2024-08-30 22:31:41
9782文字
Public スミイサ
 

Colorful

イサミお誕生日おめでとう! 親戚のおばあちゃんになった気持ちで書きました。あのイサミくんがあんなに大きくなって......(ほろり)
ほとんどオールキャラ小説ですが、根底にふわっとスミイサが香っているかも 本編後平和謎時空です


 どん、と背中に強い衝撃。続けて、細い腕が首の辺りに回る。
「イサミ!」
「ルル!」
 慌てて名を呼べば、腕の主──ルルは、イサミの首を支店にしてくるりとイサミの前まで回ってきた。今回は絞めるつもりではなかったらしい。
「イサミ、きょうお誕生日! おめでとう、イサミ!」
 ルルはにっこり笑って、ぎゅうとイサミの腹の辺りに抱きついた。
「ありがとう、ルル」
 その頭を撫でてやりながら、イサミは言う。ルルの溌剌とした笑顔はあのころとは少し違うが、それでも明るく可愛らしい。
「は! ルル、イサミにプレゼントある!」
 待っててイサミ! と言ったのと駆け出したのとどちらが早かったか、ともかくルルはばたばたと足音を立てて去っていき、イサミはその場に取り残された。ルルは育てた人間によく似て、すこし慌ただしいところがある。
 小さくなっていく背中に「走ると危ないぞ!」と軽く声をかけたが、聞こえているかどうか定かではない。
 イサミは廊下の端に寄ってルルを待った。途中声をかけてきた何人かに会釈をして、また誕生日を祝ってもらい、ポケットに何かの割引券やクーポン券をねじ込まれたりもした。
「イサミー! ケーキ食べる!」
 背後から元気な声が聞こえてきて振り返ると、小さな籠を抱えたルルが走ってきていた。
「ケーキ?」
 籠に視線を落とせば、一口サイズの小さなパウンドケーキが個包装にされて数個入っている。可愛らしいリボンでまとめられたそれは、見た目こそ美しいがどこにもラベルなどは貼られていないように思えた。
「ルル、ケーキ作った! 未来でサタチョに教えてもらった」
 ルルはふふん、と胸を張って、籠をイサミに差し出した。
「ルルが作ったのか。すごいな」
「ぜんぶ手作り! ヒロについててもらった」
「そうか、ありがとうな。ルル。すごくおいしそうだ。あとでヒロにも礼を言わなきゃな……
 礼を言って受け取れば、ルルはガピ! と破顔した。
……なあルル。この後暇か?」
「うん。やることないよ」
「なら、一緒におやつの時間にしないか? 茶ぐらいなら俺も入れられる」
 一緒に食べよう、とイサミは声をかけた。今のルルには未来の記憶があり、もしかすれば大人として扱うべきなのかもしれないが、今に帰ってきたからのルルは大人と子供の間のような不安定さを見せている。肉体に精神が引きずられているのかもしれないし、あまりに早く終わってしまった幼年期の続きをやり直しているのかもしれない。理由が何であれ、イサミはルルに楽しんで欲しいと思っていた。
 ルルはきらきらと目を輝かせて、前のめりになる。
「食べる! ルル紅茶がいい! 抹茶にがくて飲めない」
「わかった。こないだビルドバーンでティーポット作ったからちょうどいいな」
「ガピィ〜! イサミ、はやくいこ!」
 ルルはイサミの腕を引いて、元気に歩き出した。