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澄ひろえ
2020-07-26 21:56:16
10195文字
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騎士の意味は
ククゼシ2人旅ツイート小説「呪われしゼシカ編」を加筆、修正した物です。
ログ見逃した人どうぞ。最終ページは後書きです。
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「ふむ、大体の事情はわかった」
俺が街でのいきさつを話すとトロデ王は静かに頷いた。
「ああ、今からライドンの塔までひとっ走り行ってくる」
俺の発言にトロデ王は目を丸くする。
「今からじゃと?今日はもう休んだ方が良いのではないか?」
「だいじょーぶだって・・・」
どうせ眠れない。眠ったって見る夢は悪夢に決まってる。
「ああ、トロデ王と姫様はここで待っててくれて構わないぜ。俺一人で行ってくるからさ」
ここまで来るのもほぼ休みなしだったんだ。特に姫様にはきついだろう。
が、その時、それまで座っていた姫様が立ち上がった。そのまま、俺に歩み寄り、コツンと額を俺の肩に当ててくる。
「姫様・・・?」
俺は驚いて姫様に尋ねる。
「姫は心配しておるんじゃよ。ゼシカの事も、ククール、お主の事もな」
「・・・トロデ王・・・姫様」
「一人では行かせんぞ。早くゼシカを魔の手から解放してやらねばな」
トロデ王はそう言うと御者台に飛び乗った。
俺は確認するように姫様の瞳を見た。姫様は「任せて」と言わんばかりに嘶いた。
「・・・すまない」
「何を水臭い事言っておるんじゃ。家臣の身を案じるのは王として当然のことじゃろう」
手綱を握りながらトロデ王はウンウンと頷く。
「だから、俺はあんたの家臣になった覚えはねぇって・・・」
俺は苦笑する。それでも、心が少し軽くなった気がした。
「さぁ、出発するぞい」
キラーパンサーに乗って夜通し駆けた。
やがて、朝靄にけぶる頃、巨大な塔が姿を現してくる。
「あれか・・・」
吐く息が白い。北の地にあるというのもあるが、標高も高いんだろう。
朝靄が消え失せる頃、塔の前にたどり着く。
塔を見上げる。高い塔の先にある空は俺の心の中を写すかのようにどんよりと曇っていた。
俺は馬車を振り返った。流石に姫様の息も荒く、汗が滴り落ちていた。体中から湯気が上がっている。
「無理させちまったな・・・」
俺は姫様の首筋を労るように撫でた。
「儂らの事は気にするな。気をつけて行くんじゃぞ」
トロデ王の言葉に俺は頷き、塔の入口にカギを差し込み扉を開いた。
「しっかし、高い塔だなぁ。ひょっとしたら天辺じゃ雲にも手が届くかもな」
広い塔の中に俺の声が響く。
・・・返事は、無い。
いつも、俺の言葉に反応してた、跳ねっ返り娘の言葉が聞こえない。
代わりに脳裏に浮かぶのは青白い肌の「彼女」と魔獣と化した道化師が砕けて灰となった最期の姿。
俺は頭を強く振って幻影を追い払う。
それでも塔を上っている最中、何度も浮かんでくる、最悪の結末。
もし、間に合わなかったら?あのおっさんが作る結界が役に立たなかったら?
砕け散り、灰になる「彼女」の姿。
「しっかりしろ!俺!・・・助けるって決めただろ?」
頭を殴りつけたい衝動に駆られつつ無理矢理自分に言い聞かせる。
決めたなら、もう迷うんじゃない。
巨大なシーソーを上り下りしてやっとの思いで頂上にたどり着いた。
そこにいたのは、いかにもな職人風情の男。ライドンだ。
クラン・スピネルの事を尋ねてみる。
分かった事はもう、その宝石はクランバートル家に存在しない事。大昔の先祖が自分の作った像にその宝石を埋め込んだ事。
「その、像の場所は?どこにあるんだ?」
詰め寄るように尋ねる俺にライドンは首を振った。
「さぁな、そこまでは知らん。ただ・・・」
「ただ?」
「あの先祖は・・・リーザスとかって名前だったか」
「!?」
目を丸くする俺を尻目に、ライドンはもう良いだろうとばかりに塔を造る作業に戻った。
リーザス・・・彼女の生まれ故郷。
俺は顔に手をやって必死に思い出していた。
確か、フォートからの写真撮影依頼の中にリーザス像を撮影するものがあった。
その像には確か、瞳の部分に赤い美しい宝石がはめ込まれていて・・・。
・・・あれか!?
確証は無い。でも確かめる価値はある。
その時、さぁっと周りが明るくなった。俺は目をしばたたかせる。
・・・ひかり?
見上げると、雲間から太陽の光が差し込んで俺を照らしていた。
まるで、俺を勇気づけるかのように太陽は輝く。
「・・・そうだな。まだ、道は繋がっている」
太陽の光へ向かって、俺はルーラを唱え、飛んだ。
ルーラで到着するやいなや、リーザス像の奉られている塔を駆け上る。
とはいえ、体は既に疲労困憊。梯子を握る手にもなかなか力が入らない。汗が目に染みて痛い。
あと少しだ。と自分に言い聞かせ、なんとか最上階まで上りきった。
そこには赤い瞳に静かに光を湛えた女性の像が佇んでいた。ふらつく足取りで像へ近付く。
「これが、クラン・スピネル?」
手を伸ばしかけて、一瞬ためらう。
これ、簡単に外れる物なのか?とはいえ、像を壊すような事は流石にしたくない。
それに、何か罠があるかも・・・。
「ま、その時はその時か」
瞳に手を触れた。途端、俺の意識は途絶えた。
目を開くと、先程と変わらない風景・・・いや、違う。像のあったところに立っているのは金髪碧眼の若い女性。
色は違うが、その力強い意思のこもった瞳があいつを思い出させる。
普段の俺なら迷わず声を掛ける美女・・・だが、そんな気にならないのはこれが夢だと分かっているから。
「私の名はリーザス。遙か遠き昔にこの世界を生きた者です」
彼女は言った。
そうして、リーザスは語る。忘れられた賢者の血の話を。
クランバートル家に産まれた彼女は賢者の継承者であり、アルバート家に嫁ぐ事で賢者の血はアルバート家に受け継がれた事。
しかし、その血も継承者であるサーベルトが殺された事により絶たれてしまった事。
(賢者の血を絶つ事が目的の存在がいる・・・?)
ドルマゲスが今まで行っていた殺人にはそういう目的があったのか?
そして、今まさに別人の手によって一人狙われていて・・・。
「アルバート家の血を絶やさぬ為に力を貸しましょう。クラン・スピネルを持って行きなさい。きっと助けになるはずです」
リーザスの声にはっと我に返る。
「アルバート家の血を持つ最後の一人。ゼシカの事をよろしく頼みましたよ」
リーザスの姿がゆっくりと消えていく。と、同時に周りの景色もぼやけてゆく。
ああ、夢から覚めるのか。俺は目を閉じた。
現実に戻る瞬間、
「・・・頼む、妹を助けてくれ・・・」
別の・・・男の声が耳に届いた。
「ん・・・」
気が付くと、リーザス像の前の石畳の上に倒れていた。
「いってぇ・・・」
倒れていた場所のせいで体に痛みが走る。
立ち上がろうとした時、握りしめていた左手でチャリと音がした。
ゆっくりと手を開くと、そこには輝く一対の赤い宝石。その宝石からは魔力の波動が感じられた。
「クラン・スピネル・・・」
はっとリーザス像を見ると、赤い瞳は無くなり、空虚な瞳は何も写さず佇んでいた。
・・・俺に託してくれたのか。それに、意識が戻る前に聞こえた言葉・・・。
「・・・必ず、助けるさ。任せてくれ」
クラン・スピネルをぐっと握りしめて、俺は見えない相手に誓った。
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