MN*B
2024-06-19 01:18:17
17331文字
Public 蠱毒な夢術廻戦:pixivバックアップ
 

余光が染める空の下で。

シリーズ中第6話になります。
注意書きは1ページ目、もしくはシリーズ概要の方にあります。

このシリーズの閲覧、ブックマーク、いいね…いつもありがとうございます。

 
この小説、シリーズを読んでいただきありがとうございます。
とりあえずこのシリーズは、一山越えたことをご報告させていただきます。

最後のページに、あとがきという名の独り言・裏話的な内容も含まれています。
読まなくても支障はありません。気が向かれた方はどうぞ。

 
次回は、少し間をあけて投稿しようと思ってます。
ぶっちゃけ書きすぎて疲れてます、情報の整理も兼ねて休みます。
あとアニメBDを買ったんで擦り切れるくらい見ますね。
大体2週間後くらいになるかと。

 
 
車の上に立つ五条さんはカッコいいけど、普通なら車体が歪むよね。
そして免許持ってんのかな。
個人的には、身分証として持っていそうだし、スポーツカーの似合う見た目だと思います。


#オリ主 #五条悟 #夢術廻戦
2021年1月24日 20:02



 それを視てわかった。
拍手 かしわで、鳴弦の儀。どちらも音によって邪気払いを行う。
彼の呪力で具現化された銃は、それらの類だ。

彼の銃が打ち出すのは単純な銃弾ではなく、呪力による音の波を発するそういう呪法だろう。
そしてその音は、強制的に相手の呪いを削ぎ落とす。それをまともに食らえば、呪霊はその姿を保っていられなくなる。
今まさに姿を崩し、消え去った牛鬼のように。


彼はだらりと腕を下げると、こちらを見てくる。
その瞳は呪いで染まり、身体には硝煙の代わりに残穢が纏わりついていた。

今の彼からは、あの夜のように呪力と呪いの気配が渦巻いている。


牛鬼が「殺してやる」と言った瞬間、彼の纏う雰囲気が変わったのがわかった。
恐怖でも、怒りでも、殺意でもない失意と諦め。

すべてを投げ出すようにしながら、その手には呪いで作り出した銃を握っていた。


 呪力の縛りを解放したと見るべきだろうか。
普段の呪力を全くのゼロにすることで、呪力を解放したときにあれだけの威力を産み出している。そう考えるのが自然だろう。
おそらく、環境に適応するための術式で意図的に呪力を封じていたのが、そのまま縛りになったのだ。
 そしてその縛りを解くということは、適応する術式も緩むということだろう。
呪力のない一般人という縛りが緩めばそこに現れるのは、未完成の呪物という側面を持った呪術師だ。


 力なく握った手からその呪いは離れず、彼は幽鬼のように佇んでいる。
こちらを見ているはずなのに、どこか茫然としていて不安定だ。
それも当然か。彼は今、呪物と人間の間を揺らめいている状態のはず。

僕は彼に近づいて、その顔を覗き込む。

「大丈夫かい?」

焦点の合わない目が、ここではないどこかを見ている。
正気ではないそう判断しようとしたとき。

そうだ、俺は俺だ。俺は、俺でいないと」

彼が呟く。
するとその身から呪力は霧散し、手から呪いの塊は消え失せる。
眼には蓋がされるかのごとく元の色を取り戻す。
いきなり何かが切り替わったかのように、彼は存在と意識を取り戻した。  


 彼はいつも通りにため息をついてみせた。

すまん。おかしい所をみせた」

そういって人差し指で小突くのは、自らの頭だ。
彼からすると、先ほどの状態は呪術の影響ではなく、患っている症状のせいだと捉えているのだろう。
それが関係しているのかまでは、僕にはわからなかった。


「そのことについては、また余裕があるときにでも話そう。それよりも、今は後処理のこと考えないとな~!」

そう言って見渡してみせれば、彼も、あーと間の抜けた顔をする。

玉砂利の吹き飛んだ境内に、割れた挙句陥没した地面傷だらけの子ども。


早く後処理の方に回さないと、通報されて本当に事案になっちゃうな。

そう呟くと、それもう事案じゃなくて事件だと返された。






 子どもが保護されたのを確認し、封鎖されていく神社を僕らは後にする。
どうするか少し迷ったが、彼も疲れているだろうし面倒だったので、また一気に飛んだ。
場所はおっと、車の回収もしなくちゃいけないなかったな。
 置き去りにしていた、彼の車の横へ到着。
彼が状況を飲み込む前に、車の助手席へ押し込む。

っえ?またいつの間に移動して!?」

「はーい、シートベルト締めてね~」

僕は運転席に座ると、座席やミラーの位置を調節する。
うっわ、ホント狭いなそう思いながら、エンジンをかける。

「ハァ!?アンタいつの間に鍵とったんだ!?」

驚いて、ポケットをまさぐり確認する彼。
サングラスだって掛けさせたりしてるんだから、これぐらい当然。

「これぐらい反応できないと、立派な呪術師になれないよー」

それを聞いた彼は、じゅじゅじゅつしって一体と呟く。
本来ならじゃんけんだって、大人げなく勝つことも出来たんだけど。僕って大人だからさ~。


彼は色々と諦めたのか、身体を座席に沈ませながら言った。

「絶対に、事故だけは起こさないでくれよ。家族以外は保険適用外だから」

もしかして、それで僕に運転させたくなかったの?」

「それもある」

真面目な表情で頷く彼いや本当に、君ってやつは。
何とも言えない気分になって、力が抜けた。

「もし事故っても大丈夫だよ。怪我はゼロにできるし、僕お金持ちだし」

「そういう問題か?」

眉をひそめる彼をスルーして、僕は車を発進させた。



 彼の家へ向かっている最中。
小さい音量で流れるカーラジオその音に混じりそうなくらいの小さな声が、隣から聞こえた。

「俺、ちょっと考えてみたんだけどさ

彼はぽつり、ぽつりと話し出した。  

たぶん俺の曾祖父なら、水神様とかについて、何か知ってたんじゃないかって思う」

「曾祖父って郷土誌を持ってたっていう?」

僕の言葉に肯定しながら、彼は話を続けた。

「ああ。元々曾祖父はこの土地とか、先祖のことを調べるのが趣味の人だったらしい。30年前くらいに亡くなったらしいから、俺の記憶には残ってない」

その声は、少しだけ寂しそうに聞こえた。

「あの牛鬼が言ってた『封魔の末裔』の意味もわかんないけど、もしかしたら曾祖父なら知ってたかもな」

確かに、そういう事情があって調べていた可能性もある。
郷土誌などで調べていたのは単なる趣味ではなく、そこに何か目的があったのかもしれない。

「ほかに、その曾祖父が残したものはないの?」

それを見れば何かわかるかもしれないそう思っての発言だったが、世の中そうも上手くいかないらしい。

亡くなってから、その曾祖父の集めてたものが入れてあった蔵が火事で全焼した。原因は不明電気が通してあったから、それのせいじゃないかって言われたらしいけど」

それを機に、家も建て替えられて、蔵があったところは車庫になった。残ったのはあの二冊の本だけだって聞いてる。と、彼は補足を入れた。

「そして郷土誌には、役職とか町の発展に携わった人の名簿が載ってた。うちは建築関係だったらしい。書き込んであった内容的に曾祖父の祖父?が携わったとか」

メモ書きみたいなので、本当にそうなのかまではわかんないんだよなぁと、彼は悩んだような声を出した。
調べていた本人にしかわからないようなメモなら、それは仕方がないだろう。
僕は話の先を促した。

「その曾祖父の祖父に、気になることでもあるの?」

「それが年代からすると、町の建造物とかの建築に携わったのが約150年前の話だ。おそらくそのために移住してきてるし、町が発展した頃だから特に不思議にも思わなかったが

確か川が完全に埋め立てられたのも150年ほど前、か。
それは年号でいうと明治の頃。
そして、この町に施されていた結界の技術は一霊四魂の考えを応用したものその考えもその頃のものだ。

彼が何を言いたいのか、わかったような気がした。
それでも僕は黙ったまま、彼の言葉を待った。

彼は声を絞りだすように話す。

もしかしたら。先祖の青嶺が、あの水神様を埋め立てたのかなって」

それで、俺らが忘れてしまったから、消えちゃったのかな

そう言い終わった彼は、顔を僕から背けるように、窓の外を眺めた。


 基本、呪術師は血筋的なものが関係しやすい。
彼の先祖が呪術師だった可能性は高いそしてそれが途絶えてしまった可能性も。
そうでなくても、神を埋め立てるということをやった人間の一人だったのは彼が水神様と呼ぶ存在の反応的にも、ほぼ間違いないだろう。
だが、そうだとしても彼が責任を負うことではない。

 僕はそのことを伝えるため、口を開いた。

「忘れたのは君の家だけじゃない。この町に住んでいる人間が皆そうなんだよ」

そしてそれは、あの存在も承知の上だった。

「呪いをかけるのなら、かける側にもリスクがある。古来からの決まりだ」  

力を持った存在を封印し消し去ろうとするのなら、それと同じだけの力が必要になる。
代償として、同じように力のある存在が使われそしてそれを隠し、消し去らなければならなかった。
相手を縛れば縛るほど、あの存在も力を失っていき、その歴史と存在は忘れ去られていく。
そして最期には、隠れ潜んだ敵を露わにするために、あの存在は消えることを選んだ。


 僕が話すことを、彼はじっと黙って聞いていた。話し終わったあとも、眉を寄せて口を引き結んでいる。
二人とも、口を開かない時間が続いた。

しばらくして、彼は不安そうに僕に問いかけた。

「この町ってどうなんの?」

きっと彼は、町を守っていた存在が消えた今、また呪霊の被害が出てしまうと考えたのだろう。
僕は、彼のそんな意図の含まれた質問に答えるために、また口を開いた。

「ここを守っていた存在が一つ消えてしまったけど、それと同様にこの町を脅かしていた存在も消えた。あれは人の不安を煽ることで、自分の力を回復させようとしてたんだ」

 牛鬼その話で言われるように、狡猾さを持った呪霊だった。
見えないところでどれだけの人を襲ってしまったのかそれは、これからわかることだ。
調べがついても、彼には言わない方がいいだろう。
僕は彼を横目で見て、話を続けた。

「それのせいで、噂の流れやすい学校に恐怖がたまるようになった。呪霊はそこから生まれていただから、噂が消えれば自然と呪いの発生も収まる」



 今回起こったことは、呪いや祀られていた存在が忘れ去られてしまったがゆえの事件だ。
人が信仰心を失いつつある現代で、子どもがそれと知らずにやった行動が、すべてを狂わせた。

 封印の重しであった呪物が動かされてしまったことにより、封じていた牛鬼を抑えきれなくなったのだろう。
だが、封印は解けきれないままだったはずだ。祠があった以上、牛鬼はきっとこの町から離れることまではできなかった。
なんなら人に干渉することすら、始めはできなかったんだろう。だから力を取り戻すため、潜伏しながら人の恐怖を煽っていた。 

 そして、場所を動かされた呪物は呪霊をおびき寄せる物となり、この町で発生した呪霊を学校に引き留めたままにする。
本来なら水場のそばにあることで、この町の呪いを集めて流し、浄化するシステムも兼ねていたはずだ。現に、それのそばにいた牛鬼は封印も相まって、元特級とは思えないほど力を削がれていた。
 学校に置かれた状態の呪物が取り込まれないままだったのは、その元となった呪霊の性質によるものだろう。
呪霊ではなく水神として祀られ、名も『祓戸大神』にあやかってつけられている。
穢れを流し、祓う存在として求められ、それに応えた存在だ。その力は簡単には取り込めない。

 その力はもう失われてしまったが抑えていた牛鬼はいなくなり、知る人もいないこの町では、いずれ消えゆく運命だった。


 今回の件は、きっとそういうことだったのだろう。
だから、この町ではもうこんなことは起こらないはずだ。  


それに僕は山の方をチラリと見た。
あそこには、まだこの土地を守ろうとする存在がいる。
ここに住んでいる人間が歪まない限り、きっと大丈夫だろう。



 空気を変えるために、僕はあえて明るい声を出した。

「さ、僕たちはこれから東京に戻んなきゃだね~」

それを聞いた彼は、跳ねるように身体を起こした。

マジで?」

「マジ。今回の件を詳しく報告しろって上がうるさくてさぁ君を置いていくわけにもいかないし」

彼の事情が事情だから、無防備に置いておくわけにはいかない。
これは元々決まっていたことではある。

「家に着いたら、持っていく荷物まとめてね!」

それを聞いた彼は、深く深く、ため息をついた。