雨宮水月
2024-06-20 10:04:37
7804文字
Public 企画
 

第一回 誰の文章だゲーム

参加者6名の中で、どの作品を誰が書いたのか当ててみよう!



【作品D】

 これは、十年以上前の出来事だ。

 成人式を終えた俺たち三人は、春休みを使って京都に旅行に行くことにした。飛雄馬、浩司、そして僕。いつも一緒にいたメンバーだが、四月からはそれぞれ別の道を歩んでいくことになるのだ。

 もちろん、新生活に向けて踏ん切りをつけるという目的もあるが、この旅行第一の目的は、小学生から使っているキーホルダーについている、“これ”だ。

 ──────

 朝、大宮駅に集合。

「おい、アレは持ったよな?」

 飛雄馬の、真剣そうな言葉に、俺も浩司も頷く。俺たちは一様に、ポケットからじゃらじゃらとキーホルダーを取り出した。そこについていたのは、金色に光り輝く剣のキーホルダー。色とりどりのプラスチックの宝石が、バカみたいに太陽を反射している。

 俺たちが、中学、高校の修学旅行やら校外学習やらで、買いに買って、溜めに溜めた、僕たちはこれを、『ドラゴンソード』と呼んでいる。少年の心に勇気を与えたドラゴンソードも、今や力を失ったガラクタだ。

「俺たちは、これを御焚き上げに行く」

 そうして三人は、改めて、この旅の意義を確認する。

「いただろ? お店のおばあちゃんが、子どもの間はこれが守ってくれるけど、大人になったら、これ持ってたら死ぬって」

 俺たちの目は真剣だった。多分、死ぬってのは、社会的に死ぬことなんだろう。と、今更ながら思う。

「俺たち、もう大人だよな」

「じゃあ、これ持ってたらマジで死ぬな」

「バカッ!! そんな弱気でどうすんだよ!!」

 ……というわけで、俺たちは一路、京都を目指す。年末にテレビの特集で見た、御焚き上げをしてもらいに。

 しかし、京都に着いて愕然とした。御焚き上げは、基本的に11月にやるものなのだそうだ。まずい。このままだとほんとに死ぬ。

「や、っぱり、普通に捨てちゃおうよ」

「バカッ!! ドラゴンソードは帰ってくるぞ!!」

 俺たちは、八つ橋を食べながら思案する。俺はハッカ味が嫌いだから、チョコのやつを食べつつ、ドラゴンソードを見た。ところどころメッキがはがれて、黒ずんだ地金が顔を覗かせている。いくつもの修羅場を潜り抜けて来た(つもりの)、戦友だ。

……あのさ」

 ここで、急に今まで黙っていた浩司が、声を上げた。

「お寺のきょうないでこれ燃やしたら、御焚き上げしたことになるんじゃないか?」

 その言葉に、俺たちは沸き立った。確かに御焚き上げは、大体は寺の境内でやるものだ。これは、確かに、賢いやり方かもしれない。俺たちは、ひとまず自分たちが助かる可能性を見つけ、ほっと一安心した。嬉しかったので、一応清水寺で、三人で写真を撮った。

 そして、夜。俺たちはとりあえず近くにあったお寺に入って、コンビニで買った割り箸に、チャッカマンで火をつけた。そして、ドラゴンソードをそこにくべていく。

「あ~、これで俺たちも助かる……

 ほっとして、ため息が出る。きっと、このいずみ、おけ、でら? の神様も、俺たちの思いに応えてくれるだろう。そんなことを思いながら、俺は二人に語り掛ける。

「これからも、たまにでいいから、また旅行とかしような」

 二人は、当たり前だという風に、笑った。

「当たり前だろ? 今度買うのは、安全なのにしようぜ。木刀とか」

「そうだね、木刀、中学のころ買えなかったし、買って帰るか!!」

 こうして、俺たちは、近所の人の通報で、警察署に連れていかれた。



 あれから十年以上が経った。泉涌寺での御焚き上げの効果で、俺たちはいまだに生きている。そして、また、なにかと理由をつけて旅行に行こうとしている。

「お守りって、一年以上つけてるとヤバいらしいぜ?」

 今年、ようやくこのレベルまで上がってきた。