ゆめをみてたの
*これは、とても
幸福なゆめ。醒めてほしくないと思うほど
幸福な。*
オレさまは、地上に出なくたっていい。こんな日が、ずっと続いてくれるなら。
「
……ふたりともなにしてるのッ!」
「あっ、パピルス!」
「パイ投げってやつさ。パピルスもやるか?」
ニューホームの奥、謁見の間から漏れる笑い声に釣られて、パピルスはひょっこりと顔を覗かせる。そこには、金色の花とスノードロップの花畑の真ん中で、身体中に真っ白なクリームを纏いながら笑うフリスクとサンズがいた。その珍妙な光景に一瞬止まった思考が再度動き出してすぐ、パピルスは声を荒げる。
「やらないよ! 汚れちゃうでしょ!」
「服は洗濯すればいいんだよ、ほらパピルス!」
「わぁっ!」
飛んできたパイ。やらない、と言ったにもかかわらず飛んできたそれを、パピルスは避けることができなかった。ベチャ、と音がして目の前が真っ白になる。口内に広がる甘い味と、ねっとりとした感触。
「もう! やらないって言ったのに!」
「はは、いい格好だぜパピルス」
「やり返してこないなら、もっと投げちゃうよ?」
「
……手加減しないぞッ!」
「わぷっ」
パピルスは二人の足元にあるパイを拾い上げ、勢いよく投げつけた。それはまっすぐにフリスクの顔へと飛んでいき、粘度のある水音がする。ぐらりと後ろに傾いた彼は、その場に尻餅をついてしまった。
「次は兄ちゃんだよッ!」
「お、やるか? パピルス」
「えいッ!」
「はは、狙いが甘いぜ」
拾っては投げ。拾っては投げ。けれどパピルスの手を離れたパイは途中で速度を落とし、空中で止まってしまう。そして、何事もなかったかのようにゆっくりと地面に着地するパイ。
「って兄ちゃん! 重力操作してるでしょッ!」
「これも戦略ってやつさ」
「ズルはだめだよ!」
「ズルじゃないさ
……うおっ!」
「へへ、油断したねサンズ」
飛び交うパイ。響く三人分の笑い声。十数年ぶりに感じた「楽しさ」に、パピルスは涙が出そうになった。
今、すっごく幸福だ。王様になってからフリスクは忙しそうだし、兄ちゃんもスノーフルを出ていっちゃった。モンスターの数も減っちゃって、寂しいなって思ってたけど。
オレさまは、地上に出なくたっていい。こんな日が、ずっと続いてくれるなら。
こんな日が、ずっと続いて、くれる、な、ら。
視界が、ごろんと横に一回転した。さっきまで、見下ろすほど小さかったニンゲンが、オレさまを見下ろしてる。あれ、今オレさま、兄ちゃんやフリスクと、パイを投げて遊んでた、はず、なのに、な。
1≫ もくじへ
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.