MN*B
2024-06-19 01:08:05
14540文字
Public 蠱毒な夢術廻戦:pixivバックアップ
 

その地に伝承は眠り

 シリーズ中第3話目です。
注意書きは1ページ目にあります。シリーズ概要の方にもあります。

 前回と前々回の閲覧・ブックマーク・いいね、ありがとうございます。
増える度にガッツポーズしてます。
 今回の話も楽しんでもらえると嬉しいです。
 
 
 もうちょいギャグチックに、呪術高専に通うことを主人公が知る予定でしたが、想像上の五条悟が思っていたよりも大人だったのでシリアスになってます。彼が大人すぎました。

 このシリーズは、人生一年生の主人公が呪術高専で成長する…そういうお話を書きたくて書き始めました。…いまだに呪術高専に辿りつけてません。
ホラーを書くのが好きなのに日常しか書けてないの、グダりそうで恐々してます。

 やっと次回が、原作沿いになる前の前日譚本番って感じです。
次回予告詐欺になるかもしれません。その場合探索編になります…。
 
 
 
#夢術廻戦 #五条悟 #オリ主 #オリキャラ
2021年1月13日 18:11



 「いや~驚いた?僕があんまりにもナイスガイで!ごめんね~」

僕が思い出し笑いをすると、彼は目に見えて不貞腐れた。
何度思い出しても、僕の素顔を見たときの彼の反応は傑作だったと思う。
今はもう髪の毛を乾かしたので、目隠しをつけてしまった。外したらまた彼は固まるんだろうか。

 彼は持ってきたミニテーブルの足を立て、お茶の準備をかいがいしくしている。
その表情は不貞腐れたままなのに、やってることは真面目だった。
そういえば、彼って僕のことを不審な目で見る割に、突っ込んだこと聞いてこないな。

「というか君って、僕の目隠しのこと一度も質問してないよね。気になんなかった?」

僕と会う人すれ違う人、大体話題にするし聞いてくるんだけどな~。

 彼は作業を終えるとため息をついた。そして指を三本立てる。

「一、あえて何も見ないようにしている。二、何らかの方法で見えている。三、元から見えないから関係ない。これのどれかだろうから、聞く必要を感じなかった」

三つ目を言うときに少し言葉が止まったなるほど、沈黙は金ってタイプなんだ。
もし僕が三つ目だった場合のことを考えて、気を遣ってたんだろう。

「やっぱり君って面白いね!」

そういうアンタの恰好も面白いな」

 そう言われた僕の恰好は、ダサいスウェットに身を包んでいた。
ズボンは丈が微妙に足りていないし、胸元にはマヌケな顔をした猫がプリントされている。
高専のみんなには見られたくないかな。

「これ、誰の趣味?」

「兄貴。たまに帰ってくる用のやつ」

 彼はそういいながら、テーブルに置いていた急須を手に取った。綺麗な動作で、湯飲みへお茶を注いでいく。
やっぱり育ちがいいよなと思った。

 僕が一晩の宿として当たえられた部屋は、まさに和風の座敷だった。
床の間には掛け軸が下げられ、剥製が飾られている山鳥が、じっと虚空を見つめていた。
お屋敷というほどではないが、そこそこ大きい家だと感じたし田舎だからだろうか。


「それで、話って一体なんスか」

もう深夜だけどと小さく付け加える彼。

「最初に言ってたでしょ、視察しに来たって。そのことについて話しておこうかと思ってさ」

それを聞いた彼は頷くと、僕の言葉を聞く姿勢に入った。


 この町には、呪いが活発化する現象が起こっている。
本来、このような人口の少ない田舎なら、呪いは悪質化せず低級のものがいる程度のはずだ。
しかし、彼が巻き込まれた事件もそうだったが、通常ではあり得ない強さを持った呪霊が湧いていることが確認されている。
それを発生させている原因があるはずで、それを調査するのが今回の目的だ。
何か事件が起こっていたのなら、それとの因果関係があるのか調べたりする。
そういう任務である。


「だから君みたいな地元の人間がいると助かるんだよね~。田舎って、排他的っていうか閉鎖的なとこだと、そういう情報手に入れるのも一苦労だからさ」

明るく振舞う僕とは対照的に、彼は暗い表情をした。

それって、また俺の時みたいな被害が出るってことなのか?」

そうだ彼は事件のときに遺体を見ていた。しかも呪霊とも遭遇している。
少なからずショックは受けているみたいだし、危惧の念を抱くのも無理はない。

「んーまぁあれは呪術師が呪霊を刺激したせいもあるから。早々起こらない事態だよ」

そう言っても彼の表情は晴れず、どこか不安げに見えた。
じっと黙りこんだままの彼の頭を、ぐしゃぐしゃっとかき混ぜる。

「だいじょーぶ!僕、最強だから」

二ッと笑って見せると、彼はなんだそれと、少し笑った。


 調子が戻ったところで、この町のことについて質問をする。  

「それでさ、心当たりない?最近事故で死んだとかそういうの」

彼は少し考えたあと首を振る。

さぁ。俺あんまりニュース見てなかったし田舎過ぎて、寿命で亡くなる爺さん婆さんくらいしかいねぇよ」

「うーん。殺人事件があったとか、ヤーさんにキュッとされたとかそういうことで死人が出てれば、こういうことが起こってもおかしくないんだけどなぁ。この辺って、死体とか埋まってないよね?」

埋まってるの知ってたら事件だけどそう思いながらダメ元で聞く。
彼のいつものパターンなら『なんだコイツ』って顔をされるはずが、特にそういったこともなく淡々とした返答。

「死体っていうか、人柱なら埋まってる」

マジ?」

「マジ」



 彼は古ぼけた本と、まだ比較的新しい本の二冊を持って戻ってきた。
古い方を郷土誌。新しい方がそれの解説書だという。どちらもこの町のことについて書かれたものらしい。
読んでみるかと差し出されたそれらを受け取る。  

 郷土誌は、日に焼けたり染みがついていたりしているし、表紙が破れかかっていて今にも取れそうである。
解説書の方はそういったこともなく、折れ曲がりが少々あるくらいで、そこまで古くはなさそうだ。
どちらも古い本にありがちな黴臭さなどはなく、定期的に読まれたか陰干しでもしてあったのだろう。

 とりあえず、大本である郷土誌の方を見ることにした。
中を見れば、印刷されたものではあるらしいのだが、字体が古ければ文章も古い表現がされている。
具体例を挙げるなら、『小学校』を『小學校』、『いなかった』を『ゐなかつた』などと書かれているのだ。
しかもページによってはインクが掠れて読みにくいことになっている。
 解説本の方はどうかというと、こちらは現代的な文字と製本であり、モノクロだが写真も載っている。
だがページ数が200を優に超えているのを確認した。

僕は本を閉じると、彼に向き直った。

「うん。重要なとこだけ教えて?」