僕らの行く末に
*ここはどこ? キラキラ、にぎやか、とてもなつかしい。*
気づけばボクの目の前には、見覚えのある風景が広がっていた。
キラキラと輝くイルミネーションはとても眩しく、そして懐かしいものだった。今となっては見ることもなくなっていたその輝きを前に、シャルエはただ呆然と立ち尽くす。
「
…ここは、どこ?」
彼にとって、見慣れていたはずの風景が頭の中をかき乱した。知っているはずなのに、知らない。
「ここは、ボクが住んでるスノーフルじゃない
…!」
シャルエが住んでいるスノーフルの町はこんなに活気付いていなかった。"WELCOME"と書かれた旗に飾られたイルミネーションに、モンスターたちの笑い声。子供たちの走り回る足音も彼の住むスノーフルでは見られない光景だった。
ではなぜ見慣れている風景なのか。それは、彼が生きている今より十数年ほど前。まだシャルエたちが地上へと出る前までのスノーフルと同じだったから。
シャルエは走り出す。地上へと出て、ニンゲンとの争いが起こり死んでしまった仲間たちがここにはみんな居た。元気で過ごしている仲間たちと久しぶりに話がしたい。笑い合いたい。けれど、何かおかしい。
「どうして、誰もこっちを見ないの!?」
まるで、シャルエが立っている場所には誰も、何もいないかのようだった。道のど真ん中に立ち尽くしているというのに誰も何も言わない。触れてこない。
シャルエを除くスノーフルのモンスターたちは言葉を交わし、互いに触れ、そうして生きているはずなのに。
ここが自身の住むスノーフルとは違うからなのか。自身の存在を認識してもらえない悲しみにシャルエが視線を落とすと同時に後ろから聞こえる声。
「おや、パピルスじゃないか」
「
…ッ!」
不意に呼ばれた自身の名前。とうとう自身を認識できる仲間が現れたのかと嬉々として振り返るが、彼の希望はすぐに打ち砕かれる。
そこには、ショップの店員と楽しそうに会話する"パピルス"がいた。
「パズルは完成したのかい?」
「うんッ!ところで、サンズを見なかった?」
「見てないねえ。またどこかでサボってるんじゃないの?」
「もう、オレ様が目を離すとすぐ
……」
すぐ目の前で交わされている会話が、とてつもなく遠く聞こえる。これではっきりした。ここに、彼の居場所がないことが。
ここにはシャルエではない"パピルス"が居る。この世界にとって、シャルエは異物なのだ。居た堪れなくなって、シャルエはまた走り出す。握りこぶしに力を入れると、革手袋がキュ、と鳴った。早く帰りたい。自身がいるべき世界へ。
「随分と格好いい服を着てるんだな、パピルス」
「
…へっ」
顔を上げると、声の主と目があった。ニ、と笑った相手は真っ直ぐにシャルエを見つめている。
「お前さん、別の時間軸のパピルスだろ」
「
……兄ちゃん、ボクのこと見えるの?」
「ああ、見えてるぜ。年取ったか?成長したな。どうしてここに?」
「わ、わからない
……。にいちゃ
…」
久しぶりに兄に会った嬉しさと、誰かに認識してもらえた安堵から涙が込み上げた。今まで、何があっても人前で涙を見せることはしなかったシャルエの頬が濡れる。
元の世界では自身も兄も忙しく、顔を見る機会が減っていたこともあってかサンズの顔がとても懐かしく感じた。
サンズはシャルエの姿を見て少し考えた後、そっと口を開く。
「時間はなさそうだな」
「え?」
「
……頑張ったな、パピルス」
シャルエの服の裾を引くサンズ。それに従ってその場にしゃがみ込むと、サンズの手がシャルエの頭に触れた。
「兄、ちゃん」
「お疲れさん。お前はよく頑張ったよ」
なにが、という間も無く視界が白く染まっていく。ぼんやりとぼやけていくサンズの姿にシャルエは慌てて口を開いた。ダメ、これだけは言わないといけない。
「兄ちゃん
…!地上に出ちゃ‥‥!!」
首筋に、鋭い痛みが走った。
『僕らの行く末に』
気づけばボクの目の前には、ニンゲンの足があった。
自身より小さいはずのニンゲンに見下ろされていることから、首を切り落とされたのだとシャルエは気づいた。先ほどまでのはきっと走馬灯というものだったのだろう。あれは、過去のスノーフルだったのだ。
悔しい。"ボクら"の行く末がこんなになるなんて。知っていたら地上になんて出なかった。たとえ地上へと出てニンゲンと争うことになるのが運命だったとしても、最後の最後にこうしてニンゲンに殺されなきゃならないなんて。
「
……オレ、さまは」
不気味な笑みを浮かべこちらを見下ろすニンゲンに、シャルエは笑った。泣くのでも、怒るのでもなく。
「オレさまは
…貴様を、信じてるぞ
…」
きっと、これで終わりなんかじゃないって。ボクらの行く末にハッピーエンドがあるって。
——ニンゲンと一緒に、笑い合える未来があるって。
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