Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
沁月
Public
ウ教×ハ♀ 相思相愛 読み切り
万感の筆が描くもの
MHRウ教×ハ♀。相思相愛。
ハ♀視点。最後のページのみウ視点。
狩猟の他にやりたいことを見つけようと、絵を描くことを始めたハ♀のお話。
1
2
3
4
5
6
その日から、ウツシ教官は水車小屋に通ってくれるようになった。
時間をかけて、私が引き裂いた絵を修復するのを、手伝ってくれた。
細かく裂いた紙片も、あなたは決して見逃さなくて。
少しずつ、日に日に絵が直っていくたびに、あなたは嬉しそうに笑って。
「素敵な構図じゃないか!」
「綺麗な線だ!」
「可愛い色合いだね!」
たくさんの、優しい言葉をくれた。
あなたは、何でもお見通し。
私がその絵で気を付けたこと、頑張ってみたことを的確に見つけて、その部分の褒め言葉を必ずくれる。
(
……
いつか、大好きなあなたを、描けたら)
息絶えかけていた絵への想いは、あなたのおかげで息を吹き返し、私はまた、練習ができるようになった。
練習には、あなたも一緒に居てくれる。
ばらばらになった絵を直したり、時に座って本を読んだりして、傍に居てくれる。
私が声をかければ、描いたものを見てくれた。
無闇に見ようとはせず、見たい時は必ず声をかけてくれた。
そんな日が続く中、ようやく。
ようやく、私が最初に引き裂いた絵、初めて頑張って描いた、里の風景画が。
「ここが、こうで
……
! ここを、こう貼ったら
……
!」
「そうだね愛弟子、あとはここを貼って
……
おしまいっ! 完成だあぁ! 直ったね!!」
格子窓
こうしまど
から外の夜空にまで突き抜けたであろう、高らかに響いた、大好きなあなたの声。
最初に引き裂いた、私のはじまりの絵が、やっと直った。
引き裂いたのは一瞬だけど、直すのにはかなりの時間を要した。
きっとウツシ教官がいなければ、直らなかった。
いや、きっと、直そうともしなかったと思う。
ばらばらの紙片を組み合わせたので、前よりも歪んでしまった絵。
けれど、畳の間に立てかけることの叶ったそれを見つめながら、私の隣に並んで立つあなたは目元を蕩けさせ、ほうっと息を吐く。
「
……
素晴らしいね。夜とは冷たく映ることもあるけれど、この絵からは優しい温かさを感じる。本当に良い絵だよ
……
直せて良かったなぁ」
「
……
ウツシ教官のおかげです。ありがとうございました」
「どういたしまして。捨てるにはとても惜しい絵だ、直って俺も凄く嬉しいよ」
言葉通り、あなたはとても嬉しそう。
まるで自分のことのように、金色の瞳にはきらきらと光が瞬いて。
私の心が暗闇に惑わないよう、いつも優しく導いてくれる、温かい光。
「ウツシ教官。あの
……
こんなに助けて頂いておいてぶしつけなんですけど、お願いがあります」
「おお! 何だい? 俺、モデルになろうか!?」
「そ、それはもう少し後で!」
「ふふふ、もう少しかあ。じゃあ、その時を楽しみに待ってるとして、お願いって?」
「
……
あの。今日は、せっかくお天気も良いので、お外で描きたいなぁと」
私の提案に、あなたは「いいねえ!」と笑顔を咲かせる。
とても、とても安心する。
「私、もう一度、その絵と同じ場所で描きたくて。
……
なので
……
良かったら、一緒に、居て頂けないかと」
「もちろん! 素晴らしいじゃないか、早速行こう!」
悩む様子など一切見せず、満面の笑顔で頷いたあなたの姿に、私は思わず笑ってしまった。
道具を一式用意して、一緒に小さな
鞄
かばん
に詰めて。
顔を見合わせて、笑い合って。
二人で向かった、たたら場の屋根の上。
今夜は、満月。
幻想的な優しい
白光
はっこう
が、私とあなたを包み込んでくれる。描くのにも明るくてとても良い日だった。
「いい景色だねえ、愛弟子」
そう言って笑ってくれた、あなたの横顔を一瞥してから、里の絶景を再度見つめ直す。
あなたと見る景色は、一人で見る景色よりも、ずっとずっと美しく見えた。
あなたが隣に居てくれて、あんなに苦しかったのが嘘のよう。
何故だか、今は、何でもできる気がする。
愚かな私を愛してくれる、優しいあなた。
あなたのために、私ももっと強くなりたい。
私はあなたのおかげで、もう一つ、狩猟だけでは知り得なかった強さを知ることができた気がした。
あなたは、何でも教えてくれる。
あなたは本当に、強く優しい私の『教官』。
(この絵
……
うまくできたら、あなたに
……
)
そう考えながら、私は「よしっ」と気合いを入れる。
その声に、隣に座るあなたが「ふふふっ」と嬉しそうに笑ってくれた。
大切なあなたの、優しい隣。
至上の絶景が見える特等席で、私は一度折りかけた筆を取り、ゆっくりと、紙の上で滑らせていく。
その間、月よりも優しいあなたの眼差しが私の心の芯まで包み込んでくれた。
その温もりは、とてもありがたくて、幸せで心地良かった。
狩猟で守り続けてきた、大切なものを。
私にとって、たくさんの大切なものを、私の中の想いを込めて描きたい。
私自身が愛した、大切なもの。
もう二度とごみになんてしない、破らない。
狩猟にもますます力を入れて、守り続けたい。
だって、大切なんだもの、好きなんだもの。
誰に何と言われても、描き続けたいもの。
最愛のあなたを描きたいという目標があれば。
あの日、あなたのくれた言葉があれば。
きっと、それは叶う気がした。
1
2
3
4
5
6
@acadine
広告非表示プランのご案内