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無窓居室
2024-05-29 09:53:05
7210文字
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Pretender
WEBイベント「クリームソーダ同人オールジャンル」様にて展示と無料配布させていただいた短編集。
これまでに企画やプレゼントで書かせていただいた話の中から「擬態」をテーマにした😈👹を5編まとめています。
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ビューティフル・ドリーマー
鏡の前でアタシは赤いドレスを着ている。煌めきのある高そうな生地は、胸元が大きく開いているように見えて気恥ずかしい。肌を見せるデザインじゃないから露出度は普段の服の方が多いくらいなんだけど、スカートなんて履き慣れない脚にまとわりつくキラキラした布が、重いような頼りないような妙な感じだ。ハイヒールのかかとは細くてちょっと怖いし、黒いチョーカーをつけたときには訳もなくドキドキした。
鏡の中の女の子をアタシだと思わなければ、正直、結構イケてるんじゃないかと思う。でもブラックにとってはどうだろう?アタシ本当は女子力のないガサツな鬼なのに、こんな格好なんかして
…
。まるで嘘をついてるような、上辺だけ取り繕ってるような
……
。
不安と、ほんの少しの期待に揺れているアタシに、そっと声がかけられる。よく知っている相手のものなのに、聞いたことがない優しい響きで。
「とてもお綺麗ですよ、可愛いです」
いつの間にか隣にいたブラックは、恭しく一礼して手を差し出してくる。まるで女の子が読むお話の中の王子様みたいだ。ホッとするあまり深く考えずにその手を取ろうとして驚いた。ブラックの髪は銀色になり、背中には真っ白な翼が生えていたから。そして顔の片側は髪に隠れず仮面のようなものを付けて──。
変な夢を見てしまった。今日はブラックチャンネルの記念パーティー。アタシも参加して欲しいと言われたから思いきって選んだドレスを見せたら、ブラックは嬉々として会場までのエスコートを申し出てきた。またアタシをコケにしようとしてるんじゃないかと疑ってみても、こうなったブラックには逆らえない
……
アタシも、嬉しいし。
こんなふわふわした気分だから訳の分からない夢を見たんだろうか。今、アタシは夢の中と同じドレスでブラックの隣にいる。
「む、昔アタシが女の子らしい格好した時とは随分と態度が違うじゃん、何か企んでるのか?」
「ああ、エマさんとコラボした時の?あの時アカネさんはご自分がどんな服を着たいかも考えずエマさんの言う通りになさってましたから。エマさんのセンスは素晴らしいので客観的には充分すぎるほどお似合いでしたが、オレちゃんアカネさんにはいつもアカネさんらしく居て欲しいんですよ。今夜、アカネさんはアカネさんの意志で俺ちゃんのためにおめかししてくれてるんでしょう?有頂天にもなります」
意味ありげな口ぶりで目くばせされる。肩のないドレスを着てるのに体が火照ってきた。
「う、自惚れるなよ!別にアンタのためじゃなくて、場に合わせるためなんだから!!」
言い切ってしまってから夢の内容を思い出して付け加える。なぜだか、今ここで言っておかなければいけないような気がして。
「
……
アタシは、もしブラックがアタシのために全然違うブラックになろうとしたら、その嘘ごと嬉しいって思うよ
……
きっと、どんなブラックでも好きになると思う」
アタシのために自分を偽らないで、なんて言うのが可愛い女の子なんだろうけど。アタシはそんなにお淑やかじゃないし、ブラックもそこまで弱くないと思うのだ。
「アタシの勝ちだな」
カメラちゃんが変形した黒のクーペに乗り込みながら笑ってやると、ブラックも──アタシの気のせいでなければ──嬉しそうに丸い目を歪めてから頷いてくれた。
2024/05/24(改訂日)
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