぞ。最終ページは後書きです。


 俺とゼシカはハワードの屋敷を出て、宿に帰る道を歩いていた。辺りは既に日が暮れている。
 ゼシカが、ふと教会の前で足を止めた。
「・・・どうした?」
「ククール、あのね・・・話があるんだけど」
「何だよ、話って」
「外だと寒いから、中入って話したいの」
 そう言ってゼシカは教会の扉を開き、中へ入っていった。教会の1階には俺たち以外誰もいなかった。
「・・・で、話って?」
「・・・ハワードさんが言ってたでしょ。黒犬が北へ向かったって」
「ああ」
「私、黒犬を・・・杖を追うわ。これ以上犠牲者を出すわけにはいかない。決めたの。もう、迷わない」 
 言い切ったゼシカの瞳には強い力が宿っていた。
「・・・そうか」
「だから、ククール今までありがとう。ごめんね。私のせいで引き留めちゃって」
 おい、ちょっと待て。
「お前、一人で黒犬を追うつもりかよ!?」
「だって!ククールが旅をする理由はもうないでしょう?オディロ院長の仇を討ったんだし、自由の身だって言ってたじゃない!」

 ・・・ドルマゲスを倒した時に俺が言った言葉。今度は俺の胸に刺さる。
 確かに院長の仇は討った。ゼシカも杖の呪縛から解放した。
 もう、俺が旅を続ける理由はない。
 ・・・本当に?そうなのか?
 あんな事実を知っても、彼女一人に全て任せて、一人でフラフラあてもなく。
 それが、俺の求める自由なのか?
 ・・・多分、違う。でも、俺にはこんな言い方しか出来ない。
「まぁ、そうだな。今の俺は自由の身だし?好きにさせて貰おうかな」
 ゼシカは俯き、スカートをギュッと握りしめる。
「・・・だから、ゼシカについていく」
 ゼシカははっと顔を上げて、俺の顔を見た。
「それで・・・いいの?」
「良いも悪いも俺が勝手についていくだけだし。それに・・・」
「それに?」
「言っただろ?君だけを守る騎士になるってさ」
 ばっちりウィンクを決めてみせる俺にゼシカは吹き出す。
「はいはい。どうもありがとうございますー」
 かつて交わした言葉、それでもお互い以前ほどの余所余所しさはなく。
「それじゃあそろそろ宿屋戻るか。体大丈夫か?平気なら、明日出発しよう」
 俺の言葉にゼシカは頷いた。
「ええ、大丈夫・・・これからもよろしくね、ククール」
「・・・ああ、よろしくな、ゼシカ」
 俺の言葉に彼女は笑った。
 その笑顔を見て、俺はようやく彼女を「救えた」んだと感じた。
 
 呪われしゼシカ編ー終ー(次ページは後書きです)