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雨宮水月
2024-06-20 10:04:37
7804文字
Public
企画
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第一回 誰の文章だゲーム
参加者6名の中で、どの作品を誰が書いたのか当ててみよう!
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【作品A】
どれだけ歩いただろう。歩を進めるたびに脚が痛む。汗が首筋に張り付いてとかく気持ちが悪い。憎たらしく浮かぶ太陽の下、なぜ私は歩いているのか。
私はただ呆然と流れる景色の中を漂い歩き、ふらりふらりと旅をしてきた。見るもの、聞く音、嗅ぐ香り────何でも見知らぬものを常に浴びながら歩くのは、思っていたより楽しい。しかし、そうはいっても限度がある。千里の道も一歩から、とはよく言うが、一里は実に約四キロ。そして一般的な歩行速度も時速約四キロ。つまり、千里の道は千時間の歩行に匹敵するということだ。だから、なんだ。何が言いたかったのだろう。恐らく、これまで何時間、何キロ歩いてきたのか、数えてみたくなっただけだろう。喉が渇いた。
「お兄さん、大丈夫かい? 死にそうな顔してるけど」
ふと、前方左方向から声がした。見れば四十路ほどの中肉中背の男が実に心配そうに私を見ている。それほどに私は疲弊して見えるのか。水などは持っていないだろうか。
「
……
少々、旅をしていて」
「ありゃ、声も死にそうだな」
初老の男は荷物から私の望んだまさにそのものを取り出し、躊躇うことなく差し出してきた。なんと優しき世界か。たった今思い出したが、このような見知らぬ人との出会いもまた、旅の楽しさなのだった。私は躊躇うことなくそれを受け取り、からからの喉に初老の恵みを流し込んでいく。
「いい飲みっぷりだねぇ。いいよ、全部飲みな。こっち、日陰来て座りな」
「ありがとうございます」
この男は水をくれるのみならず、私の面倒まで見てくれるらしい。言われるがまま、彼と並んで路傍にどかりと腰をかけた。まずい。もう立ち上がれなさそうだ。
「身一つの手ぶらだなんて、旅人にしちゃあ貧相な格好だね」
「
……
そうでしょうか」
「そうよそうよ。普通はでっかいザックなんか背負ってるもんじゃないの? そうでなくてもお金くらい持っときなよ、自販機使えないでしょ」
なるほど、普通はそういうものか。次からはそうしよう。
「で、旅って言ってたけど。お兄さんどこから歩いて来たの?」
ふむ。その質問は避けられないか。あまり言いたくはなかったが、致し方ない。ここは答えなければ会話として不自然になる。魅力的な嘘を言う気力もないので、私は正直に答えた。
「
……
佐伯町です」
「え?」
……
あぁ、ほら。やはり。
「佐伯って、そこの?」
これを言うと一発でバレるのだ。
「
……
歩いて三十分くらいだよね?」
この旅がただの雑魚の散歩であるということが。
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