〈後日談〉紺色彼氏とオートクチュールプラン

7600字ほど〈後日談〉 一次創作BL「レンタル彼氏」物 社会人CP 眼鏡年下大型ワンコ×紺色が好きな、しっかり者だが変わっているところがある美人 ハンドルネーム上の名前は櫂人(かいと)×透萌歌(ともか)です。後日談で名前がわかります。


 店を出ると、秋の夜風がひんやりと流れて、肌寒くなってきたなと衣替えが頭をよぎる。
 二人で、飲食店の建屋の続く通りから交差点で止まった。通りの交差点で、車道の列の車のライトが眩しい粒のように滲む。
 あの日と同じように、信号が青になるのを並んで待つ。
 季節がめぐってまたこうして会っている。
 不思議だ。再会したことが。
 となりのビジネスマンの横顔が、あの午前中になかなかこちらを見てくれなかった青年の横顔と重なる。
 急に、いきなりキスされたことを思い出して、頬が熱くなる。
「西能さん」
 と、呼びかけたらなぜか、たった今すごくショックなことがあったみたいな、傷ついた表情でこちらを見る。
 僕は、連絡先を訊くまえに一応、確かめた。
「いま、好きな人はいますか?」
……は?」
 見下ろした顔は何を言い出すのかという空気で、鋭く低く短く問い返した。
 いないようだ、と解釈してまっすぐ見上げて僕は言った。

「今度、またデートする?」

 眼鏡越しでもわかるほど、目をぱちくりと何度か瞬いた。一歩下がりそうに、驚いた空気になる西能に、僕は携帯を持ち上げた。
 歩道の脇へ移動して、連絡先を交換して欲しいですと言うと、西能は少しかがんだ。互いの携帯を突き合わせる。
 画面に、登録された情報が表示される。携帯を両手で握って、顔の前に上げてまじまじ見てしまう。
 前回の『デート』は一方的に払わせてお金を使わせてしまったから、今度は
「おうちデートとか」
「えっ……?」
 驚いた、ほとんど、間抜けな声を発した西能は突然の出来事に何も言えなくなったみたいに、でも何か言いたそうな顔で、突っ立って僕を見つめる。
 僕が今住んでいるアパートの部屋はわりと狭いけど、キッチンのところはやや広めだから
「手料理をふるまいます。腕によりをかけて」
 と言った。そして僕は、ああ、と微笑みかけて付け足す。
「よく切れる包丁で」
 西能はその一言で正気を取り戻したみたいに、あぁ……と微妙に頭を振って、仏頂面の、しかつめらしい面に戻った。
「二匹も会いたがってる」
 と、飾ってときどき撫でる二匹について言ってから、僕はちょっと変なことを言ったかなと思った。だから「……わからないけど」二匹の気持ちはわからない、と付け加えた。