澄ひろえ
2020-07-26 21:56:16
10195文字
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騎士の意味は

ククゼシ2人旅ツイート小説「呪われしゼシカ編」を加筆、修正した物です。
ログ見逃した人どうぞ。最終ページは後書きです。


 さて、どう来るか。呪文か物理攻撃か。
 その時、急に俺の体から力がカクンと抜けた。そして襲ってくる強い睡魔。
 やべぇ・・・ラリホーマだ。
 頭を振って睡魔を追い出そうとする。が、それがまずかった。
 気が付いた時は彼女が眼前に迫っていた。彼女の振るう杖の一撃で俺の体は吹き飛ばされた。
「ぐっ」
 地面に叩き付けられて俺は呻いた。お陰で睡魔は吹っ飛んだが・・・。
 続いて襲ってくるのはマヒャドの呪文。氷の刃が服を肌を切り裂く。
「くそ・・・」 
 彼女は勝ち誇ったように宙に浮いている。
 何だよ、呪文も物理攻撃も強化されてるってか?
 ・・・だけど、悪いな。反撃開始だ。
 頬を伝う血を拭って俺はニッと笑った。俺の笑みに彼女の顔が不快そうに歪む。
 凍える体を叱咤し、俺は呪文を唱える。
「マホカンタ!」
 現れた魔法障壁に彼女が歯噛みするのが分かった。
 これで呪文は問題なし。次は。
 彼女が杖で殴りかかってきた。
「スカラ!」
 淡い光が俺の体を包む。殴りかかってくる杖を剣で受け止めた。先程ほどの衝撃は感じない。
 すると、彼女は一旦退き、杖で空間を切り裂いた。
「なっ・・・?」
 切り裂かれた空間から現れたのは、黒い影をした魔物達。
 ・・・やれやれ、今度は数で勝負ってか?
 黒い影は一斉に冷たい息を吐き出した。俺は盾で受け止める。盾の力でさしたるダメージは受けない。
 ・・・まだだ、まだ、もう少し。
 俺の動きが止まったのを好機とみたか、彼女はさらに杖を振るい、黒い影を召喚する。
 ひたすら攻撃を繰り返す黒い影の魔物。体は傷つくが、俺はひたすら耐えて気を高める。
 ・・・よし。
 俺は剣を眼前に構えた。目を閉じ、精神を統一させる。
「行くぞ!」
 目を開き、剣を回転させて地面に突き刺した。突き刺した剣から魔方陣が発生し、広がっていく。
 魔方陣は魔物と彼女の足元まで広がり、そこから紫色の雷が発生し、捉えた。
 雷は影の魔物達を一瞬で消し去った。彼女の体は消えはしなかったが、大ダメージを与えたらしい。
「アアア!」
 彼女は絶叫した。かろうじて杖を支えに立っていた。

 何とかなったか。そう思ったのも束の間。
 彼女がいきなり高く浮上し、杖を振りかざした。杖に魔力が収束し、どんどん膨れあがってくる。
 まずい!あんなモン喰らったら俺だけじゃなく、街そのものが・・・そう思ったその時、
 間一髪。ハワードがやってきて結界を発動させた。
 結界の力が彼女を直撃し、彼女の手から杖が離れる。力を失った彼女は落下し、その場に倒れ込んだ。
 とりあえず、ハワードの事はトロデ王に(いつの間にかいた)任せて彼女に近づいた。
 ・・・邪悪な気は感じられない。顔色は多少青ざめているが、さっきに比べれば全然ましだ。
 呼吸、脈拍も正常・・・ただ、仕方がなかったとは言え俺の放ったジゴスパークのせいで体中傷らだけだった。
 ・・・命に別状はない・・・か。俺はほっと息を吐く。
 とは言え、こんな人が大勢いる所じゃ治療もままならない。
 宿に運ぶか。俺はゼシカの体を抱き上げた。
 ハワードが愛犬がいなくなったと騒いでいたが・・・もう、衛兵の仕事は終わりだ。
 やりとりを無視して俺はゼシカの体を抱きかかえ宿屋へ向かった。

 宿屋のベッドにゼシカを寝かせる。
 傷の具合を確かめて慎重に回復魔法を唱える。少しずつ傷を塞いでいく。
 おもむろにノック音が聞こえた。鍵は開いている事を伝える。
「どうじゃ、ゼシカの具合は?」
 トロデ王が部屋の中に入ってくる。珍しいな・・・まぁ心配なのは分かるが。
「傷はほぼ治した。後は意識が戻れば問題ない」
 ゼシカは時折うなされていた。額に玉のような汗が浮かぶ。
 看病すると言い張るトロデ王に俺は椅子を譲って、壁にもたれかかった。
 まだ、休むわけにはいかない。容態の急変もあるし、もし・・・杖の呪縛から逃れていなかったら。
 そんな事を考えていたら、ゼシカの目がうっすらと開いた。
「私・・・なんだか長い夢を見ていたような気がする」
 話し声にノイズは聞こえない。意識もしっかりしている。どうやら大丈夫そうだ。俺はほうっと息を吐いた。
 無理をするなと言うトロデ王の制止を振り切ってゼシカは話し始める。
 それは、トロデーンの秘宝の杖と七賢者と暗黒神の因縁。
 七賢者は暗黒神の魂を杖に封じ、血の封印を施した。
 そして、杖はトロデーン城で厳重に封印されていたが、ドルマゲスによってその封印は解かれた。
 杖を握った者は暗黒神に意識を乗っ取られ、七賢者の血を絶つ為の傀儡になる。
 そして、七賢者の血が全て絶たれると封じられた暗黒神の魂が蘇る・・・。
 
 オディロ院長・・・。俺は瞑目する。
 そんな事のために殺されてしまったのか?
 いや、院長だけじゃない。ゼシカの兄も・・・他に殺された人達も
 あんな風に無残に殺されなきゃならなかったのか?
 己が復活するために。杖の運び手だって次々使い捨てるように操って。
 ・・・気に入らねぇ。

「ねぇ、そう言えば杖は?」
 ゼシカの言葉に俺とトロデ王は顔を見合わせた。
 そういえば、結界が発動して杖がゼシカの手から離れた後、見ていない。
「大変!早く見つけないと、次に杖を手にした者がチェルスを狙うわ!」
 その言葉に俺は宿を飛び出した。街中を走り回り、杖を探す。
 ・・・だけど、結局俺は間に合わなかったんだ。

 チェルスはハワードの愛犬レオパルドが咥えてしまった杖によってその命を絶たれた。
 チェルスは最期までハワードの身を案じ・・・それを見たハワードは因縁の呪いを守れなかった事を感じ、すっかり落ち込んじまった。
 駆けつけたゼシカとトロデ王もショックを隠しきれなかった。
 ハワードの話によるとレオパルドはチェルスを刺した後、北へ向かっていったらしい。
 そして、「レオパルドを倒し、チェルスの仇を討ってくれ」・・・と、
 それから、せめてものお詫びという事でゼシカに眠っている魔法使いの天分を目覚めさせてくれた。
 ・・・もう、イオナズンやメラゾーマが使える弾丸お嬢さんなんだが?