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榊
2024-08-30 22:31:41
9782文字
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スミイサ
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イサミお誕生日おめでとう! 親戚のおばあちゃんになった気持ちで書きました。あのイサミくんがあんなに大きくなって......(ほろり)
ほとんどオールキャラ小説ですが、根底にふわっとスミイサが香っているかも 本編後平和謎時空です
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穏やかな朝食どきの食堂で、唐突に目の前に置かれたモグラのぬいぐるみにイサミは目をしばたかせた。
「
……
なんだよ、これ」
「いさみくん、お誕生日おめでとうもぐ!」
テーブルの下からにょきっと生えてきた腕がモグラをぴこぴこと動かす。可動域の狭そうなモグラの足が、上下動に合わせてふらふらと揺れた。裏声のふざけた声音がイサミの誕生日を祝って、そういえばとイサミは今日の日付を思い出す。
「モグラの語尾はもぐじゃねえ」
ていうか出てこい、とイサミが促すと、テーブルの下からヒビキとミユが顔を出した。モグラのぬいぐるみはヒビキが操っていたようだった。
「あんたねぇ、最初の感想がそれ? もっとこう、かわいい〜! とかうれしい〜! とかないわけ?」
「俺がそれ言ってるの想像つくか?」
「やってみたら案外似合うと思いますよ!」
「なんでそうなるんだ
……
」
ヒビキは呆れ顔で、ミユは頬を紅潮させた笑顔で、それぞれ椅子を引いてイサミの対面に座る。
「ま、あらためて誕生日おめでとう。これ誕生日プレゼントだからよろしく。片付け手伝ったおうちが雑貨屋さんやっててさぁ、イサミのこと思い出したから買ってきちゃった」
ヒビキがモグラの頭を撫でながらそう言った。
「
……
まあ、ありがとう」
「こっちは私からです〜!」
イサミが慣れない感謝の言葉を伝えると、ミユは嬉しそうに鞄から何かを取り出す。机上のぬいぐるみにそっと寄り添うように置かれたそれは、レトリバーあたりだろうか、金の毛をした犬のぬいぐるみだ。
「
……
ミユも、ありがとう。だが、これはどういうチョイスなんだ
……
?」
寄り添う犬とモグラを前に、イサミは眉を寄せた。モグラの突き出た鼻をつんと突いてやれば丸い体はふらりと後ろに傾くが、倒れるには至らない。
「イサミに似てるからだよ。ほらこの愛想の悪い顔とかそっくり」
ヒビキは意地の悪い笑みを浮かべていたが、ミユもこくこくと頷いていたので、二人の間で意見は一致しているようだった。少しだけ腹が立つような気もしたが、愛想が悪いのは事実なので言い返しようもない。
「じゃあこっちは」
笑顔で舌を出している犬のぬいぐるみの方を指すと、今度はミユが嬉しそうに声を上げた。
「よくぞ聞いてくださいました! こっちはスミスさんの概念ぬいです! お部屋に二匹とも仲良く飾ってあげてくださいね
……
!」
「がいねんぬい」
耳慣れない言葉が混じって、イサミは困惑した。疑問をそのままに鸚鵡返しで繰り返せば、笑顔のミユが続ける。
「これをスミスさんだと思ってくださいってことです!」
「
……
スミス?」
ミユは机上に手を出すと、寄り添う二匹を一層くっつけるようにした。モグラの鼻が犬の頬に突き刺さっていて痛そうだ。
「はい! この口元の感じとか、毛並みとか似てませんか?」
「イサミとモグラほどは似てないけど、たしかにスミスって動物に例えるなら犬って感じだよねぇ」
ほどほどにしなよ、と肩肘をつきながら、ヒビキも同意する。
「
……
そうか」
イサミは小さくそう呟くと、モグラと犬のぬいぐるみを引き取り、自分側に並べ直した。鼻が突き刺さらない程度に隣り合わせてやると、今度は犬のひげがモグラの目をくすぐっていた。
きょとん、とヒビキが目を丸くする。
「なんだ。てっきり『なんで俺がスミスを飾らなきゃいけないんだよ』とか言うかと思ったのに」
「
……
言わねえよ」
俯いたイサミの前髪が、鋭い印象の目元を覆い隠した。沈黙の気まずさを誤魔化すように、イサミはほとんど食べ終わっていた朝食を急いでかき込む。
「イサミさぁん!!!!!!! それ、それは、やっぱり勇気融合合身後のおふたりはもうそういう感じなんですね?!」
「ちょっとミユ、あんまり大声でいかがわしいこと
……
」
「べ、別に合身はいかがわしくない」
口の中のものをごくんと飲み込み、イサミは慌てて口を挟んだ。
「
……
ごちそうさま。プレゼント、ありがとう」
はしゃぐミユと窘めるヒビキを置いて、イサミは席を立つ。手はトレイで塞がってしまったので、モグラと犬は胸ポケットに差し込んだ。
ブリーフィングまで少しだけ時間があった。イサミは一度自室に戻ると、少し悩んで枕元にぬいぐるみを置く。朝のひんやりした空気はとっくにイサミの体温をシーツから奪っており、朝ベッドメイクしたままのシーツはシワひとつなく美しい。簡素なベッドの上で寄り添うぬいぐるみを、イサミは少しの間じっと眺めていた。
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