Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
無窓居室
2024-05-29 09:53:05
7210文字
Public
Clear cache
Pretender
WEBイベント「クリームソーダ同人オールジャンル」様にて展示と無料配布させていただいた短編集。
これまでに企画やプレゼントで書かせていただいた話の中から「擬態」をテーマにした😈👹を5編まとめています。
1
2
3
4
5
スイートキスパラノイア
頬へ優しく添えられる指に従って目を閉じ、
顎
おとがい
を持ち上げられれば唇が触れ合う。初めてのときから、いつもそうは変わらないプロセス。けれどもアカネは毎回のように目を見開く。年齢のわりに初心なことだけが理由ではない。
「
……
わたあめ」
「ご名答」
ささやかなキスが終わってから呟いた。比喩でなく甘い、甘い口づけ。ほんの少しだけ触れた舌のざらつきはザラメのよう、合わせた唇は溶けた綿のようで、消えて無くなってしまう感覚までもが口の中に残っている。
「好きでしょう?わたあめ。次はかき氷にしましょうか」
もうすぐ夏ですから、とブラックは笑う。昨日はりんご飴でその前はいちご飴だった。高位の悪魔であるブラックは、自分の体の内臓から粘膜の構造、体液の成分までもを自由に変化させることができる。キスの味を変えることなど赤ん坊の手をひねるようなものなのだろう。いつもアカネの好きな甘いものをキスに乗せて寄越してくる。
初めてのとき、それはレモネードの味をしていた。ブラックが、初めてのキスはレモンの味がするという話を本気で信じていたアカネに合わせてそうしたのだ。わたあめは屋台を見れば必ず買うほどの好物だし、キスはとても気持ちが良かったのに、甘ったるい後味がもどかしい思いに拍車をかける。
「わたあめもかき氷も好きだし、ブラックの気持ちは嬉しいよ
……
嬉しいけどさぁ!そろそろアタシ、ブラックと本当のキスがしたい
…
」
祭り屋台の飴の中の果物のように顔を赤くして訴える。アカネにとっては精一杯の願いを、しかしブラックは笑い飛ばした。
「オレちゃんに真実を求めるなんてナンセンスですね。欲望に合わせてあてがわれるもので満足できないなら、なぜ悪魔なんかと付き合ったんです?」
「誤魔化すなよ!子ども扱いして!!」
「誤魔化してませんよ。オレちゃんの体には本当の部分が無いんです。大抵のことが出来る代わりに本来の姿は無い、とでもいいますか
……
キスだってどんな味にもできますが〝本物〟はありません。本当のキスとやらがしたいなら、他をあたることです」
楽しげな口調で投げやりな台詞を言い放たれて、アカネはむしろ怒りを忘れ目を丸くする。
「えっ、じゃあそれこそかき氷と同じじゃん!」
「カカカッ!そこですか!!」
「なぁ、前に教えてくれただろ?屋台のかき氷の味って実はみんな同じで、色と香りを変えてるだけなんだって。でも食べてるときは本当にイチゴやメロンやハワイの味がするし、すごく美味しいって思う
……
アタシの頭が悪いせいかな?でもそう思うんだよな」
高慢な悪魔の目つきが、今ばかりは少し和んだことに気づかないままアカネは続ける。
「エンタメに似てるかも。その場かぎりの楽しさかもしれないけど、楽しんだ人の中では本物になるだろ?
……
誤魔化しなんて言ってごめん。ブラックはずっとアタシに、一番ブラックらしい炎タメをくれようとしてたんだね」
やがて鬼の少女の細い、しかし力強い指が悪魔の頬に触れた。ブラックも心なしか普段より繊細な雰囲気を纏ってされるがままになっている。
「でも、たまにはアタシのためじゃなくブラックがしたいキスをして欲しい」
飴を蕩かすように目を細めて囁いたアカネは、直後に不意打ちで贈られたチョコバナナ風味のバードキスに、目を白黒させて飛び上がる羽目になった。
「オレちゃんが一番好きな屋台のお菓子です。お気に召しました?」
「この悪魔ーーっ!!」
1
2
3
4
5
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内