大賢なる木の花は

MHRウ教×ハ♀。両片想い、から……
微妙に本編ネタバレあり。

花占いの花と、里の桜のお話。



夢のような夜の明けた、次の日の朝。

娘は真っ先に、たたら場前広場の縁台 えんだいに、いつものように腰かけて歌声を奏でるヒノエに、桜の花占いの件と、その結果を報告する。

報告したのは、結果だけ。
屋根上での愛する人との出来事は、里の桜だけが知る出来事。

ヒノエは朝陽も霞むほど、幸せそうに笑いながら「やはり、里の桜は賢明ですね」とだけ告げる。

娘は、知る由もない。

ヒノエから桜の花占いを教えてもらったあの時、彼女が、娘とウツシの幸せな進展を願っていたことを。
そしてその願いに対し、里の桜が三枚の花びらを以て示したことを。

ヒノエの言葉の真意が掴めないままで、娘が首を傾げそうになった刹那、清爽 せいそう朝風 あさかぜが、里全体に流れていく。

目が覚めるような風に乗り、翔蟲を用いて飛んで来る人影。

「やあ! おはよう、愛弟子! ヒノエさん!」

風は、娘にとって最愛の声を、舞い散る桜の花びらと共に運んで来てくれた。

声の方に振り返った娘は、花びらと共に降り立ったウツシの傍へ駆け寄って、爛漫の笑顔を咲かせる。

「おはようございます、ウツシ教官!」

高らかに響いた、娘の朝の挨拶。
先ほどの風の力、けれどまるで娘の声に呼応するように里の桜は揺れ動き、桜の花びらがまた舞い上がる。

今も昔も変わらずに、陽射しの中で無数に煌めく、煙と調和した零れ桜。
炎の里を、そこで生きる人々を不変に、穏やかに見守り続ける、物言わぬ大賢 たいけん

娘がウツシと、想いと視線を通わせて笑い合った刹那、風と共に揺蕩 たゆたう花びらたちは、二人の足下を彩るように舞い落ちた。



@acadine